百合(ユリ)の香りの効果とは?

 百合の香りは、多くの人にとって心地よいものです。しかし、その香りにはどんな成分が含まれているのでしょうか。また、その香りにはどんな効果があるのでしょうか。

 今回は、百合の香りに関する最新の研究を紹介しながら、百合の香りの成分や効果、お手入れ方法などについてご紹介します。
 百合の切り花をもっと楽しむためのヒントをお届けします。

百合(ユリ)の香りの効果とは?

百合の香りの主な成分と香りの変化

 百合の香りは、甘くフローラルな香りが特徴的です。この香りは、花びらの中に含まれる成分によって作られています。百合の香りは、多くの人にとって上品で優雅な香りとして知られており、芳香剤や香水、スキンケア製品などにも利用されています。

百合の花びらにある主な成分

 百合の花びらには、フラボノイドやアルカロイド、アミノ酸などが含まれています。これらの成分は、花びらの色や形を形成するだけでなく、香りにも影響を与えます(注1)

 しかし百合の香りは、これらの成分だけでなく、数十種類以上の成分からなる複雑なものです。また、品種や開花期によっても香りの成分は異なります。一般的な傾向としては、次のように品種ごとに特徴的な香りの成分があります。

・オリエンタル系の百合では、ジアセチルやヘキサナールといった成分はあまり検出されず、代わりにベンジルアルコールやベンジルアセテートといった成分が主要なものとなっています。

・アジア系の百合では、ジアセチルやヘキサナールといった成分が多く検出され、甘くフルーティーな香りを持っています。

・ロングフラワリング系の百合では、ジアセチルやヘキサナールといった成分が少なく検出され、代わりにリナロールやゲラニオールといった成分が主要なものとなっています。

香りの変化

 百合の切り花の香りは、時間の経過とともに変化することがあります。最初は、フローラルな甘い香りが立ち上がりますが、時間が経つにつれて、より繊細な香りに変化していきます。これは、花びらに含まれる成分が酸化して、香りが変化するためと考えられています。

百合の香りの効果

 百合の香りには、様々な効果があると言われています。しかし、これらの効果は科学的に証明されたものではなく、個人差や好みもありますので、必ずしも効果的であるとは限りません(注2)

 以下にいくつかの例を挙げますが、これらはあくまで一般的な傾向や個人的な感想としてご覧ください。

リラックス効果

 百合の香りにはリラックス効果があると言われています。香りを嗅ぐことで、脳内に存在する交感神経が抑制され、副交感神経が優位になると考えられています。交感神経は、ストレスや不安などの状況下で優位に働き、体を興奮状態に導きます。一方で、副交感神経は、体をリラックス状態に導きます。そのため、百合の香りを嗅ぐことで、体がリラックスし、ストレスや不安を緩和することができると言われています。

 また、百合の香りは、緊張を和らげる作用も持っていると言われています。香りを嗅ぐことで、緊張した神経をリラックスさせ、精神的なストレスを軽減することができると言われています。そのため、百合の香りは、疲れた心や身体を癒すためのアロマセラピーとしても利用されています。

抗うつ効果

 百合の香りには抗うつ効果があると言われています。香りを嗅ぐことで、脳内のセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質が分泌されると考えられています。これらの神経伝達物質は、気分を改善する効果があり、うつ病の治療にも使用されることがあります。そのため、百合の香りを嗅ぐことで、気分を改善し、うつ病の症状を軽減することができると言われています。

睡眠改善効果

 さらに、百合の香りには睡眠改善効果もあると言われています。香りを嗅ぐことで、交感神経が抑制され、副交感神経が優位になり、眠りの質が向上すると考えられています。特に、ストレスや不安によって眠りが浅くなっている人にとって、百合の香りは効果的な睡眠のサポートとなるでしょう。

 以上のように、百合の香りには、リラックス効果、抗うつ効果、睡眠改善効果があると言われています。

百合の切り花のお手入れ方法

 百合の切り花を長く楽しむためには、適切なお手入れが必要です。まず、花瓶に水を入れ、切り口を斜めに切ってから花を挿します(注3)

 百合は深水がいいとも言われますので、花瓶の中の水は比較的多めに入れてみて下さい。

 花を切るときは、できるだけ斜めに切るようにしましょう。また、切り花は風通しの良い場所に置くといいです。一方で、直射日光が当たる場所や、風通しが悪い場所に置くと、花が早く枯れてしまう原因となります。
 ただし、風通しの良い場所と言っても、エアコンの風に直接当てるのは厳禁です。エアコンの風に当て続けると、すぐに水が下がり、花が萎れてしまいます。

まとめ

 百合の切り花の香りは、多くの成分からなる複雑なものです。品種や開花期によっても香りの成分は異なりますが、一般的にはジアセチルやヘキサナールなどの成分が強い香りを持っています。また、時間の経過とともに香りが変化することもあります。

 百合の香りには、リラックス効果、抗うつ効果、睡眠改善効果があると言われていますが、これらは科学的に証明されたものではなく、個人差や好みもあります。    
 百合の香りを楽しむ場合は、自分に合った品種や環境を選ぶことが大切です。

 百合の切り花を長く楽しむためには、適切なお手入れが必要です。花びらの切り口を斜めに切って水をよく吸わせることや、風通しの良い場所に置くことなどがポイントです。

 百合の切り花は、その美しさと甘い香りで人気があります。花束やアレンジメントなどにもよく使われます。贈り物や自分へのご褒美にもぴったりです(注4)

 フラワーショップ アリスでも、常時豊富な種類の百合をご用意しております。素敵な百合の切花を手に入れて、その香りに包まれてみてはいかがでしょうか。

参考文献

・Du, F., Wang, T., Fan, J., Liu, Z., Zong, J., Fan, W., Han, Y., & Grierson, D. (2019).
Volatile composition and classification of Lilium flower aroma types and identification, polymorphisms, and alternative splicing of their monoterpene synthase genes. Horticulture Research, 6(1), 110.
https://doi.org/10.1038/s41438-019-0192-9
(注1)この文献では、百合の花から放出される46種類の揮発性化合物のうち、16種類が初めて百合で同定されたことが報告されています。これらの化合物は、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類など様々な種類に分類されます。また、百合の花から放出される化合物の量や種類は品種や開花期によって異なることも示されています。

・農研機構. (2012). 成人男女に対するユリの香りの嗜好調査(農研機構技報 No.13). https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/NIFS12-05.pdf
(注2)農研機構技報 No.13 によると、百合の香りに対する嗜好性は性別や年代によって差があることが示されています。例えば、男性は女性よりも強い香りを持つユリを好まない傾向があります。また、年代別では、20代は強い香りを持つユリを好む割合が高く、60代は低いことが分かっています。さらに、強い香りを持つユリよりも香り抑制剤処理されたユリの方が好まれる傾向があることも報告されています。

(注3)農研機構技報 No.13 では、百合の香り抑制剤処理方法やその効果について紹介されています。香り抑制剤としてアミノオキシ酢酸(AOA)水溶液を用いて、切り花の茎を浸すか吸水させることで、百合の香気成分の生成や放出を抑えることができます。この処理は、百合の花色や開花期間に影響を与えないことも確認されています。

(注4)農研機構技報 No.13 で行われた調査結果では、ユリの使用目的やイメージに関する回答が示されています。ユリの使用目的として最も多かったのは「お祝い」(46.3%)であり、「お供え」(25.0%)、「自分用」(17.5%)、「プレゼント」(11.3%)と続きました。また、ユリのイメージに合う言葉として最も多かったのは「清楚」(38.8%)であり、「高級感」(28.8%)、「華やか」(23.8%)、「上品」(22.5%)、「白」(21.3%)と続きました。

この記事を書いた人

菊地充智
菊地充智代表取締役社長
 こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
 福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。

 2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
 そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。

 私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。

 皆さんが私の記事を通して、花の世界の美しさや、そこに込められた物語を感じ取っていただければ幸いです。それが私が記事を書く大きなモチベーションとなっています。どうぞよろしくお願いいたします。

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