春の花、桃とミモザと小手毬と ~花材の特性とレイルマン比率を意識した構成~

 春の花、桃、ミモザ、小手毬。これらの花々は、季節の変わり目の明るさと新生を象徴しています。
 今回の記事では、これらの花材を巧みに使用し、鉄道写真家中井精也氏が提唱する「レイルマン比率」を活用した生け込みをご紹介します。

 レイルマン比率とは、被写体を特定の位置に配置することで視覚的なバランスと焦点を作り出す独特な方法です。
 
 記事ではこの比率を用いて、ミモザ、小手毬、桃を組み合わせた美しい春の生け込みを創り出します。
 また、それぞれの花の特性と管理方法についても詳しく解説します。これらの花々の美しさと春の喜びを感じながら、私たちの生け込みのアドベンチャーに一緒に参加しませんか?

春の花、桃とミモザと小手毬と ~花材の特性とレイルマン比率を意識した構成~

 春の花、桃を生けてみました。
 桃は花を触るとポロポロと落ちやすいため、なるべく花や蕾に触れないようにしながら、慎重に扱うようにしなければなりません。

 桃だけでも十分春を感じますが、今回は桃の花にミモザと小手毬(こでまり)を組み合わせながら、写真の構図の一方法である「レイルマン比率」も参考にしながら生け込みを行いました。

レイルマン比率とは

 今回の生け込みに関しては、写真の構図で提唱されているレイルマン比率を意識しながら、桃の枝物を除いた生け込み下部を4分割し、縦の線と対角線との交点にそれぞれの主題となる花材(ミモザ・小手毬)とアクセントとなる花材(カラー)を配置することにしました。

 「レイルマン比率」とは鉄道写真家の中井精也さんが考案した構図であり、面を4分割する3本の線と対角線との交点に被写体を配置するという写真の構図の一例です。

 今回は、生け込み下部を4分割することで、その交点に「被写体」としての「ミモザ」「カラー」「小手毬(コデマリ)」を配置し、どっしりとした安定感を生け込みに求めました。

補色効果と明度差

 また、明るい黄色のミモザとミモザの間には暗めの青のエリンジュームを多めに入れ、補色効果と明度差によりミモザがはっきりと浮き出るよう工夫しました。

主な使用花材

ミモザ

 ミモザは春らしさを演出するには最適な、たいへんボリュームのある花材です。ただ、乾燥に弱いため、霧吹き等で2~3日置きにでも湿らすと、この状態が長く維持できます。

 ミモザはドライフラワーとしても人気がありますが、乾燥させると花が茶色に変化してしまいます。そのため保管する時は濡れた新聞紙で包んだり、霧吹きで水を拭きかけたりするなど、乾燥しないように工夫する必要があります

小手毬(コデマリ)

 小手毬も2月頃から5月頃にかけて流通します。ミモザも小手毬もたいへんボリュームのある花材です。注意点としては水の吸い上げが非常に強い(蒸散が激しい)ため、花瓶の中にまとめて入れておくと水切れが発生しやすいことです。

 これは他の枝物でも言えることですが、いったん水切れして萎れてしまうと、2度と復活できません。ドウダンツツジも水の吸い上げが強い枝物ですが、これら枝物を生ける際には、事前に、或いは生け終えた後に水をたっぷりと張るように気を付ける必要があります。

アルストロメリア「リグツ」

 桃の下にあるピンク色の花はアルストロメリア(リグツ)です。下の写真は色違いのリグツですが、透明感のある繊細な花です。茎がたいへん折れやすく、扱う際には非常に気をつかいます。

 このリグツは毎年2~3月しか流通せず、全国での生産者や生産量が非常に限られるため、希少種となっています。(愛知県では本田さん、ただ一人だけの生産・出荷となっています。)

エリンジューム

 中央のブルーの実はエリンジュームとなります。

 ドライフラワーにも利用されるエリンジュームですが、金属のような光沢感があり、明度が低く、落ち着いた色となっています。

 エリンジュームとの組み合わせにおいては、明度が高い花材や補色にあたる黄色などの花材を使うことが効果的だと考えています。

まとめ

 今回は生け込みの下部に関し、向かって左側にミモザを、右側に小手毬を多く生けることで、 色の対比や質感の変化を楽しめるように構成しました。

 今回はレイルマン比率を意識した構成も組み入れながら、主題となる花材(ミモザ・小手毬・桃)とアクセントとなる花材(カラー・エリンジューム)を適切に配置することで、バランスのよい生け込みに仕上げることができました。

なぜ今回、レイルマン比率を利用したのか?

 そもそもなぜ今回、レイルマン比率を用いたかと言うと、桃の枝物があまりにも大振りでインパクトがあったため。ここまで大きな枝物を使う場合は、根締めとしての生け込み下部が安定感のあるものでなければなりません。

 ただ雑然と生けるのではなく、レイルマン比率のような構図を意識しながら、どっしりとした、尚且つきれいな、目を引く生け込みを狙ってのことです。

 全体で見ると、桃もインパクトがありますが、明度の高い花材・低い花材も織り交ぜながら、きれいな生け込みに仕上がったと思います。

 春らしい生け込みです。

使用花材

桃・ミモザ・小手毬・エリンジューム・カラー・ドラセナ・アルストロメリア(リグツ)

この記事を書いた人

菊地充智
菊地充智代表取締役社長・1級色彩コーディネーター
こんにちは。福島県郡山市にあるフラワーショップ アリスの代表を務めております、菊地充智です。
元教員としての経験を活かしながら、色彩の専門知識を基に、お客様一人ひとりに寄り添った花づくりを行っています。

全国の産地を自ら訪問し、生産者の声を直接伺いながら、確かな品質と生産者の想いやこだわりが詰まった花を選んでご提供しています。

また、1級色彩コーディネーターとして、色彩の理論に基づいた花束・アレンジメントのご提案や、色彩と花に関する情報発信にも力を入れています。

ブログ記事では、花の魅力や色彩などに関する知識を、できるだけ分かりやすくお届けしています。
ご覧いただいた皆様が、花や色彩の奥深さに興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。

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