黒ほおずきと秋の生け込み ~色彩のバランスで引き立てる珍しい花材~
今回、取り扱うのは、南米ペルーやチリに自生する「黒ほおずき」。
この花材は一般的なほおずきとは違い、その独特の色合いと形状が、新たなアレンジメントの可能性を広げます。
今回は、この黒ほおずきをメインに据え、野バラ・グロリオサ・紫陽花と組み合わせ、秋の実物をテーマにした生け込みを行いました。
黒ほおずきと秋の生け込み ~色彩のバランスで引き立てる珍しい花材~
今回は、『黒ほおずきと秋の生け込み ~色彩のバランスで引き立てる珍しい花材~』と題して、「秋の実物」をテーマに生け込みを行いました。
使用した実物は「黒ほおずき」と「野バラ」。色合いが違う両者ですが、補色や彩度、明度を意識しながらの生け込みです。
珍しい花材「黒ほおずき」と「陽表」「陽裏」
珍しい花材「黒ほおずき」が入荷しました。黒ほおずきは南米ペルーやチリに自生する植物ですが、一般的に流通する「ほおずき」とは別属で、同じ仲間ではありません。
しかし、何となくその実が、朱色のほおずきと似ています。
この黒ほおずきは花もきれいで、ブルーのなんとも言えない色合いが、黒とグリーンの中で一際目立っています。

この黒ほおずき、陽表(ひおもて)と陽裏(ひうら)があります。つまり、太陽に当たっている面が黒っぽく(陽表)、当たらない場所はグリーンのまま(陽裏)になっています。



下の写真は同じ黒ほおずきの表と裏を撮影したものです。陽表と陽裏がはっきりしています。
こういった陽表と陽裏がはっきりしている花材は、この「陽表」が見えるように生けることが大切になってきます。


黒と赤の組み合わせ
この黒ほおずき、単品でまとめて壺に生けてみるのもいいと思いますが、今回は赤い野バラと組み合わせてみました。
黒と赤は無彩色と有彩色という組み合わせですが、コントラストがはっきりしており、視覚的に強いインパクトを与えるため、相性がいい組み合わせと言えます。
さらに黒ほおずきは陽裏の部分がグリーンのため、グリーンと補色関係にあるピンクの紫陽花も生け込みました。ピンクと赤は当然ながら類似色のためよく調和します。

上の写真の中央部分、はっきりした明るい赤の花材はグロリオサ。
野バラはやや彩度が低い赤になりますが、こちらのグロリオサ、明度が高いはっきりした明るい赤になっています。
「黒い花材」はそもそも種類が少なく、参考となる花材の組み合わせパターンがあまりありません。
しかしながら、黒と赤をベースに組み合わせを構成してみると、全体としてきれいにまとまると思います。
今回の生け込みのトーンの特徴
今回の黒ほおずきを使った生け込みは、日本色研事業株式会社の「カラーカルク」の分析によると、ダークトーン21%、ダルトーン15.4%、グレイッシュトーン16.8%、ダークグレイッシュトーン13.3%、そして黒が7%と、かなり暗めの生け込みとなります。

色相を見ると、今回の生け込みは、赤系統の色が多く使用されていることがわかります。具体的には、赤紫(RP)や赤(R)の比率が高く、それに加えて、補色に近い緑系統の色がアクセントとして含まれています。この配色により、全体的にシックで落ち着いた印象を与える一方で、黒ほおずきや深い赤が視線を引き付ける強調点を作り出しています。
さらに、日本色研のPCCS色相環を見ると、暖色系の色彩が中心になっており、寒色系は補助的に取り入れられた構成となっています。このバランスにより、季節感や和の趣が際立ち、空間全体を上品に彩る効果が生まれています。

色合いの関係を図表化すると
色合いの関係を図表化すると、以下のようになります。

今回はこれら花材をベースに産地訪問で伺った沖縄県の山内さんのドラセナ「アトムピンク」と染雪柳を入れ、ボリューム感も出してみました。
まとめ
黒の花材は少ないですが、黒が持つ「無彩色・重量感」と赤が持つ「華やかさ」の色彩を組み合わせると、コントラストとしてまとまり、全体としてきれいな作品になると思います。
併せて、赤の補色関係であるグリーンを入れることにより、赤がより引き立つようにしました。

今回は「秋の実物」がテーマの生け込みですので、彩度が低い「赤」の野バラを入れることで「秋らしい」色合いとなっていますが、一部、明度の高い「赤」のグロリオサを入れることで、赤同士でのコントラストも出しました。
細かい花同士では往々にして「うるさい感じ」になりがちですが、色彩を意識して統一感を出せれば、細かい花同士でも調和の取れた生け込みに仕上がります。
秋をテーマにした生け込み
前回の生け込み(下の写真)とはまた違った生け込みとなりましたが、まもなく11月。冬直前となっていますが、紅葉は最盛期を迎えています。

今回は、黒ほおずきをメインに据え、色合いの構成を考える上で、この時期に出る花材としての野バラ・グロリオサ・紫陽花を組み合わせながら、複合的な色彩配色の生け込みを行いました。
使用花材
・野バラ・黒ほおずき・紫陽花・ドラセナ「アトムピンク」・染雪柳・グロリオサ
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この記事を書いた人

- 代表取締役社長・1級色彩コーディネーター
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こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。
2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。
私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。
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