トーンオントーン~銀色(シルバー)との組み合わせ~

 銀色の花材は銀ホーリー。西洋ヒイラギを銀色で染めたものです。クリスマスが近づいてきましたので、市場にはこのような銀色や白に染色した花材が比較的多く入荷してきます。

 この西洋ヒイラギは生産者が生木で伐採したものを、色の付いた液に浸して染め上げたものです。

 銀ホーリーに近づいて撮影してみました。ところどろこ塗料が剥がれているところがありますが、その塗料が剥がれたところから、緑色の葉の生木の状態が分かります。

 当然ながら自然界にはこのような銀色、または金色の花材などありませんが、この銀色と合う色はどんな色でしょうか?今回は銀色と合う色についての考察について述べてみました。

 12色の色相環図を見ても、「銀色」は入っていないように見えますが、銀色は正確に言うと彩度4%、明度80%で構成される「青」となります。

 所謂銀色の「補色」を考えますと、薄いベージュが考えられ、銀色とベージュの組み合わせもそれはそれできれいな作品に仕上がると思われます。

 しかし今回は、寒色系でまとめる「トーンオントーン」での構成を行ってみました。「トーンオントーン」とは、「トーンを重ねる」という意味です。基本的には色相は同一或いは類似色相で、明度差を大きく取った配色を言います。一般的に言う同系色の濃淡と言われる配色です。

 今回はブルーの花材としてデルフィニウム、そして濃い紫のトルコキキョウ「マリッサブルー」、そして薄い紫のストック「アーリーマリンアイアン」を組み合わせたトーンオントーンの類似色相配色です。

 ちなみに銀ホーリーと青の花材(デルフィニウム)のみの2色で構成する場合は、明度差を大きく取った「トーンオントーン」の「同一色相」構成となりますが、残念ながらデルフィニウム以外青の花材というものがこの時期(11月中旬)に無く、「トーンオントーン」の同一色相構成とはなりませんでした。

 今回、敢えて白ユリや白アンスリウムを使ったのは、トーンオントーンを意識したため。青も究極的に明度を高めると白となるため、白を入れるのはごく自然な組み合わせとなります。逆に明度を低くした「黒」を入れてもまとまると思いますが、残念ながら「黒の花材」は基本的に市場に出回っていません。花屋では入手できる花材で作ることから、黒を入れた生け込みは基本的にできないという制限が付いてしまいます。

 今回は、「白・シルバー」と「青・うす紫」、そして「濃い紫」の明度差が異なる3色を意識したトーンオントーン配色となります。

 ちなみにクリスマスが近いからと銀色と赤を組み合わせると、それは青と赤の組み合わせと同じになり、補色でも類似色でもないため、いまいち合わない組み合わせになると思います。その場合は、3色配色構成を取り入れ、「青」「赤」に「黄色」を入れるとまとまると思います。

 銀色は当然ながら自然界に無い色合いなので案外難しい組み合わせですが、銀色はブルーの仲間だと言うことを意識しながらトーンオントンや補色などを意識しながら組み合わせると、上手くまとまると思います。

 しかしながら生け込みでの最大の問題点は、銀色に合う花材(希少性の高いブルー等)が入手できるかと言うことですが・・・。

・銀ホーリー・デルフィニウム・ストック「アーリーマリンアイアン」・オリエンタルユリ「ザンベジ」・トルコキキョウ「マリッサブルー」・アンスリウム・紅葉ヒペリカム

この記事を書いた人

菊地充智
菊地充智代表取締役社長
こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。

2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。

私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。

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