枝物カレンダー

 花屋では1年を通して、多様な種類の枝物が流通します。
 本記事では、月毎に代表的な枝物をいくつか取り上げました。何月頃にどんな枝物が入るかの参考にしていただければ幸いです。

1月

 1月の枝物として代表的なのが松と千両。共に正月用花材となります。
 松に関しては、弊社では概ね1月7日頃までの取り扱いとしていますが、千両は旧正月のお祝いにも利用しますので、1月末頃にも在庫は確保しています。

 ちなみに年に一回の松市は12月の初旬頃、千両市は12月の中旬頃に行われます。市(いち)が終われば弊社でも多量の松や千両がありますが、店頭に並ぶのは12月の年末となります。

 上の画像は市場でこれからセリにかかる直前の苔梅。
 苔梅も正月用花材として流通します。梅は松ほど「正月限定」という訳ではありませんので、2月頃の寒さが最も厳しい時に生けても全く問題ありませんが、その頃の花屋では桜が流通しますので、梅は概ね1月中に使われます。

2月

 桜は1月下旬頃~3月一杯まで流通します。
 1月下旬から2月頃にかけては主に敬翁桜と東海桜が流通していますが、3月頃になると彼岸桜に主役が交代します。

 桜の品種毎に枝振りや咲いた時の花の色合い等の特性が変わってきます。
 街路樹の桜が咲く4月上旬頃には、切り花としての桜の流通が終わります。

3月

 写真は桃の枝物。
 3月の節句に合わせ、2月の中旬頃から桃の流通が始まります。桃に関しては、気温が低すぎると花が紫に変色し、蕾のまま咲かずに終わってしまいますので、弊社ではあまりにも早い段階での桃の仕入れは控えています。

 自然界では桜よりやや遅めに開花します。先述のように寒さに弱い特性を持っていますので、切り花としての温度管理はやや難しい印象を持っています。

 1月下旬頃から4月頃にかけては小手毬(コデマリ)も入荷します。写真はコデマリを利用した演台花。静岡県が主な生産地となります。

 3月頃がコデマリの旬の季節となっており、演台花や祝花に使用するとボリューム感があり、見応えのある仕上がりとなります。

4月~5月 

 4月中旬頃からはドウダンツツジが入荷します。ドウダンツツジの入荷時期は4月からおおよそ10月頃までとなりますが、4月頃~夏場にかけてのドウダンツツジは、新緑の青々さを表現するのに最適な花材となります。

 ドウダンツツジは基本的に「山取り」と呼ばれる、自生した山野からの切り出しで市場に出荷されています。
 4月中旬頃から5月頃にかけては、他の枝物はあまり流通しておらず、基本的にはドウダンツツジがメインの枝物となります。

6月

 5月下旬から6月中旬頃にかけては、季節限定の花材としてスモークツリーが入荷します。
 スモークツリーのフワフワとした質感は他の花材で代替できるものではないため、生け方によってはかなり面白い作品に仕上がると思います。

7月

 7月頃には露地栽培の紫陽花の切り花が入荷し、おおよそ9月頃まで流通しています。一方、冬場に流通する紫陽花は基本的に全て海外からの輸入品となります。

 紫陽花の切り花は水揚げ方法に特徴がありますので、ご興味のある方は弊社ブログ記事「紫陽花の生け込みと水揚げの処理方法」をご覧下さい。

8月

 5月頃から秋にかけて、ドウダンツツジと共に夏ハゼも流通します。ドウダンツツジは生け込みに最適な枝物ですが、夏ハゼはどちらかというと生け花に適した花材と考えています。

 ドウダンツツジはすっきりとした葉ですが、夏ハゼは枝が込み入っているため、枝の一部を落とすなどの処理が必要です。この枝を落とす感覚は一定の慣れが必要で、生け花をやっている方ならそれほど難しいものではありませんが、初めての方であればかなり手強い作業と感じられると思います。

 もっとも、この枝を落としてすっきりした夏ハゼを生けると、まるでそこに風が流れ込んでくるような感覚にとらわれます。

9月

 写真は野バラと染雪柳を使った生け込み。
 雪柳は2月頃から10月頃までの長い期間流通します。2月頃は花の咲いた状態で、夏の間は青々とした葉が魅力的な状態で、秋には紅葉がかったように真っ赤に染めて使われます。

 ちなみに完全に紅葉してしまうと全く日持ちがしなくなってしまいますので、上記の写真のように青々とした葉に赤の塗料で染めて生産者は出荷します。

 野バラも8月頃は真っ青な状態ですが、秋になるにつれこちらは自然と赤く色づき、その色づいた実物を生け込み等に使います。
 ちなみに写真の野バラはまだそれほど赤く色づいていない状態です。

10月

 3枚の写真一番上は豆柿を使った生け込み。
 10月は実物の季節であり、多様な実物が登場します。

 2枚目の写真は真っ赤に紅葉した野バラを使った生け込み。3枚目はツルウメモドキの生け込みとなります。
 これ以外にも、例えばフォックスフェイスやリンゴなど、多様な実が付いた枝物が登場します。まさに実りの秋を象徴するかのような生け込みが主となります。

 ドウダンツツジも真っ赤に紅葉し、4月~夏にかけて生け込んだドウダンツツジの生け込みとは全く違った印象・色合いとなっていきます。

11月

 11月頃からはいよいよ柳の登場です。

 ひとくくりに柳と言っても、例えば「雲龍柳」「赤芽柳」「行李柳」「石化柳」など、多様な柳が登場し、その外観等も全く異なってきます。ただ、いずれの柳も「矯め(ため)」が効くため、生け込みにおいても枝一本一本をそのまま使うだけでなく、矯めて(曲げて)使うなど、制作者の意向に沿うような形で自由自在に形を作りながら生け込む場合もあります。

 ちなみに「柳は3月まで」と言われますが、冬場から3月にかけては、これら柳が主の枝物となってきます。

12月

 12月初旬から松や千両などの正月用の枝物が入荷しますが、一方でクリスマス用の花材として、上記写真のような銀色に染めた西洋ヒイラギや、白に染めた柳などが入荷します。

 このクリスマス用の花材をもって、紅葉した花材や実物の枝物等の使用も終わることとなり、一気に冬の生け込みへと変化していきます。

 生け込みにおいても、またアレンジ等を作るにあたっても、花材としての枝物はかなり重要な役割を担っています。そこが枝物の面白さでもあり、生け込み等においての工夫のしどころでもあります。