生花店での桜の取り扱いはなぜ1月~3月に可能なのか?
桜の花が舞い散る4月、私たちの心を和ませるその美しさ。
しかし、ご存知でしたか?生花店での桜の取り扱いは1月から3月が主流であるという事実。実は冬の厳しい寒さと桜の出荷には深い関係があるのです。そんな桜と気温の関係について、解説してみました。
生花店での桜の取り扱いはなぜ1月~3月に可能なのか?
冬の寒さと桜の出荷の関係
4月となり、桜が満開の季節となりました。
生花店では通常、1月から3月頃までが桜の流通期間となります。4月以降は、生産者に注文しない限りあまりセリにかかることもなく、流通もほとんどありません。

切り花の桜の産地は主に山形県や青森県など。では何故寒い地域で1月から3月に出荷できるのかと疑問に思われる方も多いと思います。
基本的には冬期間に枝を切り、それを暖かいビニールハウスなどに保管すると枝から花芽が出て、1月や3月などの寒い期間に出荷できるようになります。
ポイントは冬の寒さ。山形県や青森県は冬の訪れが早く、8度以下の寒い時期が長期間続きます。
桜は特性として、枝を切る前に8度以下の寒い期間が3週間以上なければならず、それが厳冬地域での桜の冬期出荷が可能な理由となっております。
一方で鹿児島県などの暖かい地域では、低温が不足して花芽が目覚めにくいので、気温が高くても開花は遅くなります。
山形県の生産者を冬に訪れた際の様子


上記写真は2021年2月に山形県のユリ生産者の池野さんの圃場へ伺ったところ。福島県からは奥羽山脈を越えて反対側ですが、山形県は雪も多く、この日は福島県と山形県で最高気温が10℃以上も違っていました。
地域特性を活かした桜の生産
ビニールハウス等がなければ冬には何も生産できないと考えがちですが、地域特性を捉えて、青森県や山形県などの厳冬期が続く地域で桜の枝物の生産に力を入れている点はさすがだなと感じています。
卒業式に向けた桜の加工

この写真は卒業式に合わせて仕入れた桜の枝物。約2mの東海桜です。もちろんこのまま右から左に商品としてお客様にお渡しする訳ではなく、加工が必要です。

その2mの東海桜を加工して作ったのがこちらの生け込み。花が満開の状態で、華やかな生け込みとなっています。
東海桜は青森県産、葉物のキキョウランは八丈島産、トルコキキョウ=熊本県産、チューリップ=新潟県産、アレカヤシ=沖縄県産、アルストロメリア=愛知県産と、日本列島の北から南までの花材を使っての生け込みです。
結びに
桜は日本の心、風景、そして季節の移り変わりを象徴する存在です。冬の寒さと桜の出荷の意外な関係、特に、青森県や山形県といった厳冬地域での桜の生産・出荷は、自然の恵みと人々の知恵が結びついて実現しています。

毎年、桜の花が咲く時期には、多くの人々がその下で集い、花見を楽しむ様子を見かけます。
しかし、桜が咲く前の1月から3月にかけて、生花店で早くも桜を取り扱っていることを知ると、桜の美しさをより一層深く感じることができるでしょう。
フラワーショップ アリスでは、春を迎える前のこの特別な時期に桜を豊富に取り扱っております。
部屋に桜の枝物を飾り、桜の季節を先取りする喜びを是非とも感じていただきたいと思います。
この記事を書いた人

- 代表取締役社長・1級色彩コーディネーター
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こんにちは。福島県郡山市にあるフラワーショップ アリスの代表を務めております、菊地充智です。
元教員としての経験を活かしながら、色彩の専門知識を基に、お客様一人ひとりに寄り添った花づくりを行っています。
全国の産地を自ら訪問し、生産者の声を直接伺いながら、確かな品質と生産者の想いやこだわりが詰まった花を選んでご提供しています。
また、1級色彩コーディネーターとして、色彩の理論に基づいた花束・アレンジメントのご提案や、色彩と花に関する情報発信にも力を入れています。
ブログ記事では、花の魅力や色彩などに関する知識を、できるだけ分かりやすくお届けしています。
ご覧いただいた皆様が、花や色彩の奥深さに興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。
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