配色イメージで変わる!フラワーアレンジの魅力と実践例
フラワーショップ アリスにおけるフラワーアレンジのイメージ別配色をまとめました。
今回はPCCS(Practical Color Co-ordinate System:日本色研配色体系)を使った配色イメージに沿いながら説明を行いました。
【PCCS対応】花のトーン一覧で筆者の考えとしてまとめたように、花に関しては、v(ビビッド)・b(ブライト)・lt(ライト)・P(ペール)・S(ストロング)の種類が非常に多い印象です。逆に言うと無彩色の黒やdkg(ダークグレイッシュ)・g(グレイッシュ)などのトーンの花材は非常に少ないです。
そのため、一般的な配色イメージと実際に制作するフラワーアレンジの配色について、花材の制約等によりやや違う場合が出てくる点はご容赦下さい。
なお、PCCSのトーン表を含めた著作権は日本色研事業株式会社様が保有しております。フラワーショップ アリスでは、PCCSの用語等を使用するに当たり、日本色研事業株式会社様に許諾申請を行い、著作権の範囲において、正式な許諾を得たことを合わせてご報告いたします。
配色イメージで変わる!フラワーアレンジの魅力と実践例
カジュアル
カジュアルのイメージ:「明るい」「活発な」「親しみやすい」など
ベースカラー:イメージの全体的な雰囲気を表す橙から黄色の中・低彩度域の明清色を用います。
太陽をイメージさせる橙~黄色の明清色に、色相に対称性のある明清色や純色を組み合わせます。色相の対比や彩度の対比が感じられる配色にすると、カジュアルなイメージになります。
カジュアルの参考アレンジ
下のアレンジはbrightトーンの黄色のラナンキュラスやスプレーバラを入れながら、対比としてピンクのエピデンドラム等を入れ、明るく元気なイメージでお作りしました。
また、アクセントカラーに、ブルーのデルフィニウムが入っています。

フレッシュナチュラル
フレッシュナチュラルのイメージ:「若々しい」「新鮮な」「さわやかな」など
ベースカラー:全体の明るさを表現するために、ホワイト系やPailトーン、lightトーンを用います。
フレッシュナチュラルの参考アレンジ
色相はイエローグリーン系、グリーン系を中心にブルーグリーン系までとします。
下のアレンジはグリーン系を中心とし、アクセントカラーとしてlightトーンのピンクのスイートピー等を入れてお作りしました。

下の写真はお供え用のアレンジ。フレッシュナチュラルの配色で、洋花でお作りしました。お供え用のアレンジですので、アクセントカラーとしてピンクなどの色合いは用いずに制作しました。

ウォームナチュラル
ウォームナチュラルのイメージ:「穏やかな」「素朴な」「ぬくもりのある」など
ベースカラー:中彩度の中間色の穏やかな色を用います。
ウォームナチュラルの参考アレンジ
山や田園などの自然環境に多く見られる色(自然環境色)が中心です。
下のアレンジでは、dullトーンの茶色の色合いの花材を多用し、アクセントカラーとしてブルーのリンドウを入れてお作りしました。

(参考)ウォームナチュラルの生け込み
中彩度の色合いとは、下の写真のようなくすんだ色合いのこと。まさにウォームナチュラル配色です。この生け込みも、アクセントカラーとしてブルーのリンドウを入れています。

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ダイナミック
ダイナミックのイメージ:「強い」「はっきりした」「派手な」など
ベースカラー:色どうしが対比的に影響し合う関係がイメージの基本となるので、ベースカラーとしても高彩度色を用います。
ダイナミックの参考アレンジ
高彩度色の組み合わせにより色相対比が起きる配色です。トーンとしてはvividやstrongトーンを多用します。
下のアレンジはvividトーンの花材を中心にお作りしました。ダイナミックの配色には黒も入れるといいのですが、花材に「黒」はほとんど無いため、今回は同じ無彩色の「白の八重ユリ」や胡蝶蘭を入れてお作りしました。

高彩度色の組み合わせのアレンジでは、色が激しくぶつかるハレーションが起きやすいため、フラワーショップ アリスではアソートカラー(中面積)、或いはアクセントカラー(小面積)に白色の花材も入れています。
ロマンチック
ロマンチックのイメージ:「かわいい」「可憐な」「愛らしい」など
ベースカラー:Pailトーンが中心となります。
ロマンチックの参考アレンジ
ロマンチックのアレンジは、Pailトーンやlightトーンの赤紫~赤みの黄までが選択範囲です。
下のアレンジはPailトーンのピンクのスプレーバラやシャクヤクも入れ、ピンク系でお作りしたアレンジ。「ロマンチック」の配色イメージがつかめると思います。

下の写真はPailトーンのバラを中心としたロマンチック配色のアレンジ。アクセントカラーとして紫のカーネーションを入れました。

本来、ロマンチックのアレンジは、Pailトーンやlightトーンの赤紫~赤みの黄までが選択範囲ですが、下の写真はPailトーンの黄色のトルコキキョウも入れたアレンジ。
淡い黄色を入れたため「ロマンチック」の配色とは多少ずれてきますが、「かわいらしい」といったイメージはつかめると思います。

シック
シックのイメージ:「渋い」「洗練された」「大人っぽい」
ベースカラー:本来は中・低明度の無彩色やgrayishトーンが中心となります。しかしながら花の場合、「黒」や「グレー」の色がほとんど無いため、フラワーショップ アリスでは濃い紫などをベースカラーとし、アクセントカラーに赤バラ等を入れてお作りしています。
シックの参考アレンジ
下の写真はシックの参考アレンジ。先述のようにベースカラーに濃い紫を、アクセントカラーに赤バラを入れて制作しました。また、ラッピングペーパーにはボルドー色のダークグレイッシュな色合いのものを採用し、「渋い」「大人っぽい」といったイメージを強く打ち出しました。

(参考)シックな花束
下は紫系の花材、そしてdarkトーンの花材(ビバーナム)を入れたシックな花束。前述のようにラッピングペーパーにはダークグレイッシュトーンのものも使用し、「渋い」「大人っぽい」といったイメージを強く打ち出しました。

エレガント
エレガントのイメージ:「女性的な」「気品のある」「洗練された」「優雅な」など
ベースカラー:Pailトーンやlightgrayishトーンを使い、パープル系の類似色相の範囲で表現します。
エレガントな花束
下の写真はエレガントなイメージに沿った淡い紫色をベースカラーとした花束。lightトーンの淡い紫色の一輪バラ「ライラッククラシック」やアルストロメリア、そして濃い紫色のトルコキキョウ等を使いながら制作しました。
ラッピングにも紫のリボン等を使用し、エレガントなイメージをより強調しました。


クリア
クリアのイメージ:「明るい」「さわやかな」「透明感のある」など。
色相:ホワイト系とブルー系の寒色の組み合わせとなります。
クリアの参考アレンジ
白の花材は豊富にありますが、ブルー系の花材は極めて限定されています。本来であれば「クリア」のイメージに沿うためには、Pailやlightトーンのブルーを入れるべきところですが、今回は色を吸わせてブルーに染めたカーネーションを使用しているため、原色のvividトーンのブルーカーネーションとの組み合わせとなります。

先述のように常に「ブルーの花材」がある訳ではないので、ご希望に添えない場合が出てくることもあるかと思います。ブルーの花材が必要な際には、早めのお問い合わせを頂ければ幸いです。
トーン(tone)解説
v(ビビッド):高彩度 ※純色
・v=vivid
・純色。白や黒を含まず、最も鮮やかな色。高彩度(9s=9Saturation)。
・トーンイメージ:鮮やかな 派手な いきいきとした 目立つ
b(ブライト):高彩度・高明度 ※明清色
・b=bright(明るい)
・純色(v)に白を少量混ぜた明清色。澄んだ調子の明るいトーン
・トーンイメージ:健康的な 陽気な 華やかな
s(ストロング):高彩度・中明度 ※中間色
・s=storong(強い)
・純色(v)に灰色を少量混ぜ、彩度が少し下がった中間色。しかしながら、純色(v)と同様な鮮やかな色調
・トーンイメージ:くどい 動的な 情熱的な
dp(ディープ):高彩度・低明度 ※暗清色
・dp=deep(濃い)
・純色に黒を少量混ぜた暗清色。澄んだ暗い色調。
・トーンイメージ:深い 充実した 伝統的な 和風の
lt(ライト):中彩度・高明度 ※明清色
・lt=light(浅い)
・純色に白を混ぜた、澄んだ調子の明るい色調。
・トーンイメージ:澄んだ さわやかな 子どもっぽい 楽しい
sf(ソフト):中彩度・中明度 ※中間色
・sf=soft(柔らかい)
・純色(v)に明るめの灰色を混ぜた中間色。穏やかで優しい雰囲気の色調。
・トーンイメージ:穏やかな ぼんやりした
d(ダル):中彩度・中明度 ※中間色
・d=dull(鈍い)
・純色(v)に暗めの灰色を混ぜ、彩度が下がった濁った調子の中間色。落ち着きのある色調。
・トーンイメージ:鈍い くすんだ
dk(ダーク):中彩度・低明度 ※暗清色
・dk=dark(暗い)
・純色に黒を混ぜた暗清色。澄んだ調子の暗い色調。
・トーンイメージ:大人っぽい 丈夫な 円熟した
p(ペール):低彩度・高明度 ※明清色
・p=pale(薄い)
・純色に白を多量に混ぜた明清色。低彩度だが、淡くて明るく、澄んだ色調。
・トーンイメージ:軽い あっさりした 弱い 優しい 淡い かわいい
ltg(ライトグレイッシュ):低彩度・中明度 ※中間色
・ltg=light graush(明るい灰みの)
・純色に明るめの灰色を混ぜた中間色。落ち着いた印象ながらも柔らかみのあるトーン。
・トーンイメージ:明るい灰みの 落ち着いた 渋い おとなしい
g(グレイッシュ):低彩度・中明度 ※中間色
・g=graysh(灰みの)
・純白に灰色を混ぜてできる彩度が下がった濁った調子の色調。
・トーンイメージ:濁った 地味な
dkg(ダークグレイッシュ):低彩度・低明度 ※暗清色
・dkg=dark graysh(暗い灰みの)
・純色に黒を大量に混ぜた暗い暗清色。彩度と明度が最も低い。
・トーンイメージ:陰気な 重い 固い
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この記事を書いた人

- 代表取締役社長・1級色彩コーディネーター
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こんにちは。福島県郡山市にあるフラワーショップ アリスの代表を務めております、菊地充智です。
元教員としての経験を活かしながら、色彩の専門知識を基に、お客様一人ひとりに寄り添った花づくりを行っています。
全国の産地を自ら訪問し、生産者の声を直接伺いながら、確かな品質と生産者の想いやこだわりが詰まった花を選んでご提供しています。
また、1級色彩コーディネーターとして、色彩の理論に基づいた花束・アレンジメントのご提案や、色彩と花に関する情報発信にも力を入れています。
ブログ記事では、花の魅力や色彩などに関する知識を、できるだけ分かりやすくお届けしています。
ご覧いただいた皆様が、花や色彩の奥深さに興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。
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