3色配色を意識した生け込み ~埼玉県深谷市産SP品種・スカシユリ「ゴールドツィン」「バルトイーグル」とエリンジュームを利用して~

 色の世界から刺激を受けて、3色配色を活用した生け込みに挑戦しました。
 黄色、赤、暗めの青という鮮やかな3色を組み合わせ、色相環上でのバランスを探求すると共に、それぞれの花材が持つ特性と魅力を最大限に引き立てることを目指しました。

 埼玉県深谷市産のスペシャル品種であるスカシユリ「ゴールドツィン」、「バルトイーグル」、そしてエリンジュームを主役に据え、伝統と革新が交差する彩り豊かな世界へと誘います。
 今回の生け込みの詳細と、これら特別な花材の魅力をご紹介します。

3色配色を意識した生け込み ~埼玉県深谷市産SP品種・スカシユリ「ゴールドツィン」「バルトイーグル」とエリンジュームを利用して~

 今回は、色相環図における3色配色を意識した生け込みを行いました。3色配色とは、色相環上で等間隔の位置にある3色を組み合わせて構成する配色のことです。

 今回の生け込みでは、純色の黄色と赤、そして暗めの青という3色をメインに構成してみました。

 下の図が12色の色相環図です。黄色の次から右に4つ目が赤、そして赤の次から4つ目が青色です。この三点を結んだものが3色配色構成となります。
 例えば他にも、オレンジの4つ目が紫、紫の4つ目の緑の3色の組み合わせを3色配色の構成例として上げられます。

 今回、黄色の花材としては、純色の色合いのスカシユリ「ゴールドツイン」を、そして赤の花材としては、これまた純色の色合いのスカシユリ「バルトイーグル」を使用しました。

 ともに埼玉県深谷市産のスペシャル品種です。「スカシユリ」は一般的に聞いたことがある方もいると思いますが、似たような品種に「LAユリ」というものもあります。では、スカシユリとLAユリとの違いは何でしょう。以下にその違いについて簡潔に述べたいと思います。

スカシユリとは

 スカシユリとは、古来からある原種の百合。花卉業界ではその改良品種も含め、スカシユリと読んでいます。特徴としては冬から春先、そして秋に流通しますが、夏の暑さには弱く、夏場は流通しません。

 この「ゴールドツイン」も「バルトイーグル」もスカシユリの仲間ですが、花粉が無いのが特徴です。また、八重咲きも特徴的で、他のユリにはない形状をしています。

 尚、「ゴールドツイン」や「バルトイーグル」をLAユリと市場などの花卉業界で総称しているところも見られますが、正しくはスカシユリです。そのため、季節限定スペシャル品種としてのみ流通し、通年で入手ができません(スカシユリの特徴である、夏に弱い特性を持つため)。

 生産者サイドでは「ポーレンフリー(無花粉ユリ:polenn=花粉)」というカテゴリーで市場に流通してもらうように交渉しているそうです。しかし、LAユリという間違ったカテゴリーで登録された経緯があるため、その訂正に一苦労しているそうです。
~埼玉県深谷市のユリ生産者で長年私と親交のある関和さんとの電話での話から~

LAユリとは

 LAユリは、原種のスカシユリと鉄砲百合を掛け合わせた、ハイブリットの品種です。

 生産者サイドで見ると、スカシユリは豊富な色合いがありますが、栽培しにくいという欠点がありました。一方、日本原産の鉄砲百合は根っこが強く、丈夫です。そのため、安定した生産をすることができます。

 そのスカシユリの鮮やかな、豊富な色合いと鉄砲百合の栽培のしやすさの両方を兼ね備えたのがLAユリです。近年は前処理の進化で上の蕾までしっかりと色が乗り、最後まで咲ききります。

 最初の頃のLAユリは淡いピンクとオレンジのみでしたが、近年はスカシユリと遜色ないような形状、そして多様な色合が出回るようになりました。また、LAユリの最大の特徴は、夏にも強いことです。そのため、年間を通して生産・入手することができるようになりました。

スペシャル品種「ゴールドツイン」と「バルトイーグル」

 「純色」は通称「原色」とも呼ばれます。上の写真にある黄色の鮮やかな純色の、はっきりした色合いのスカシユリが「ゴールドツイン」。このユリは八重咲きの無花粉ユリです。

 無花粉ユリのため、花粉が衣服に付くこともなく、おすすめの一品となります。一般的なユリではこのような八重咲きとはなっていません。

 一方のバルトイーグル。こちらも八重咲きの無花粉ユリです。鮮やかな赤が目に飛び込んできます。

 埼玉県深谷市のスカシユリ・スペシャル品種は季節限定の生産となっています。

青の花材「エリンジューム」

 青の花材として選択したのが、このエリンジューム。エリンジュームのような明度の低い青色を出す花材は他にありません。強いて言えばルリタマアザミぐらいでしょうか。しかしながらアザミはこの寒い時期には流通しないため、エリンジュームの独壇場となっています。

 3色配色の組み合わせは、全て純色(原色)で構成してしまうとコントラストが強すぎて、アンバランスに見えてしまいます。純色として黄色・赤の花材を使うのであれば、青の花材は明度の低い、暗めの色を使うべきだと考えております。そういう意味で、この明度の低いエリンジュームは最適な花材であると思われます。

 今回は3色配色の花材を中心に、小手毬やドラセナ、バラ、桜を使用しました。あくまで今回は3色配色を構成しているスカシユリとエリンジュームがメインです。そのため、それよりも薄めの色としての桜や白の小手毬、同系色のように溶け込む明度の低いピンクのバラ「ミィーティア+」を利用し、スカシユリのはっきりした色合いを浮かび上がらせるようにしてみました。

使用花材

スカシユリ「ゴールドツイン・バルトイーグル」、エリンジューム、小手毬、・東海桜、ドラセナ(アトムピンク)、バラ「ミィーティア+」

この記事を書いた人

菊地充智
菊地充智代表取締役社長
 こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
 福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。

 2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
 そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。

 私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。

 皆さんが私の記事を通して、花の世界の美しさや、そこに込められた物語を感じ取っていただければ幸いです。それが私が記事を書く大きなモチベーションとなっています。どうぞよろしくお願いいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA