春の代表的な花材、桜と配色の組み合わせ ~彩度の変化を取り入れて~

 今回のブログでは、春の訪れを告げる桜を取り上げ、その美しさを引き立てるための配色の組み合わせと、花の鮮やかさを表す「彩度」の変化について掘り下げます。

 フラワーショップ アリスでは、補色や3色配色、彩度・明度といった色彩理論を活用しながら、お客様に心地よい印象を与える花材の組み合わせを提案しています。

 春の花々が咲き誇るこの時期、どのように彩度を活用し、桜の美しさを一層引き立てることができるのか、その一部をご紹介します。

春の代表的な花材、桜と配色の組み合わせ ~彩度の変化を取り入れて~

切り花として流通する桜の品種と出回る時期

 一般的に認知されている桜の品種としてはソメイヨシノが有名ですが、実はソメイヨシノは切り花としてはほとんど流通しておりません。

 切り花として流通する桜には、啓翁桜(けいおうざくら)、東海桜、彼岸桜、吉野桜などがあります。

 1月中旬頃から切り花の桜は流通しますが、1月頃は啓翁桜と東海桜、2月の中~下旬頃から彼岸桜、そして3月中旬頃から吉野桜と、同じ桜と言ってもその流通する種類が時期によって変遷していきます。

「彩度」とは

 彩度とは、色の鮮やかさや濃淡を表す言葉です。一般的には色の「明るさ」を指すことが多いですが、芸術やデザインの世界では、色の「濃さ」や「純度」を表すときに使われます。つまり、色がどれだけ鮮やかに見えるか、またはどれだけ淡いかを表すための尺度とも言えます。

 上の画像は、「彩度」の概念を視覚的に示したもの。
 花びらは下部から上部にかけて彩度が段階的に増加しており、下部の花びらはほぼグレースケールで彩度が低く、上部に向かって彩度が高まり、鮮やかで豊かな色彩の花びらで頂点に達しています

彩度の具体例

 具体的な例を挙げると、彩度が高い色は鮮やかで、目を引く色彩を持っています。真紅のバラなどがこれに当たります。一方、彩度が低い色は淡く、やわらかな印象を与えます。淡いピンク色の桜の花などが彩度が低い例と言えるでしょう。

 更に彩度を変えることで、同じ色でも見え方や印象を大きく変えることができます。例えば、淡いピンクの花と鮮やかなピンクの花は、同じピンクでも見え方が大きく異なります。同じように、花のアレンジメントでも彩度の変化を取り入れることで、全体の印象を調節することができます。

「明度」・「色相」とは

 なお、彩度と同じく色を説明するための尺度として「明度」と「色相」があります。色相は色の種類(赤、青、黄など)を表し、明度は色の明るさ(白から黒への範囲)を表します。これらと彩度を組み合わせることで、様々な色彩表現が可能となります。

 上の画像は「明度」の変化を一つの大きな花を使って分かりやすく示したもの。「明度」とは色相や彩度とは異なり、色の明るさや暗さを示す色彩の用語です。

 明度は、黒から白までのグレースケールにおける位置で表され、色そのものの種類(赤、黄色など)ではなく、その色がどれだけ明るいか、または暗いかを示します。明度が高いほど、その色は白に近く明るく見え、明度が低いほど黒に近く暗く見えます。

東海桜と配色の組み合わせ①

 今回の生け込みでは東海桜との配色の組み合わせとして、エピテンドラムとアルストロメリア(ランカスター)を取り入れました。

 東海桜は淡いピンク色ですので、色の組み合わせとしては同系色の濃いピンク色、或いは水色のデルフィニウムが合うと考えています。

 また、濃いピンク色を入れた場合は、彩度の変化を取り入れるイメージで白系も入れるときれいな組み合わせになると思います。

彩度の変化と使用花材

彩度のイメージ図と彩度の変化に合わせた花材

 下記は彩度のイメージ図です。ピンクの彩度が究極的に低くなると白になり、高くなると赤になることが分かります。

 今回の生け込みでは彩度の低い白系の花材として白い斑入りのキキョウランと白い小さな花が咲く雪柳を取り入れました。

 また、ピンクの彩度を高くすれば赤になりますが、その赤を朱色の木瓜(ぼけ)を少し入れることで表現しました。

使用花材

桜(東海桜)、木瓜、キキョウラン、エピテンドラム、アルストロメリア(ランカスター)、雪柳、ドラセナ2種類

東海桜と配色の組み合わせ②

 続いて同じ東海桜を使った配色の組み合わせ。彩度の変化を取り入れ、同系色の花材を使って生け込みを行いました。


 使用花材は以下の通りとなります。

・淡いピンク→東海桜、アルストロメリア(リグツ)
・ピンク→アルストロメリア、ドラセナ(アトムピンク)
・朱色→ブバルディア
・赤→赤バラ(サムライ)、赤スプレーバラ(レディラブ)

 今回の生け込みでは、淡いピンクの花材を中心としながらも、濃いピンクや朱色・赤色と、彩度の変化に合わせた花材選定を行いました。

 また、葉物の緑色が赤との補色関係となっており、この葉物がより彩度の変化を引き立たせる「名脇役」となっています。

吉野桜と配色の組み合わせ

 アレンジ等に使いやすいのは細身の直線の枝が多い彼岸桜となりますが、下の写真の吉野桜は枝振りが1本1本違い、大ぶりの枝が多いため、生け込み用途がメインの花材となります。

 細い枝の場合は鋏でも切れますが、このような大ぶりの枝を切る場合にはノコギリも使用します。

 また、吉野桜は東海桜に比べて花の色合いがやや濃いピンク色となっています。

彩度の変化と使用花材

 今回は、この吉野桜をメインに、カラー、ダリア、トルコキキョウ、グリーンのスノーボールを、また、葉物にはドラセナの他にキキョウランも使用しました。

 トルコキキョウはマンゴーアンティークと呼ばれる、赤茶色の非常にボリューム感ある沖縄県産のものを使用しました。

 今回の生け込みでは東海桜の生け込みに比べ、ややはっきりとした色合いの組み合わせを行いました。
 彩度の変化として、「白のキキョウラン・カラー」→「淡いピンクの吉野桜」→「赤茶色のトルコキキョウ」→「濃いピンクのダリア」と色を繋いで行きました。

 更に今回は、ピンクの補色としてのグリーンのスノーボールも入れることにより、ピンクの色合いをより強調する形を取りました。

使用花材

桜(吉野桜)、カラー、ダリア、トルコキキョウ(マンゴーアンティーク)、スノーボール、ドラセナ、キキョウラン

まとめ

 アレンジを作る際、同系色との組み合わせ、特に彩度の変化を取り入れて花材選定を行うと、軽重を織り交ぜたきれいな作品に仕上がります。

 東海桜のような彩度の低い、淡い色の組み合わせだけでは全体がぼやっとした印象になってしまいます。一方で、今回使用したダリアのような彩度の高い、ビビッドな色の組み合わせだけでは、目が疲れてしまいます。

 テーマを持ってそういった作品を作ることも一つの方法です。しかし、特に色合いの指定がない場合は、彩度の変化を取り入れることが、相互の花材を生かすポイントの一つであると考えています。

この記事を書いた人

菊地充智
菊地充智代表取締役社長
 こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
 福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。

 2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
 そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。

 私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。

 皆さんが私の記事を通して、花の世界の美しさや、そこに込められた物語を感じ取っていただければ幸いです。それが私が記事を書く大きなモチベーションとなっています。どうぞよろしくお願いいたします。

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