季節感に応じた花材選び④~深まりゆく秋を表現する~
「深まりゆく秋」とは何を意味するのでしょうか?
その答えは、燃えるような紅葉と実りの季節を象徴する豊かな果物です。しかし、それだけではありません。今回は、その典型的な秋の象徴を超えて、珍しい花材―ワイルドフラワーやファーガスを使用し、秋の深まりを表現しています。
これらの花材は一体どのような存在感と魅力を秋のアレンジに与えるのでしょうか?本記事では、この質問に答えつつ、秋らしさが際立つ生け込みをご紹介します。
季節感に応じた花材選び④~深まりゆく秋を表現する~
秋と言ったら焼き芋! サンマ! 栗ご飯!
十五夜にはススキも飾りましょうね
花より団子!
夕暮れの色彩と花材選び
日が暮れるのも早くなり、秋の深まりが次第に感じ取れるようになってきました。
この季節の変化は私たちの生活リズムに大きな影響を与えます。夏の長い昼間時間から、秋の早い日没への移行は、日常のペースをゆっくりとしたものに変えます。
それは心地よい静けさと落ち着きをもたらし、この感覚は私たちの花材選びにも反映されます。
特に、日が落ちるときの美しい夕暮れの色彩を花材に取り入れることで、秋の情感を表現することができます。たとえば、日没時の空の深い青と、太陽の最後の光が地平線に投げかける燃えるようなオレンジ色を想起させる花材を選ぶといった具体的な選択肢があります。
更に早く暗くなることで家の中で過ごす時間が長くなり、インテリアの一部としての花の役割も増します。そのため、秋の花材選びでは、室内の照明と相性の良い色彩を持つ花や、室内の温度でも長持ちする種類など、室内環境にも考慮した選択が求められることもあります。
本日は「季節感に応じた花材選び④~秋の深まりを表現する~」をテーマに、秋らしい色合いや花材を使っての生け込みを行いました。
秋らしい花材の代表例
縞ススキ
生け込みのトップに斑入りの縞ススキを据え、染雪柳である程度の形を作ってからの生け込みです。
縞ススキ(シマススキ)は、日本に自生するススキ(薄)の一種で、草丈は通常のススキよりもやや低めで、1~2m程度に成長します。その名前の通り、葉には縦に白い縞模様が入るのが特徴で、風に揺れる様子が美しいため、ガーデニングやフラワーアレンジメントなどで利用されます。
縞ススキは、ススキと同じく秋に穂をつけますが、その穂はススキほど大きくならず、より繊細な印象を与えます。この穂もまた、フラワーアレンジメントで使われることがあります。また、縞ススキは耐寒性が強く、あまり手間をかけずに育てることができるので、庭木としても人気があります。
日本の自然や季節感を感じさせるススキや縞ススキは、秋のフラワーアレンジメントにぴったりの素材で、その自然体の美しさと独特の風合いを活かして、季節感あふれる作品作りに役立てることができます。
ピンクのリンドウ
中間には紫陽花とキングプロテア、ピンクのリンドウを入れ込みました。
リンドウ(竜胆)は、ベルフラワー科の植物で、約400種以上が世界中に分布しています。その名前は、花の形が東洋の伝説の生き物である竜(ドラゴン)の喉笛に似ていることから付けられました。リンドウは一般的に花壇や鉢植え、切り花として愛されています。
リンドウの花は、青、紫、ピンク、白などの多彩な色で、その美しさと繊細な形状から日本では古くから親しまれてきました。また、その美しさから「花の女王」とも称されています。花弁が5つで、花形は鈴形で先端が5裂するのが特徴で、秋の季節に美しい花を咲かせます。
特に、ピンクのリンドウはその華やかさから特別な存在感を放ち、秋の花壇や花束を彩ります。また、リンドウは花持ちが良く、切り花としてもよく使用されます。一般的には7月頃から地物福島県産が出回り始めますが、ピンクのリンドウはその出回りがやや遅く、9月頃を中心に市場に多く流通します。これはピンクのリンドウの生育周期や開花時期の特性によるものです。
このような特徴から、リンドウは秋の季節を感じさせる花として、フラワーアレンジメントや生け込みにおいて重要な役割を果たします。それぞれの色のリンドウは、季節感を引き立てるだけでなく、その繊細さと美しさで視覚的な楽しみを提供します。
秋を表現するには必須の「ファーガス」
下の写真は珍しい花材「ファーガス」。
ブナの葉を薬品で染めたもの(プリザーブド処理)ですが、しっとりとした質感で、紅葉(こうよう)した葉特有の「落葉」がありません。
これもなかなかお高く、上記写真のこれら計5本ほどのファーガスで、店頭売りまとめて2600円(税抜き)となります。
ファーガスはプリザーブドフラワーのように色が抜けません。1年以上この状態のままですよ
もっとも、「ファーガス下さい」と言われるお客様はまずいませんが、生け込みに生けると秋らしさが際立ちます。
脇役で光る「ワイルドフラワー」
キングプロテアは所謂ワイルドフラワーと総称される南半球で生育する珍しい花材の一つです。
これらワイルドフラワーは近年人気が出てきていますが、お値段もなかなかお高く、このキングプロテアはたった1つで店頭売り1600円(税抜き)もします。
単品で「キングプロテア下さい」とおっしゃるお客様はまずいませんが、これらワイルドフラワーを生け込みや花束に入れると、一際目立つ存在感を醸し出します。
こちらは先日投稿したブログでのワイルドフラワーの使い方一例。ピンクッションとリュウカデンドロンを使用しています。
当店の本日の陳列の様子。まさにワイルドフラワーづくし。多様なワイルドフラワーを並べてみました。
ちなみに今回の生け込みで使用した「キングプロテア」とは、この写真では左下のひときわ大きなうすピンク色の花となります。
薔薇や百合のようにメインの主人公とはなりませんが、脇役として強いインパクトを与えるこれらワイルドフラワー。値段は少しお高いですが、ありふれた花材ばかりではつまらない構成になる中で、脇役で光るタイプの花たちとなります。
深まりゆく秋とは
深まりゆく秋の生け込みでは、通常とは一線を画す様々な花材を取り入れ、独特な表現を試みました。
秋の進行とともに感じられる独特の雰囲気を具現化するため、色彩豊かなピンクのリンドウや、風情ある縞ススキを用いました。また、ファーガスやキングプロテアといった比較的マイナーな花材も駆使し、紅葉とは異なる角度から秋の深まりを表現しました。
「深まりゆく秋」とは、ただ季節が進行するだけではなく、その季節特有の変化を感じ取ることを指します。
紅葉や収穫の季節であるという実感だけでなく、日が落ちる時間の早さ、空気の乾燥、さらには生活リズムまでがゆっくりと変化していくことがそれを物語っています。それら全てを取り込みつつ、美しさや楽しみを追求するのが「深まりゆく秋」の表現なのです。
この秋のフラワーアレンジメントでは、一見値の張る花材を使いましたが、それはあくまで目新しさやインパクトを追求するため。
秋の深まりを表現する手法は無数に存在し、各自の視点や解釈によってさまざまに表現可能です。例えば、普段見慣れている花材でも、新鮮な組み合わせや配置によって、全く新たな秋の風情を引き立てることが可能です。
ワイルドフラワーやファーガスなど、一見高価な花材を用いた今回のフラワーアレンジメント。
しかし、それらはあくまで一つの選択肢であり、必ずしも高価な花材を使用しなければならない訳ではありません。様々な花材を試し、それぞれの特性を生かしながら、自分だけの「深まりゆく秋」を創り出すことが、フラワーアレンジメントの醍醐味とも言えます。
使用花材
・縞ススキ・染雪柳・紫陽花・キングプロテア・ファーガス・リンドウ・ツルウメモドキ
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この記事を書いた人
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こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。
2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。
私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。
皆さんが私の記事を通して、花の世界の美しさや、そこに込められた物語を感じ取っていただければ幸いです。それが私が記事を書く大きなモチベーションとなっています。どうぞよろしくお願いいたします。
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