当店では、生産者の思いや考えを知り、その熱い思いをお客様にお届けできればと考え、不定期ではありますが全国の産地訪問をさせていただいております。
「産地との連携(福島編)」は福島県の生産者を取り上げたページです。
産地との連携(福島編)
~福島県福島市編~
福島県福島市 鉄砲屋 高野さん(2021年)
2021年10月5日に、福島県福島市にある鉄砲屋 高野さんの圃場にお伺いしました。
高野さんは枝物の生産者です。以前からいい枝物を生産・出荷しているため、是非とも伺いたいとこちらから希望して、初めての訪問となりました。
ちなみに屋号の「鉄砲屋」とは、ひいおじいさんの代に鉄砲撃ちの猟師だったため、その頃から「鉄砲屋」との屋号を使っていたそうです。


高野さんの枝物は多品種少量生産を特徴としています。
まずはハウス1棟目。写真1の左側にはケイトウ、右側にはアガパンサスが植えられています。写真2の球根はギガンジウム。写真1の中央部分の土をならしたところには、このギガンジウムの球根を植え付ける予定だそうです。


写真3・4はカキツバタ。生け花用花材となります。もともとこの土壌は田んぼだったそうですが、今はこのようにカキツバタやガマが植えられています。
カキツバタを生産しているところは初めて見させて頂きましたが、アヤメと違い、土ではなく水を張った田んぼでの生産をしています。

写真5は紅ヒマ(べにひま)。これも基本的には生け花用花材。フラワーショップ アリスでは生け込みにも使いますが、一般的な花屋では通常置いていない花材です。

写真6は木瓜(ボケ)。出荷の際に根元から切らないと次に伸びてくる枝が不揃いになり、出荷に適さなくなるそうです。また、この木瓜も含め、高野さんの枝物は日の出前に収穫しているとのこと。理由は、日の出前と太陽が昇ってからでは日持ちが変わるため。これは例えばスナップなど他の花材にも言えるそうで、日の出前に収穫するものは日持ちがするため、高野さんは日の出前からの収穫を徹底しているとの話でした。

写真7はバイカウツギ。白い花が咲く枝物です。バイカウツギも基本的には一般的な花屋ではあまり取り扱っていません。


写真8の手前にあるものはフトイ。そして写真9は珊瑚水木(さんごみずき)。珊瑚水木はこれから枝が赤くなりますが、葉を取って出荷します。主に12月頃出荷される枝物です。


写真10はオミナエシ。このオミナエシは出荷させず、このまま種を取るそうです。
写真11は圃場の一部を撮影したところ。このハウスの奥に写真3のカキツバタの田んぼがあります。また、写真では撮影できませんでしたが、他にもオクラレルカや桜、紫陽花なども生産・出荷しています。桜は促成栽培をしており、床暖房施設の室(むろ)も見させて頂きました。

収穫した木瓜の花。さすが高野さん、いいものを作っています。
近年では枝物の生産者もたいへん少なくなってきており、高野さんのようにいいものを作ってくれる生産者も後継者がいない場合が多い状況です。
30~40年前の生け花全盛時代に比べれば枝物の需要もかなり少なくなってきていますが、かといって全く無くなるのも非常に困ります。
弊社ブログ記事「入才ラン ~生け花花材の現状~」では、このような生け花花材の現状について記載しております。

フラワーショップ アリスでは、このように従来の固定観念にとらわれない枝物の使い方を模索しながら、お客様によりよいものを提案できればと日々取り組んでおります。
今回は初の枝物の生産者である高野さんの圃場を見させて頂きましたが、たいへん勉強になりました。高野さんにはこの度の訪問を快く受け入れて頂き、たいへんありがとうございました。
~福島県二本松市編~
福島県二本松市 武藤園芸(2020年)
2020年7月21日に福島県二本松市にある武藤園芸の武藤さんの圃場にお伺いしました。
武藤さんのスプレー菊・ピンポンマムを当店では長年積極的に取り扱っています。特徴としては茎を含めた菊の形状が他産地と違い独特であり、日保ちも断然長持ちします(一般的に流通するスプレー菊・ピンポンマムの約2倍)。
もちろん品質がいいのは分かっていましたが、何故そのような形状になるのかが長年疑問であったため、この度、その疑問点も含め伺いたいことがあったため、直接圃場を見させて頂くことになりました。




武藤さんの圃場ではビニールハウスが10数棟ありますが、このスプレー菊のハウス一つを取っても、今現在25000本が栽培されています。この25000本は全てお盆の時に出荷されますが、一つのハウスで春から年末まで、3度に分けての植え付け~収穫を行っています。
また、スプレー菊の他に、寒さに強いカンパニュラ(冬季限定)などの生産も行っています。




スプレー菊は3ヶ月半(約100日)前後での出荷となります。
他産地では通常、水と肥料をふんだんに与え、一本一本の花を十分に生育させてから出荷しています。
一方、武藤さんは敢えて水を与えず、肥料も少なめにするなど、花にストレスを与えています。生育途上の菊が水不足で萎れてから水を与えることを繰り返すことにより、しっかりと大地に根を張り、結果的に日保ちのする、品質のいい菊を作ることに成功しています。
地面がひび割れしているのが、写真でも分かりますか?
これは今年の2月に沖縄に行った時に見たトルコキキョウの圃場と同じです。敢えて水を与えないことが特徴です。
また、土壌は花崗岩を母体にした山土です。水を与えたらすぐに浸透するようなふわふわの土壌とは全く違います。これも赤土を主にした沖縄県の土壌と同じようになっています。
更に、下側の葉も手作業で削いでいます。これも菊にストレスを与えることに繋がり、結果的に日保ちのする、品質のいい菊を作ることに繋げています。
水を与えず肥料を少なめにするため、結果的に重量のある2Lクラスのスプレー菊やピンポンマムがあまりできず、LやMクラスの菊が大半を占めてしまいますが、通常のスプレー菊の倍は日保ちしますので、その点に武藤さんは非常にこだわっています。
【通常、2Lの方が市場での競り参加者の評価が高い(高く売れる)ため、他産地の多くはとにかく肥料と水を与えてボリューム感のある花作りを目指します。武藤さんのやり方は、他生産者とあえて逆のことをしています。当店では、その結果から生まれる抜群の品質のよさを非常に評価しており、年間数千本単位で使わせてもらっています。】


写真左側は袋をかけた状態の菊。右側の写真は芽かきの実際。
芽かきも一本一本の菊に対して手作業で行っています。芽かきをすることで、栄養分が上部の花に集まり、結果的に花が大きくなります。また、茎もしっかりしてきます。
袋をかけるのももちろん手作業です。


この2枚の写真は共に「オペラピンク」という名前の菊です。右側も左側も同じ品種ですが、夏の高温が続くと右側のように色が薄くなってしまいます。また、生育も遅くなります。
今年は梅雨が長く曇天が続いているため、写真左側のように色が乗っている菊が大半です。また、晴れ間の続く高温ではないため、お盆出荷予定の花が前進している状況です。


菊が開花するためには日照時間が11時間以下にならなければなりません(本来、菊は秋に咲くため)。そのため、ビニールハウスの上部に遮光カーテンも取り入れています。
また、生育には日照が必要なため、右側の写真のような電飾も出荷時期によっては必要です。


近年はスプレー菊やピンポンマムも従来の菊の使われ方(仏用)だけでなく、花束やアレンジ、生け込みにも積極的に使われるようになってきました。
天候によりピタリと狙った時期に出荷できる訳ではなく、設備の維持も非常にコストがかかります。そんな中で一生懸命こだわり抜いて生産している武藤さんの菊を、これからも当店では積極的に取り扱っていきます。
4月頃から年末頃までが武藤さんの菊の出荷時期となっています。
当店では「武藤さんの菊が欲しい」とのご要望にも喜んで対応できますので、ご安心下さい。
関連記事
~福島県郡山市編~
福島県郡山市 齋藤さんのトルコキキョウ(2020年)
2020年6月27日に当店から車で10分ほどにあるトルコキキョウ生産者、齋藤さんの圃場にお伺いしました。
齋藤さんのトルコキキョウの何がすごいかというと、驚くほどの茎の太さ。この茎の太さは、2月~3月に出荷の最盛期を迎える沖縄県のトルコキキョウに匹敵する、或いはそれ以上のものとなっています。
この太さが非常に日持ちのする高品質なトルコキキョウの要因ですが、なぜこの時期にここまで太くできるのか、そんな疑問を持ちながら訪問させて頂きました。


福島県でのトルコキキョウは、6月頃から8月頃が最盛期を迎えます。トルコキキョウはほぼ通年で入手できますが、初春頃に沖縄から出荷が始まり、そこから季節を追って北上していき、お盆過ぎ頃には北海道での出荷となるなど、日本列島の南から北まで、産地が移動していきます。


(写真3)左側が齋藤さんのトルコキキョウの茎。右側が一般的に流通するトルコキキョウの茎。明らかに太さが違います。
(写真4)齋藤さんの圃場での茎の様子(写真をクリックすると、拡大します)。
齋藤さんに伺ってみますと、定植が11月頃、出荷が6月頃で、冬の間は暖房を一切かけないでじっくりと生長させているそうです。
通常なら冬の間は暖房(重油)をかけ暖かくし、或いは夏のお盆頃の出荷であれば4月に定植、8月に出荷で、わずか3~4ヶ月で出荷のところを、齋藤さんのトルコキキョウはなんと7~8ヶ月もかけていました。
つまり、当店で取り扱う熟成胡蝶蘭と同じように、通常の定植~出荷までの期間を倍に延ばしていることから、ここまで太い茎になるそうです。
トルコキキョウは夏の花と言われていますが、温度さえ一定の暖かさに保てば、スルスルっと伸びていきます(もちろん、日照や水なども必要ですし、一定の品質以上に生育させるためには、土作りを含めた技術も必要ですが)。平均3~4ヶ月で出荷の場合、通常は写真3の右側のような細い茎になります。
トルコキキョウも他の植物もそうですが、茎は太ければ太いほど日持ちが良くなります(水の吸い上げが関係してきます)。もちろん花の種類により茎の太さにも限度が出てきますが、この齋藤さんのトルコキキョウは、この時期に出てくるトルコキキョウの中でも別格の存在です。
「熟成トルコキキョウ」とネーミングを付けて出荷してもいいぐらいの商品価値のあるトルコキキョウです。このトルコキキョウは、大田花きなどの東京・関東方面へは出荷しておらず、当店など極めて限定した店舗でのみの取り扱いとなっているところにも、希少性を感じます。


齋藤さんは親子二代でのトルコキキョウの栽培を行っていますが、娘さんも非常に熱心で、当店にもよくご来店頂き、トルコキキョウに関する意見交換を行っております。
先日は娘さんから、2輪で蕾ありのトルコキキョウと3輪で蕾無しのトルコキキョウのどちらがいいかとの質問を頂きましたので、市場に出荷するためには蕾無しでも3輪の方がいいと思う旨をお伝えしました。
他生産者のトルコキキョウを当店で入手したり、他生産者の圃場に行ったりと、非常に研究熱心な方です。


この齋藤さんのトルコキキョウ、是非飾ってみませんか?
品質の良さ、日持ちの良さ、一輪一輪の大きさなどにきっと驚かれると思います。
季節限定の希少種です。例年、6月から8月頃までが入手可能な時期となります。写真では紫のトルコキキョウが写っていますが、これからはピンクのトルコキキョウも出てきます。お楽しみに。
全国編はこちらから
全国各地の生産者と圃場を巡った「産地の連携」ページもありますので、宜しければそちらもご覧下さい。
