補色~グリーンとピンクの組み合わせ~
フラワーアレンジメントや生け込みは、漫然と制作してもきれいなものができません。やはり理論的な裏付けのある配色・構成から制作へのアプローチを行う必要があります。
フラワーショップ アリスでは、補色や3色配色、彩度・明度などの視点から制作へのアプローチを行い、お客様にご満足いただけるような商品作りを目指しております。
ここでは補色と花材の関係を中心に話を展開していきます。
補色~グリーンとピンクの組み合わせ~
梅雨がまだ続きますが、今回はグリーンとピンクの補色を意識した生け込みを行いました。
使用した花材は次の6点。「スモークツリー」「カラー」「オリエンタルユリ」「トルコキキョウ」「ドラセナ」「エンシクアリア(ピュアピンク)」。

そもそも「補色」とは
色相環で正反対に位置する色の組み合わせのことを補色と言います。組み合わせの代表例としては、「黄色と紫」「オレンジとブルー」「グリーンとピンク」など。

上の画像の「12色の色相環図」で反対になる組み合わせが補色の関係となりますが、このような補色関係を構築すると、色の鮮やかさがより強調されます(補色対比)。
なお、赤の補色は緑ですが、ピンクの補色は正確には黄緑となり、オレンジの補色は青緑となります。ひとくくりに「グリーン」と述べましても、「青緑」~「緑」~「黄緑」と色相に違いが見られます。
補色を意識したグリーンの花材とピンクの花材
今回は黄緑を含むグリーンの花材として「スモークツリー」「トルコキキョウ」「ドラセナ」を、そして「カラーの茎の部分」もグリーンの花材の一つとして意識をしながら使用しました。
ピンクの花材としては「エンシクアリア(ピュアピンク)」と淡いピンクの「オリエンタルユリ(カトーネ)」を使用しました。
また、無彩色としての「カラー」の白も入れ、全体の中での色の調和も試みました。

グリーンの花材「スモークツリー」
6月初めから中旬頃に出回る花材「スモークツリー」。いくつか種類がありますが、今回使用したのは「グリーンボール」と呼ばれるもの。
以前、弊社ブログ記事『6月初~中旬限定花材「スモークツリー」』にても掲載しましたが、スモークツリーにはグリーンのものだけでなく、赤っぽいもの(ロイヤルパープル)やピンクがかったもの(ラブリーローズ)などもあります。



スモークツリーは独特な花材ですが、あまりごちゃごちゃと見境なく入れるとかえって汚くなってしまいますので、どういった生け方をするのか、事前に構想を練って生け込むことが必要になってきます。
今回はスモークツリー「グリーンボール」を使うにあたり、色調を統一しようと考え、グリーンのトルコキキョウやグリーンのドラセナと合わせながら、根締めに使用することにしました。
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ピンクの花材「エンシクアリア(ピュアピンク)」
珍しい花材「エンシクアリア(ピュアピンク)」。オンシジュームの一種です。このエンシクアリアは静岡県大井川(藤枝市)産。淡いピンクがグリーンとの補色関係となり、よく調和します。

前回の生け込み(下の写真)では、「エンシクアリア(ピュアピンク)」をピンクの芍薬やアガパンサスと合わせてみましたが、淡いピンクなので、同系色の淡い色合いともよく調和します。


全体構成を振り返って
今回の色の組み合わせでは、補色関係を意識しながら、グリーンと白、そしてピンクの配色のみでの構成を行いました。

割合的にはグリーン:白:ピンク=6:3:1といったところでしょうか。グリーンとピンクを1:1にするとまた印象も変わってくる(注1)と思いますが、今回はピンクをポイントとして使いたかったため、あえて割合を抑えての使用となりました。


全体として明るいグリーンを基調とした涼しげな雰囲気となりました。
補足:前回の生け込み時における各色の割合
ちなみに前回の生け込み時(下の写真)の各色の割合は、グリーン:ピンク:ブルー=5:3:2となります。

メインカラーのグリーンとピンクの割合が、グリーン:白:ピンク=6:3:1に比べて近接していることにより、コントラスト効果はやや低下しています。


理想的には補色のメインカラーの割合を7~8,アクセントカラーの割合を3~2に抑えた場合の方が、よりアクセントの効果が高くなり、コントラストが強く出ます。
(下はメインカラー:アクセントカラー=8:2を図表化したもの)

このように、補色対比の組み合わせに面積割合を加味すると、より一層の効果が得られると思います。
(キーワード解説)コントラストとは
コントラストとは、物事の間にある違いや対比を表す言葉です。特に、色彩や明暗、強弱など、対照的な要素がはっきりと区別されることを指します。
例えば写真や絵画においては、明るい部分と暗い部分の差が大きいほど、コントラストが高いと言われます。逆に、その差が小さい場合、コントラストが低いと言われます。
今回のように補色としてコントラストが出る組み合わせにおいても、対比する2色の面積比を変えるだけで、コントラストがより強く出たり、弱く出たりします。
まだ梅雨が続き、ジメジメとした天気が続きますが、もうすぐ7月。清涼感を感じさせる夏を迎えたいところです。
応用編:サイト制作における配色の組み合わせ
補色の組み合わせは当然ながらサイト制作にも応用できます。例として、フラワーショップ アリスのホームページのフッターと呼ばれる一番下の部分を挙げます。
検索ボタンの配色をどうするか悩んだ結果、補色にすれば目立つと考えました。背面の色は青緑がかっている色(#21adbc)で、この色の補色としてオレンジがかった赤(#F70606)をボタンの色として配色しました。オレンジがかった赤は青緑色と対照的であり、この組み合わせにより、サイトを見ている人々の注目を引くことができます。
この配色に、更に配色割合が加味することにより、非常に目立つ「検索ボタン」が完成しました。

先述のようにひとくくりに「グリーン」と述べましても、「青緑」~「緑」~「黄緑」と色相に違いが見られます。赤の補色は緑ですが、ピンクの補色は正確には黄緑となり、オレンジの補色は青緑となるため、色をよく見ながら補色となる色の組み合わせを考えられるといいかと思います。
「スプリット・コンプリメンタリー配色」との違い
補色を2組、計4色使うと
補色関係にある2組、計4色を使うと「テトラード配色」となります。
特徴としては、はっきりした、カラフルで賑やかな印象になります。
「テトラード配色」について詳しくは
彩度・明度・補色を複合的に組み合わせると
下の写真は「黒ほおずき」を使いながら、彩度・明度・補色の関係を複合的に組み合わせた生け込みです。

色合いの関係を図表化すると下の図になります。
詳しくは『珍しい花材「黒ほおずき」と花材の組み合わせ ~彩度・明度・補色の関係を意識して~』をご覧ください。

白との組み合わせで最適なのは?
下の写真は白百合とパステルカラーの組み合わせ。この色の組み合わせは、アレンジメント全体に柔らかく穏やかな雰囲気を与え、白百合の美しさを最大限に引き立てます。

白は無彩色の膨張色のため、どんな色と組み合わせても合いますが、特に合う、最適な組み合わせは?
詳しくは「白百合(ユリ)と色彩の組み合わせ」をご覧下さい。
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◎季節感に応じた花材選び④~深まりゆく秋を表現する~
◎季節感に応じた花材選び⑤~晩秋を表現する~
この記事を書いた人

- 代表取締役社長
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こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。
2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。
私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。
皆さんが私の記事を通じて、花の世界の美しさや、そこに込められた物語を感じ取っていただければ幸いです。それが私が記事を書く大きなモチベーションとなっています。どうぞよろしくお願いいたします。
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