ディスバットマムの深掘り:特性と種類、その多彩な活用法
ディスバットマムと聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
菊の一種であり、その鮮やかな色彩と独特の形状が特徴的なこの花は、近年注目を集めています。
一般的な菊のイメージを超えて、アレンジメントや装飾、仏事など多様な場面でその存在感を発揮し、日本の花文化に新たな風をもたらしています。
本記事では、ディスバットマムの魅力とその活用法について、詳しく探っていきます。その美しさと多様性、そして日持ちする特性を生かしたディスバットマムの活用例を通じて、花材の新たな可能性を体感してみてください。
ディスバットマムの深掘り:特性と種類、その多彩な活用法
ディスバットマムとは?
菊というと従来の白菊をイメージする方が大半だと思います。日本や中国が原産の菊ですが、1800年代に西洋に輸出され、西洋で品種改良されたものを「西洋菊」と呼びます。
もっとも、現在は「西洋菊」と言う名前は一般的でなく、「スプーレーマム」や「ディスバットマム」として市場に流通しています。

ディスバットマムは菊の一種です。元々は日本や中国原産の菊が西洋で品種改良されたもので、このディスバットマムは特に多種多様な色彩と形状を持っています。
ディスバットマムは、1本の茎に対して花が1つだけ咲いています。「dis (ディス)=除去する・bud (バッド)=脇芽」という意味があり、菊は元々1本の茎に対していくつも蕾が付きますが、ディスバットマムは1つの蕾だけを残し、人間の手で選別して作り上げます。
特徴的なのはその鮮やかな色合いで、緑、ピンク、オレンジ、赤といったバリエーションがあり、一つ一つの花が個性的な表情を持っています。また、大輪であることが特徴的で、一輪でもその存在感は十分です。

また、ディスバットマムは通常の菊と同じく、花が長持ちするという特性も持っています。そのため、アレンジメントや手水花、生け込みなどに使用される他、仏事用の花としても使われます。
近年、その美しい色合いと形状、花持ちの良さから人気が急上昇しており、様々な場面で見かけることが増えています。一般的な菊と異なり、祝い事などの華やかな場にもピッタリなディスバットマム。その可能性は無限大と言えるでしょう。

ディスバットマムの特性と需要
写真のグリーンの花がJA八戸まべち産のディスバットマム「ロサーノシャルロッテ」。スプレーマムと違い、一輪のカラフルな色合いが特徴の菊です。
従来の菊のイメージと違い、お祝い用のフラワーアレンジメントに入れてもよく調和します。
ディスバットマムにはこのグリーンのタイプのものだけでなく、下の写真のようなピンクやオレンジ(茶色)のものもあれば、濃い赤色のものもあり、色や形状が非常に豊富です。


生産量は全国的に見てもまだまだ少なく、生産地も限定されています。
コロナ渦で葬儀の簡略化等により白の大菊の需要が減少した一方、家庭需要にこのディスバットマムは伸びています。
ディスバットマムの種類
ディスバットマムは西洋菊の改良品種であり、様々な色や形がありますが、その中のいくつかを取り上げてみたいと思います。
セイツィール
青森県八戸産ディスパットマム「セイツィール」。中央がグリーンや黄色ですが、外側に向かってグラデーションのように濃いピンクに変わっていく、きれいなディスバットマムです。

ロサーノ
その色彩は美しいピンクで、心をくすぐるディスバットマム、それが「ロサーノ」です。
ロサーノシリーズは、ピンクと黄色の複色である「ロサーノシャルロッテ」など、多彩なラインナップが魅力です。

これらはこの素晴らしい「ロサーノ」が原種となって、育種家により作り出されたものと推測されます。
セイ フォリア
青森県産ディスバットマム「セイ フォリア」。ジャパンフラワーセレクション2020-2021 受賞品種です。
サーモンピンクのかわいらしい色合いの菊です。日持ちも十分で、おすすめの品種です。

オペラピンク
青森県JA八戸まべち産ディスバットマム「オペラピンク」。淡いピンクの色合いが特徴的なディスバットマムです。

ソルベットバニラ
青森県JAまべち産ディスバットマム「ソルベットバニラ」。ほんのり淡い黄色が特徴的です。

イグニス
青森県JAまべち産ディスバットマム「イグニス」。秋らしい色合い。大輪の存在感のあるディスバットマムなので、秋らしい生け込み等にもよく似合います。

デセオ
青森県まべち産ディスバットマム「デセオ」。赤紫に白が入った特徴的な色合いのディスバットマムです。
和洋問わずどんなアレンジにも合う色合いとなっています。

ロッサ
青森県まべち産ディスバットマム「ロッサ」
デコラ系の真っ赤な色合いが特徴的なディスバットマムです。

サイレント
ディスバットマム「サイレント」は、その名の通り混じり気のない純白色が特徴の大輪系のディスバットマムです。丸みを帯びた豪華なデコラ咲きは、大輪のダリアと見間違えるほどの繊細さと優雅さを兼ね備えています。

「サイレント」の純白色は、純潔と無垢を象徴し、ブライダルシーンにもぴったりな花となっています。
デコラ咲きとは?
デコラ咲きは、花弁が重なり合って咲く特徴的な形状をしています。これは多くの種類の菊に共通する特徴であり、多くの花弁が中心から放射状に広がり、全体的にふっくらとした形状をしています。
この特徴的な花の形状は、華やかでゴージャスな印象を与え、その豊かな見た目から「デコラ」という名前が付けられました。これは「装飾的な」を意味する英語の”decorative”から来ています。
ディスバットマムの利用例
ディスバットマムを使った花手水
先日のブログ記事「お盆の花手水(はなちょうず)」にも記載しましたが、ディスバットマムはやはり菊なので、よく日持ちします。

「花手水」をネットで検索してみると、ガーベラを用いたものやバラを使ったものなどもありますが、花手水の花は水に長期間浸している状態なので、洋花は日持ちの観点から心配な面が出てきます。
一方、上記写真の菊(ディスバットマム)でしたら、それら洋花よりも日持ちの点で安心です。
ディスバットマムを使った生け込み
ディスバットマムは洋花と合わせた生け込みにも最適です。上記写真中央にある真っ赤なディスバットマムは「マーレッタ」。クリスマス風の生け込みにも違和感なく、自然に生け込めます。

ディスバットマムを使った正月用のフラワーアレンジメント
下の写真は正月用アレンジに使ったディスバットマムの一例。写真中央にある茶色と黄色の混色のディスバットマムは「チスパ」。洋花だけで構成すると「葉」のボリュームが感じられませんが、やはり菊類を入れるとボリューム感が変わってきます。

ディスバットマムの多面的な活用とその可能性
以上に見たように、ディスバットマムはその鮮やかな色合いと独特な形状から急速に人気が高まっています。仏事に限らず、アレンジメントや手水花、生け込み、祝い事の装飾など、その使用範囲は非常に広いです。
ディスバットマムは、菊の一種であるため、日持ちするという特性があります。これにより、フラワーアレンジメントに使うだけでなく、長期間花瓶に飾って楽しむことも可能です。その鮮やかな色合いが空間を彩り、日常生活に華やぎをもたらします。

また、特に注目すべきは、ディスバットマムが持つ未開拓の可能性です。その美しさと多様性、そして花持ちの良さを活かせば、今後さらに多くの場面でその存在感を発揮することが期待できます。
ディスバットマムは単体でも十分に美しさを発揮しますので、ご自宅の花瓶に飾ってみるのもおすすめです。
これらの点を考慮に入れると、ディスバットマムはこれからの花材として大いに期待が持てる存在であることが明らかです。華やかさと実用性を兼ね備えたディスバットマムを、ぜひ自身の生活の中で活用してみてください。
この記事を書いた人

- 代表取締役社長・1級色彩コーディネーター
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こんにちは。福島県郡山市にあるフラワーショップ アリスの代表を務めております、菊地充智です。
元教員としての経験を活かしながら、色彩の専門知識を基に、お客様一人ひとりに寄り添った花づくりを行っています。
全国の産地を自ら訪問し、生産者の声を直接伺いながら、確かな品質と生産者の想いやこだわりが詰まった花を選んでご提供しています。
また、1級色彩コーディネーターとして、色彩の理論に基づいた花束・アレンジメントのご提案や、色彩と花に関する情報発信にも力を入れています。
ブログ記事では、花の魅力や色彩などに関する知識を、できるだけ分かりやすくお届けしています。
ご覧いただいた皆様が、花や色彩の奥深さに興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。
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