秋の花、蓮の実・ツルウメモドキ・染雪柳と「スプリットコンプリメンタリー」
秋の深まりとともに彩り豊かに表情を変える植物たち。それぞれの花材が持つ独自の色合いを、どのように組み合わせて一つの作品にまとめ上げるかは、アレンジメントのクオリティを大きく左右します。
今回は、「スプリットコンプリメンタリー」を活用した生け込みを行いました。
秋の花、蓮の実・ツルウメモドキ・染雪柳と「スプリットコンプリメンタリー」
「スプリットコンプリメンタリー」とは
今回の生け込みでは、「スプリットコンプリメンタリー」を採用しました。
スプリットコンプリメンタリーは分裂補色配色とも呼ばれ、補色関係にある片側の色相の両隣の色相(色相差1~2)を用いた3色配色です。
今回は、メインカラーのグリーンの補色(対局の色)は赤ですが、その対局の赤と隣り合う2色(ピンクとオレンジ)を利用した、合計3色で構成する色の組み合わせです。
ここでは、グリーンの蓮とピンクのトルコキキョウ・グラジオラス・リンドウ、そしてオレンジのツルウメモドキ・染雪柳をメインとした3色構成です。
コントラストの高い配色ですが、補色を利用しないことで色の激しさを抑えてみました。
主な使用花材
グリーンの花材:蓮の実
今回は秋の花材として、8月のお盆頃から流通し始める蓮の実を活けてみました。
蓮は水の吸い上げが極端に悪く、特殊なポンプを使わないと水が上がりません。
蓮の花が何故花屋に流通しないのかというと、ポンプを使って水を吸い上げても、一晩しか花が保たないから。つまり、蓮の花はたいへん可憐ですが、日持ちが極端に悪いのです。
(いけばなの小原流では蓮も生けますが、そういった特殊用途でない限り、一般に生けることも流通することもありません。)
一方、蓮の実は日保ちします。また、枯れかかってもそれが風情を感じさせる、たいへん味わい深い色や質感に変化します。平家物語の諸行無常ではありませんが、蓮の実それ自身が、たいへん趣のある実ものであると言えます。
オレンジの花材:染雪柳
雪柳は紅葉してから切り取って使えばいいという考えもありますが、残念ながら、本当に紅葉してしまうと切り花の日持ちが極端に悪くなります。(紅葉したモミジも同じで、切り取って活けると3日も保ちません。)そのため、生産者が青々とした雪柳に塗料で色を染め、秋を感じさせるようにしています。
オレンジの花材:ツルウメモドキ
秋の実物の代表格と言えばツルウメモドキが上げられます。夏に流通するツツルメもどきはまだ青々としていますが、秋になるにつれ、橙赤色(とうせきしょく)の鮮やかな色合いが目を奪います。
ツルウメモドキを使った補色を意識した生け込み
下の画像は夏に流通するツルウメモドキを使った生け込み。夏に流通するツルウメモドキの実はまだ若いので緑のままです。そのため、秋になるにつれ熟していく橙赤色の実とは全く違う印象となります。
上記生け込みは、グリーンと赤の補色を意識した生け込みとなります。同じ実であっても、ツルウメモドキのグリーンに対し、コントラストとしてのヒペリカムの赤い実を使用しています。
スプリットコンプリメンタリーの配色事例②
下は5月初旬にスプリットコンプリメンタリーを意識して制作した生け込み。
全てbrightトーンの花材を使用。PCCSの略記号も併せて使用すると、黄緑(b10)・青紫(b20)・ピンク(b24)の3色を使用しました。
黄緑(b10)の補色は紫(b22)となりますが、色相差を2つずつずらした配色を行いました。
使用花材
・サンザシ・オリエンタルユリ・アルストロメリア・スターチス・ソリダゴ
まとめ
「スプリット・コンプリメンタリー」を意識して配色を行うことで、補色の関係ほどはっきりとした色合いとはならず、コントラストを少し柔らかく見せることができました。
朝晩だけでなく、日中も長袖を着るぐらい肌寒くなってきました。今回は深まりつつある秋をテーマに、「スプリット・コンプリメンタリー配色」も意識しながら生けてみました。
使用花材
蓮の実、グラジオラス、トルコキキョウ、リンドウ、アレカヤシ、ドラセナ、染雪柳、ツルウメモドキ
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こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。
2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。
私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。
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