白百合(ユリ)と色彩の組み合わせ

 本記事では、花の王様と称される白百合の魅力と色の組み合わせについて詳しく解説します。

 カサブランカという名前の誤解から、白百合と色彩の組み合わせ、グリーンやパステルカラー、淡い色との調和、原色や多色との組み合わせ、そして白百合の無彩色でありながら膨張色の特性についてまで、白百合を中心に様々な視点からフラワーアレンジメントを考察します。

 白百合の存在感とその美しさを最大限に引き立てるアレンジメントのヒントを得て、新たなフラワーアレンジメントの可能性を探ってみませんか?

白百合(ユリ)と色彩の組み合わせ

白百合=「カサブランカ」?

 お客様からよく、「カサブランカはありませんか?」と尋ねられます。話をよく伺うと、白百合をカサブランカと言い換えてお求めになっているお客様が多くいらっしゃいます。

 実を言うと「カサブランカ」とは白百合の一品種であり、現在は百合生産者のほとんどがカサブランカを生産しておらず、滅多に市場でも出回りません。

 カサブランカは一時期、白百合の代表品種としてテレビなどのメディアで報道されたようです。カサブランカは大輪の花を咲かせますが、花屋視点で見た場合、特性として花そのものが下向きに咲くため、あまりアレンジや花束には適しません。

 使いやすく市場での評価が高ければ(高い値段で取引が成立すれば)、生産者は現在も大量にカサブランカを生産するはずです。一方で現在は品種改良が進み、その改良品種であるクリスタルブランカは、カサブランカの花持ちのよさや大輪の花を引き継ぎながら、カサブランカの欠点であった下向きの花が改善され、上向きに咲くようになっています。

百合の流行り廃り

 この記事を最初に執筆した2020年頃には白百合としてクリスタルブランカも多く流通していましたが、2023年にはクリスタルブランカは流通しなくなってきました。
 2023年時点での定番の白百合は「シベリア」「プレミアムブロンド」「ザンベジ」などとなります。

 球根はオランダで生産したものを世界各国が輸入しています。中国や台湾では黄色の百合(球根)に人気があり、日本では白百合やピンク百合の人気が高いです。

 その白百合にも様々な品種がありますが、「シベリア」のように定番で残る品種は10年単位で流通します。一方で定番に残らない場合、5年程度で品種が切り替わっていきます。前出の「クリスタルブランカ」も、現在は「プレミアムブロンド」や「ザンベジ」等に置き換わっています。

 山形の百合生産者・池野さん(千歳園)と先程電話で話をしましたが、「カサブランカ」は新宿の飲み屋さんでは人気があるようで、2023年現在も一部の百合生産者はカサブランカを生産しているそうです。
(カサブランカはバブル時代の1980年代から1990年代初期頃に非常に人気がありました。新宿の飲み屋さんに行くお客さんや経営するママの中には、下向きに咲くカサブランカがいいとの評価もあるそうです。)

 百合の流行り廃りはありますが、廃れた場合、生産は全くのゼロになるという訳ではなく、需要があれば生産も一部で続けられます。

白百合とグリーンの組み合わせ

白百合メインの仏用アレンジ

 この写真のアレンジはクリスタルブランカとは違いますが、白百合メインの仏用アレンジのご要望でお作り致しました。

 色合い的にも白をメインにして欲しいとのことでしたので、白百合・白トルコ・胡蝶蘭・テッポウユリにグリーンのトルコキキョウ・ドラセナ・グラマトフィラムを入れて作成しました。

白百合とグリーンを組み合わせたお供え用洋花アレンジ

 こちらもお供え用の白・グリーンの洋花アレンジ。キリスト教のため、洋花で作って欲しいとのご要望でお作りしました。

 中央部分の白百合がひときわ存在感を示しています。

 白色は無彩色のためどの色とも合いますが、白+グリーンの2色は非常に落ち着いた、上品な仕上がりとなります。

白八重百合とグリーンを組み合わせた洋花アレンジ

 下の写真も同じく白百合(八重)とグリーンを組み合わせたアレンジ。花材として、八重百合「ホワイトトルネード・千歳園」や珍しいグリーンの一輪バラ「グリーンフィールド」などを使っての制作です。

白とグリーンの組み合わせの考察

 白百合とグリーンが組み合わせられたアレンジは、独特の鮮やかさと落ち着きを提供します。白百合の無垢な美しさが、グリーンの豊かさと生命力を強調し、相互に調和しながら、落ち着いた美しさを引き立てます。

 特に、白百合とフレッシュなグリーンを組み合わせたアレンジは、自然の鮮度と深みを引き立てることができます。この組み合わせは、一年中楽しむことができる一方、春や夏の季節に特に相応しいかもしれません。

 更に白とグリーンの組み合わせは、その落ち着いた色調からリラクゼーションや安心感を生み出すことがあります。そのため、この組み合わせのフラワーアレンジメントは、リラックスしたい時や、穏やかな雰囲気を作り出したい場所に最適です。

白百合と淡い色の組み合わせ

白百合と淡い色(パステルカラー)を使ったお供え用アレンジ

 下の写真は同じキリスト教のお供えアレンジですが、淡い色(パステルカラー)を中心にお作りしたもの。白ユリそのものが実際に触ると柔らかい訳ではありませんが、何となく柔らかい印象を持つ、そんな色合いの組み合わせのアレンジです。

 写真のように白百合はパステルカラーと一緒に使うと、柔らかい印象を出すことができます。

“パステルカラー”と”淡い色”の違いは?

 パステルカラーは、色彩が淡く、柔らかい印象を持つ色のことを指します。一般的には、ピンク、薄青、薄紫、薄黄などがパステルカラーに含まれます。パステルカラーは、白または他の非常に明るい色と混合されることで得られ、彩度が低く、値(明度)が高い色となります。

 一方、”淡い色”は、色の彩度や濃淡が薄い色を指します。つまり、色が薄い、または弱いことを表します。このため、淡い色は彩度が低い色全般を指す可能性があります。

 そのため、パステルカラーは淡い色の一種であると言えますが、淡い色が必ずしもパステルカラーとは限らないということが言えます。淡い色は、例えば、薄い灰色や薄い茶色など、パステルカラーに通常含まれない色を含むことがあります。

白八重百合と原色との組み合わせ

 原色というのは色彩の世界で最も強く、鮮烈な印象を与える色です。赤、青、黄色といった原色は視覚的に非常に強烈で、それぞれが主役となる力を持っています。そのため、原色を用いたフラワーアレンジメントは、通常、元気で活気に満ち、明るい印象を与えます。

 しかし、原色のパワーが強すぎると、アレンジメント全体がうるさい印象を持つこともあります。それを解消し、洗練された印象に仕上げるために、私たちは「白百合」を用います。

 なぜ白百合なのでしょうか。それは、白百合が持つ特性に理由があります。白百合は無彩色であり、その白さは他の色と調和しやすいという特性を持っています。これは、白色が光の全ての波長を等しく反射する、すなわち全ての色を含むからです。そのため、白百合は原色と組み合わせても、その色彩を邪魔することなく、むしろ引き立てる効果をもたらします

 また、白百合は膨張色の特性を持つため、その存在感が際立ちます。原色の強い色彩と組み合わせると、白百合はまるで光を放つように見え、アレンジメント全体を明るく照らします。その結果、原色の強烈な印象が緩和され、それぞれの色彩が美しく調和したアレンジメントが完成します。

 さらに、白百合は「花の王様」とも称される美しさと格調高さを持ちます。その美しさは他のどの花とも違い、独特の優雅さをアレンジメントに与えます。これは、白百合が持つ純粋さと無垢さが生み出す効果で、視覚的な安定感を与え、原色の活気を上品に引き立てます。

 したがって、原色が強いアレンジメントに白百合を加えることで、色彩のバランスが取れ、より洗練された印象を生み出します。その存在感と調和力を活用することで、一層美しいフラワーアレンジメントを創り出すことが可能になります。

白百合と多色の組み合わせ

白百合を使った生け込み

 こちらはケイトウとドウダンツツジを使った生け込み。
 ケイトウもいろいろな色がありますが、今回はそのいろいろな色のケイトウを生け込みました。

 一般的に、服装のコーディネートやアレンジメントでは4色以上を使うと見た目がうるさいと言われています。

 ここでもそれは同様で、多様な色をあまりにも多く使用すると、見た目がうるさい印象を与え、美しく見えないことがあります。この生け込みでは、赤やピンク、茶色などのケイトウを使用しているため、これ以上色を加えるとバランスが崩れる可能性があります。その場合、一つの解決策として白色を加えることがあります。

 白色は無彩色であり、膨張色でもあります。特に百合は、「花の王様」という存在感があり、その中でも白百合は膨張色の特性を持つため、特に目立つ存在となります。

 多色の中に白を加えると、白の存在感が一際目立ち、多色のごちゃごちゃした印象が緩和されます。その結果、その多色の色合いが白を引き立てる存在となり得ます。

 白百合を入れることで、主人公が白に交代と言わんばかりでしょうか。多色のケイトウから白百合へと主役の交代です。

 無彩色の膨張色の特性を持つ白百合は、そんな存在感を醸し出す、謂わば花の王様です。

使用花材

・ドウダンツツジ・ケイトウ・白百合(トゥーレガー・千歳園)・染雪柳

まとめ

 白百合は、その美しさと多機能性から花の世界で「花の王様」と呼ばれ、さまざまなアレンジメントにおいて中心的な役割を果たします。

 本記事では、白百合がさまざまな色と組み合わせて用いられる方法、例えばグリーンやパステルカラー、淡い色との組み合わせ、原色との組み合わせを詳しく解説しました。これらの組み合わせは、アレンジメント全体に柔らかく穏やかな効果を与え、白百合の美しさを最大限に引き立てます。

 また、「カサブランカ」という名前が広く誤解されていること、実際には白百合の一品種であり、現在の主流はその改良品種であるクリスタルブランカなどに置き換わっています。

 更に白百合は無彩色でありながら膨張色の特性を持つため、他の色と組み合わせても存在感を保ち、アレンジメント全体を引き立てる役割を果たします。

 白百合はその美しさと多機能性から、あらゆる種類のフラワーアレンジメントにおいて絶大な影響力を持ちます。白百合を最大限に活用し、その美しさと多機能性を引き立てるアレンジメントを試してみてはどうでしょうか?

この記事を書いた人

菊地充智
菊地充智代表取締役社長
 こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
 福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。

 2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
 そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。

 私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。

 皆さんが私の記事を通して、花の世界の美しさや、そこに込められた物語を感じ取っていただければ幸いです。それが私が記事を書く大きなモチベーションとなっています。どうぞよろしくお願いいたします。

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