薔薇(バラ)の作付け動向の変遷
一口に薔薇と言っても、その種類は様々。20年前、30年前と比べてみても、薔薇の種類や作付け動向は大きく変化しています。
ここでは、具体的な品種名を挙げながら、薔薇の作付け動向の変遷について述べていきたいと思います。
薔薇(バラ)の作付け動向の変遷
20年ほど前は多く作付けされていた「ローテローゼ」
およそ20年ほど前は赤バラと言ったら「ローテローゼ」と言われるぐらい多くの生産者が作付けしていましたが、今は市場で見かけることはほとんどありません。
「ローテローゼ」そのものにも魅力はあるのですが、花屋から見た欠点を上げるとすれば「日持ちがしない」「赤バラの中でも色が暗い(黒っぽい赤)」などがあり、弊社でもずいぶん前からローテローゼに変わる別の品種を積極的に導入するようにしています。
現在では作付けNo.1の赤薔薇「サムライ」と市場での評価
現在ではローテローゼに変わって全国での作付けがNo.1となった赤薔薇「サムライ」。特徴としては、深紅の色合いと花の形が美しく、ボリュームがある点。花持ちがいい点等が上げられます。
市場ではセリを行い、生産者の生産コストをベースにセリで価格が決まっていきます。結局のところ薔薇を含めた切り花の変遷が起こるのは、「セリでの(全国的な)価格が高い切り花=(プロとしての)花屋が高く評価している」という図式になるため。



これまで、埼玉県や沖縄県、山形県などの花生産者のところへお伺いさせて頂きましたが、生産者は試行錯誤で新品種も含めた花生産を手探りで行っています。「市場で高値を付く花=需要のある(魅力的な)花」という図式となるため、生産者は種苗会社などと相談しながら、次期の主力となる花は何かを考えながら生産しています。
赤薔薇「レッドジャイアント」
下の写真は静岡県大井川(藤枝市)で作付けされている赤薔薇「レッドジャイアント」を使った花束。花の形がいかにも薔薇らしく、豪華な花束となっています。
赤バラ「サムライ」よりも明るい色合いでボリューム感もあり、フラワーショップ アリスでは積極的に取り扱っているバラの一つとなります。

関連記事
明るい色合いで、形状が変わっている赤薔薇「ファーストエディション」
同じ赤薔薇でもこちらは明るい色の「ファーストエディション」。愛知県のJAひまわりバラ部会で生産されているものです。「ファーストエディション」は作付面積が少ないため、基本的に周年での入手が可能ではあるのですが、時期によっては欠品になる恐れが高い珍しい薔薇です。

JAひまわりバラ部会で一番作付面積が大きいのは赤の一輪バラ。約13種類以上の赤バラを作付・生産しています。赤バラと言っても上記写真のように色味等に大きな違いがあり、特性もまた変わってきます。
「ミーティア+」と生産者の見方・花屋の見方
近年私が(個人的に)非常に注目している薔薇がこちら。静岡県大井川産の「ミーティア+」。ワインレッドの、薔薇らしい薔薇。まるで、少女漫画に出てきそうな色合い。

この薔薇は愛知県のJAひまわり部会では生産しておらず、他産地でもほとんど生産していないだろうと思われる希少種。
薔薇の作付けは生産者側から見れば栽培しやすいもの、市場で評価され価格が安定しているものに変わっていきます。一方、花屋から見れば日持ちがするもの、色が変わったもの、使いやすい(他の花材と合わせやすい)ものなどの視点から薔薇を評価し、値付けをしていきます。
花屋が使いやすい薔薇の代表品種「ファンシーローラ」
花屋から見て使いやすい(他の花材と合わせやすい)代表的な品種がこちら。スプレーバラ「ファンシーローラ」。やはり使いやすさでは別格のため、JAひまわりバラ部会の中でもトップクラスの作付け面積を誇ります。

「ファンシーローラ」は何と言っても色合いが柔らかく、尚且つ無彩色の「白」が入っているため、他の花材とよく調和します。この色合いが、この薔薇の圧倒的な魅力となっています。
作付けが伸びている薔薇の代表例「フラッシング」
作付面積は少ないが、今、圧倒的に伸びている(JAひまわりバラ部会での作付面積が前年対比1.5倍となっている)品種がこちら、スプレーバラ「フラッシング」。
今回はフラワーアレンジメントの下側に使いましたが、ピンクと白の複色のスプレーバラです。作付面積が圧倒的に少ないため常次入荷は難しいのですが、積極的に弊社では取り扱っています。

「ファンシーローラ」と違い、同じピンク・白の構成でもこちらの「フラッシング」は白とピンクが明確に分かれ、はっきりした色合い。白の絵の具とピンクの絵の具を混ぜたような感じです。
フラワーショップ アリスが注目している薔薇「シトラスジェル」と「マリンジュエル」
フラワーショップ アリスでここ最近特に注目している品種の一つがこちら。スプレーバラ「シトラスジェル」。こちらも作付面積が少ないですが、ボリュームがあり、使いやすい品種です。

こちらも作付面積はそこまで多くありませんが、フラワーショップ アリスで積極的に取り入れているスプレーバラ「マランジュ」。赤と濃いピンクの中間のような色合い。JAひまわりバラ部会では「ピンク」に分類されていますが、ピンクの中でもかなり濃いピンクです。

薔薇(バラ)の作付け動向の変遷・まとめ
薔薇の作付けに関しては、生産者や生産地はかなり戦略的に行っており、単純に作りやすいからといった理由のみでは行われません。やはりお客様にとってよりよいもの、市場価値が高いものを作っていこうとする意気込みや気概というものが、品種ごとの作付面積の増減という形で現れてきます。
20年前、或いは30年前に流行した品種というものはほとんど無くなり、今は最新品種も含め、その時の時勢に合わせた品種が続々生産されています。そんな品種の変遷を追いかけるのも、面白いものです。
この記事を書いた人

- 代表取締役社長/色彩講師/UC級講師/1級色彩コーディネーター
-
こんにちは。福島県郡山市にあるフラワーショップ アリスの代表を務めております、菊地充智です。
元教員としての経験を活かしながら、色彩の専門知識を基に、お客様一人ひとりに寄り添った花づくりを行っています。
全国の産地を自ら訪問し、生産者の声を直接伺いながら、確かな品質と生産者の想いやこだわりが詰まった花を選んでご提供しています。
また、色彩講師(AFT認定)/UC級講師(AFT認定)/1級色彩コーディネーターとして、色彩の理論に基づいた花束・アレンジメントのご提案や、色彩と花に関する情報発信にも力を入れています。
ブログ記事では、花の魅力や色彩などに関する知識を、できるだけ分かりやすくお届けしています。
ご覧いただいた皆様が、花や色彩の奥深さに興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。
最新の投稿
- 2025年11月11日コラボ企画「滑川神社×福島県産花×アリス」コラボ企画⑰
- 2025年11月5日コラボ企画「高木寺×福島県産花×アリス」コラボ企画⑯
- 2025年10月24日コラボ企画「ビックパレット×福島県産花×アリス」コラボ企画⑮
- 2025年10月18日学びと資格【色彩講師養成講座】合格者が語るリアルと価値~色彩検定1級のその先へ~


