ダリアの深掘り: 歴史と色別の種類、そして花束のご紹介
ダリアは、赤・ピンク・白・紫など豊富な色彩と多彩な咲き方が魅力の花です。切り花や花束、ガーデニングとしても人気があり、花のサイズや形状によって印象が大きく変わるのも特徴です。
本記事では、ダリアの歴史や起源を簡単に振り返るとともに、代表的な品種を色別に紹介します。さらに、実際にダリアを使用した花束の事例や生産現場の様子も取り上げ、ダリアの魅力を多角的に解説します。
「ダリアの種類を知りたい」「花束に合う品種を探している」という方にとって、実用的なガイドとなる内容です。
ダリアの深掘り: 歴史と色別の種類、そして花束のご紹介
ダリアの露地物は初夏から秋にかけてが最盛期となりますが、ハウス栽培も含めると、通年で入手できる花材となります 。
今回は「ダリアの深掘り」と題しましたが、まず始めにダリアの歴史と起源について述べていきたいと思います。
ダリアの歴史と起源
ダリアとは?
ダリアはキク科(Asteraceae)に属する植物で、この科は世界中に広く分布している大きな植物のグループです。キク科には、マーガレット、菊、ヒマワリなど、私たちの身近に存在する多くの花が含まれています。

キク科の特徴は、その花の構造にあります。一つ一つの「花」として認識される部分は、実際には多数の小花が集まったもので、これを総合花と呼びます。ダリアもこの特徴を持ち、その豊かな形状と色彩は、これら多数の小花が一つに集まることで生み出されています。
キク科の植物は、その美しさだけでなく、耐寒性や耐乾性に優れているものが多く、さまざまな環境で育つことができます。これは、ダリアが世界中のさまざまな気候で栽培されている理由の一つでもあります。
ダリアの起源
ダリアは、その鮮やかな色彩と多様な形状で広く親しまれていますが、その起源は南米の高地にまでさかのぼります。具体的には、現在のメキシコ、グアテマラ、コロンビアにかけての地域で野生のダリアが発見されています。

この美しい花の名前は、18世紀スウェーデンの植物学者アンドレアス・ダールに由来します。彼はカール・リンネウスの弟子で、スウェーデン王立科学アカデミーの一員でもありました。ダリアの名前は、ダールの功績を称えて名付けられました。
ダリアのヨーロッパへの渡来
ダリアは1791年にスペインの植物学者によってヨーロッパに初めて持ち込まれました。その後、彼らの鮮やかな色彩と独特な形状が高く評価され、広く栽培されるようになりました。
特に19世紀にはダリアブームが到来し、多くの新品種が開発されました。この時期には、今日見ることができる多くのダリアの種類が生まれています。

ダリアと文化
ダリアは、その美しさと花言葉から多くの文化で象徴として使われてきました。特にメキシコでは、ダリアは国花に指定されており、国民の心の中で特別な位置を占めています。
また、ダリアは多くの祭りや花展でも主役となっています。例えば、イギリスでは毎年「National Dahlia Society」による大規模なダリア展が開催されています。
ダリアの日本への流入
ダリアは、19世紀半ばに日本にも紹介されました。日本への最初の導入は、おそらくオランダ人によるもので、当時の日本とオランダとの間で行われていた貿易を通じて行われたと考えられています。

日本に導入された当初、ダリアはその美しさからすぐに人気を博し、庭園や公園で広く栽培されるようになりました。また、日本独自の品種改良も行われ、多くの新しい品種が生まれました。これらの品種は、日本の風土に適応したもので、日本のダリア栽培の発展に大きく寄与しました。
【色別】ダリアの紹介
ダリアの切り花は、約3万種類以上あると言われています。
ダリアの花の大きさは、詳細に分類すると超巨大輪や巨大輪、大輪、中輪、小輪そして極小輪の6種類に分けられます。花色は赤色やピンク色、そして黄色やオレンジ色など種類が豊富で、花の咲き方や草丈なども品種によって実にさまざまです。
ここでは、その中の一部となりますが、色別のダリアについて紹介したいと思います。
ダリアの花の大きさを六種類に分類すると
- 超巨大輪(Giant): 花径が25cm以上のもの。非常に大きな花を咲かせ、その豪華さから庭や公園のアクセントとして人気があります。
- 巨大輪(Large): 花径が20cmから25cmのもの。大きな花を咲かせる一方で、超巨大輪ほどのスペースは必要としません。
- 大輪(Medium): 花径が15cmから20cmのもの。その大きさと美しさから、庭植えや鉢植え、切花としても人気があります。
- 中輪(Small): 花径が10cmから15cmのもの。その手頃な大きさから、さまざまな用途で使用されます。
- 小輪(Miniature): 花径が5cmから10cmのもの。その小さな花は、デリケートで繊細な印象を与えます。
- 極小輪(Pompon or Mignon): 花径が5cm以下のもの。その小さな花は、鉢植えやボーダー、花壇などで使用されます。
紫系
ムーンストーン
ダリア「ムーンストーン」は淡いラベンダー色のフォーマルデコラ咲きの中輪品種です。

フラワーショップ アリスのトップページには、この「ムーンストーン」と「ナマハゲパープル」の画像を使ってスライドを作っています。

「フォーマルデコラ咲き」とは?
「フォーマルデコラ咲き」とは、舟形の花弁が幾重にも重なった咲き方を指します。花弁が真っすぐ伸びているものをフォーマルデコラ咲きと呼びます。
ナマハゲパープル
ダリア「ナマハゲパープル」。ジャパンフラワーセレクション受賞品種です。
「ナマハゲパープル」とは、秋田県が誇る世界的に著名なダリア育種家である秋田国際ダリア園の鷲澤幸治氏と秋田県が共同開発した、秋田県オリジナル品種の「NAMAHAGEダリア」の一つです。

花の特徴としては、今までにないビロードがかった魅力的な赤紫色で、豪華な花型、そして圧倒的な存在感があり、和にも洋にも非常に良くマッチする点が挙げられます。
ピンク系
ベイビーピンク
中央部分の濃いピンクが、外側に向かって次第に淡いピンク色に変化していきます。小ぶりなダリアです。

みっちゃん
ダリア「みっちゃん」とは、濃いピンクが華やかなボール咲きのダリアで、愛嬌のあるネーミングも相まってとても可愛らしい印象のダリアです。

草性頑強で草姿が良く、切り花でも人気の品種です。
「ボール咲き」とは?
「ボール咲き」とは、筒状の花びらが球体状に密集したような咲き方です。
プリティピンク
非常に使いやすい色合い。濃いピンクの縁取りと、花びらの淡い黄色とうすいピンク色がきれいな一品です。

ナマハゲマジック
ナマハゲマジックは、ジャパンフラワーセレクション2013-2014 受賞品種です。
魅力的な紫色のグラデーションが特徴の中大輪系デコラティブ咲きの品種です。シックな色合いと豪華な花形で、存在感を放つ一方、和風から洋風まで様々なスタイルに適応します。

「デコラティブ咲き」とは?
デコラティブ咲きのダリアは、花弁が丸く、表面が平らまたはほんのりと湾曲しています。花弁は全体に密集しており、花全体が球形または半球形を形成します。大きさは様々で、小型から大型まであります。
はる
「はる」は、鮮やかなピンクの花色が印象的な中輪咲きのダリアです。花弁の枚数が多く、中心に向かって立体的に広がるフォルムは、見る角度によって様々な表情を見せてくれます。
花色はクリアなピンク。根元にほんのりとグリーンが入ることで、花全体に透明感と深みが生まれています。
茎は固くて真っ直ぐに伸び、アレンジや花束にも扱いやすい品種です。

赤系
レッドストーン
ダリア「レッドストーン」は、赤色フォーマルデコラ咲きの中輪品種です。

ダリアの「小輪品種」「中輪品種」「大輪品種」とは?
ダリアの花は、大まかに分類すると、大きさによって「小輪品種」「中輪品種」「大輪品種」の三種類に分けられます。
・小輪品種は、花径が5cm以下で、花びらが細く、花全体が小さく華奢な印象を与えます。
・中輪品種は、花径が5cmから10cm程度で、花びらの幅が広く、花全体が豊かな印象を与えます。
・大輪品種は、花径が10cm以上で、花びらの幅が広く、豪華な印象を与えます。
朝日テマリ
赤のダリアと言ったら定番の、絶大な人気を誇る「朝日テマリ」
赤のダリアは他にも様々な種類がありますが、個人的にはこの「朝日テマリ」が一番好きですね。

ボール咲きの中輪で、花持ちの良い品種です。
上の写真では光の反射で白っぽく写っていますが、実際には下のような真っ赤なダリアです。

ガーネット
ダリア「ガーネット」は、セミカクタス咲きの中大輪品種で、年間を通して安定した赤色の発色が期待できる品種です。

「セミカクタス咲き」とは?
「セミカクタス咲き」とは、花弁の咲きが外側に反っているタイプのことです。
エタニティールージュ
品種改良されたダリア「エタニティーシリーズ」は、日持ちが一般的な品種の1.4~2.1倍に向上しています。
日持ちも良く、鮮やかな色合いのこの品種もおすすめです。

花型が整ったフォーマルデコラ咲きで、くすみのないきれいな赤色のダリアです。
ルージュマジック
ルージュマジックは中大輪のフォーマルデコラ咲きです。写真では明るく撮影されていますが、実際に見ると「真っ赤」という言葉がふさわしい色合いです。

黒蝶
ダリア「黒蝶」。名前の通り、黒と赤の混色のダリア。気品があり、存在感が抜群です。
直径は約15cmの大きめのダリアで、ダリアブームの火付け役になりました。

白系
かまくら
ダリア「かまくら」。ジャパンフラワーセレクション2008年・2009年 受賞品種です。
純白度が高い品種で、存在感のある大輪の花が特徴です。ダリアの中でも花持ちが良く、おすすめの品種となります。

彩雪
ダリア「彩雪 (さいせつ)」は形状も純白の色合いも素晴らしく、美しい一品です。
純白である雪に彩りを添えるという名前の通り、花びらが幾重にも重なって咲きます。
中心部はクリーム色で外側にいくにつれて透明感のある白になります。

複色系
ムーンワルツ
中大輪の「ムーンワルツ」。花径は約17cm前後となります。
桃色から黄色へと美しく変化するグラデーションが特徴です。このやわらかな雰囲気の花容は、見る人を魅了します。
下の写真はダリア「ムーンワルツ」のみを使った花束となります。

ルル
赤い縁取りが特徴的なダリア「ルル」は、季節によって花色が変化する品種です。
高温期はベージュがかった白、気温が下がると白地に赤の縁取りが現れる複色の花になります。

柔らかく上品な印象を持ちながらも、一輪でしっかりとした存在感があり、ブーケやアレンジのアクセントにも最適です。
他の花とも合わせやすく、季節感を演出する花材としておすすめの一輪です。
ダリアを使った花束
ダリア「ムーンワルツ」を使った花束
写真はダリア「ムーンワルツ」を入れた花束。淡い色合いでお作りしました。
身長約160cmの女性が持つと、こんな感じの大きさになります。ボリューム感も十分です。

ダリア「ガーネット」を使った花束
お客様から、赤・オレンジ・グリーン(葉物)の3色を使ったブーケのご注文を頂きました。
今回は、ダリア「ガーネット」と赤バラ、オレンジのスプレーバラとユーカリ、そして八丈島産のルスカスを入れてお作りしました。

ダリア「朝日テマリ」を使ったフラワーアレンジメント
下の写真はダリア「朝日テマリ」を使ったフラワーアレンジメント。原色の組み合わせに白の八重百合を中央に据え、全体の色の調和を図っています。

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ダリアの花束の制作
今回は、ダリア「ムーンワルツ」のみを26本使った花束の制作をご紹介します。
ムーンワルツをテーブルに載せた状態。

1本1本をよく見ると、花の向きや角度が全く違います。

向きや角度を揃えながらスパイラルに組んでいきます。


組み途中の段階。上向きの花もあれば、完全に横に向いている花もありますので、どの花をどこに配置するか構想を練りながら組みます。


向きや角度を修正し、完成。この後、ラッピング作業に移行します。


ラッピングを行っていきます。ラッピングの色合いは、花の色合いを加味しながら決めていきます。
今回のダリアは黄色とピンクの複色ですので、それに見合った色合いのラッピング用紙を選択しました。


リボンを付けていきます。

完成。豪華なダリアの花束ができました。


ダリアの日持ち
体感的に15~20年前は、ダリアの日持ちは3~5日ほどと、日持ちがしない切り花の代名詞との認識でした。
しかしながら近年は、切り花のダリアは5~7日以上と、ずいぶん日持ちがするようになってきたと感じています。
恐らくこれは、生産者が収穫した後、日持ちのする液肥に浸けてから出荷しているのだと考えています。

更に近年は、ダリア専用のクリザール製「ミラクルミストff」のような鮮度保持剤が開発されたことにより、更に長持ちすることも多くなってきました。
フラワーショップ アリスでは、お客様が一日でも長く鑑賞できるようにと、この業務用の「ミラクルミストff」をダリア入荷時に必ず使用しております。
実際、この「ミラクルミストff」を使用すると、7日どころか10日間持つ場合もあります。
ダリアの生産現場
写真は2月に産地訪問で伺った沖縄県の嘉数さんが生産しているダリアの圃場の様子。
花を沖縄から本土へ船便で輸送すると4日かかります。鮮度重視のダリアは長期輸送が向きません。そのため、この嘉数さんが生産したダリアは沖縄県での流通にとどまっています。


ダリアの生産は、種子または塊根から始まります。
ダリアは成長が早く、適切な条件下では数ヶ月で開花します。生産は温度管理が重要で、冷涼な気候を好むダリアは、過度な暑さや寒さを避ける必要があります。
用語解説:「塊根」とは?
塊根(かいこん)とは、植物の根が肥大して養分を蓄える働きをする貯蔵根のことです。普通は紡錘形のいもの形となるものを指します。不定芽をつくって栄養生殖を行うものが多く、カラスウリ、サツマイモ、ダリアなどで見られます。
まとめ
本記事では、ダリアの魅力を歴史的背景から品種ごとの特徴、実際の花束制作や生産現場の様子まで、多角的に紹介してきました。
ダリアは、南米の高地を原産とし、18世紀にヨーロッパへ伝わった後、数多くの品種が生み出され、現在では世界中で親しまれる花となっています。色彩や咲き方が非常に多様で、用途やシーンに合わせて選べる点も、ダリアならではの魅力です。
また、本記事で取り上げたように、品種ごとの色や形、花持ちの違いを理解することで、より実用的に花束やアレンジメントに取り入れることができます。

ダリアは、ただ美しいだけでなく、その一輪一輪に物語と文化、そして生産者のこだわりが詰まっています。
本記事が、皆様のダリア選びや花に対する理解を深める一助となれば幸いです。
この記事を書いた人

- 代表取締役社長・1級色彩コーディネーター
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こんにちは。福島県郡山市にあるフラワーショップ アリスの代表を務めております、菊地充智です。
元教員としての経験を活かしながら、色彩の専門知識を基に、お客様一人ひとりに寄り添った花づくりを行っています。
全国の産地を自ら訪問し、生産者の声を直接伺いながら、確かな品質と生産者の想いやこだわりが詰まった花を選んでご提供しています。
また、1級色彩コーディネーターとして、色彩の理論に基づいた花束・アレンジメントのご提案や、色彩と花に関する情報発信にも力を入れています。
ブログ記事では、花の魅力や色彩などに関する知識を、できるだけ分かりやすくお届けしています。
ご覧いただいた皆様が、花や色彩の奥深さに興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。
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