夏の実物「ツルウメモドキ」と「ヒペリカム」を用いた補色を意識した生け込み

 青々とした夏のツルウメモドキと、燃えるような赤のヒペリカム。これら二つの鮮やかな色を駆使し、補色を意識した花の生け込みにチャレンジしました。

 ここでは、それぞれの花材が持つ個性と季節感、そして色彩のコントラストを最大限に活かす方法を詳しく解説します。美しい花たちのハーモニーが、夏の暑さを忘れさせ、心を癒す時間へと誘います。

夏の実物「ツルウメモドキ」と「ヒペリカム」を用いた補色を意識した生け込み

 秋の実物と言えばツルウメモドキやウメモドキ、野バラやフォックスフェースなどなど、多くの名前が思い浮かびます。

 秋の実物は豊作をイメージしますが、夏に流通する野バラやツルウメモドキはそもそも珍しく、また、青々とした若い状態となっています。

 今回は、その青々とした夏のツルウメモドキと赤のヒペリカムを中心に、補色を意識しながら生け込みました。

補色とは

 下の図の12色の色相環図で反対になる色同士の組み合わせを補色と言います。補色は配色の基本の一つであり、補色を意識することで、互いの色の対比がはっきりする効果を生みます。

 今回は、同じ実物であっても色が正反対となるグリーンのツルウメモドキと赤のヒペリカムを対比させることにより、コントラストの強い配色を行いました。

ツルウメモドキ

 下の写真は3枚目までがツルウメモドキを使った生け込み、4枚目が野バラを使った生け込みです。

 先述のように、ツルウメモドキは秋の代表的な実物です。9月から10月にかけて赤橙色の実を実らせながら、蔓が自在に伸びている姿が想像できます。

 しかし今回は、まだまだ真っ青の、色付きにはほど遠い若い実を生けてみました。

 ちなみに上の写真で緑色の実が「ツルウメモドキ」、赤い実が「ヒペリカム」となります。

ヒペリカム

 ヒペリカムは国内産もありますが、輸入品も多く入荷します。しかし7月頃は地元、福島県産のものが多く流通しています。

 ヒペリカムは輸入品もあるため、比較的通年で入手しやすい花材です。一方、ツルウメモドキは輸入品がなく、地元の生産者の山取りでの出荷が大半となっています。

 ヒペリカムは代表的な赤い実だけでなく、グリーンやピンク、はたまた茶系の実のものも流通します。
 この時期(7月頃)は湿度も高くなり、暑くなってきますのでガーベラなども日保ちがしなくなってきています。一方で、このような実物は日保ちがしますので、アレンジなどにも重宝する花材となっています。

生け込みのイメージと前回との比較

 右側の写真は前回の生け込みです。枝物に関してはほぼ同じ種類の花材を使っていますが、今回はツルウメモドキも使い、「生い茂った野山に分け入った時に自生していた実物たち」、そんなイメージで生けてみました。

 そのため、前回のような「すっきりさ」はありません。どちらかと言うとツルウメモドキの枝の暴れ具合が、「うっそうと生い茂っているイメージ」に近づいているのではないかと感じています。

 ドラセナも敢えて暗めの赤を使用しました。そんな暗めの赤に呼応する形で、ヒペリカムの鮮やかな赤を配してみました。

 実際にはこんな野山なんてありませんが、仮に野山に分け入って発見したら、きっと楽しいでしょうね。

使用花材

・ドウダンツツジ・リンドウ・グラジオラス・雪柳・ヒペリカム・ツルウメモドキ・ドラセナ

この記事を書いた人

菊地充智
菊地充智代表取締役社長
 こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
 福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。

 2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
 そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。

 私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。

 皆さんが私の記事を通して、花の世界の美しさや、そこに込められた物語を感じ取っていただければ幸いです。それが私が記事を書く大きなモチベーションとなっています。どうぞよろしくお願いいたします。

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