花屋の裏側 ~オアシスの処分と方法~
花屋の裏側 ~オアシスの処分と方法~
憧れの職業として幼稚園生などでは比較的上位に入っている「花屋」ですが、思ったよりも体力勝負で、重労働・肉体労働の側面もあります。
実はアレンジには欠かせいない資材がありまして、それは何かと言うと「オアシス(吸水性スポンジ)」です。
オアシスは韓国産などもありますが、フラワーショップ アリスでは下の写真の日本製のハードタイプをメインに使用しています。
オアシスの歴史については詳しく分からないのですが、日本では室町時代や江戸時代に七宝(しっぽう)と呼ばれる花留めの花器が使われていました。明治時代に剣山が出てくることで、花留めの主流が七宝から剣山に置き換わっています。
現在は七宝や剣山もあるものの、小原流などの生け花での使用が中心であり、一般家庭で使われることはまず無くなりました。
その代わりに台頭してきたのが、上記写真の「オアシス(吸水性スポンジ)」となります。オアシスはフェノール樹脂を原料としていますが、水を非常に吸水し、花持ちのよさと花屋視点での加工の容易さ・安価さなどにより、現在は爆発的に普及しています。
フラワーショップ アリスでは欠かせない資材の一つとなっているこのオアシスですが、使用後の処分方法についてはどの花屋のホームページを見ても全く触れていない、いわば「花屋の裏側」となっていますので、今回はオアシスの処分と方法について述べてみたいと思います。
業務用で出る大量のオアシスの残骸
下の写真は一日で出たオアシスの残骸。もちろん、毎日この量が出る訳ではなく、日によってバラツキがあります。
弊社ではオアシスを基本的に一回の使用で処分しています。しかし問題なのは、吸水性が抜群のこのオアシスをそのまま燃えるゴミに出すと、量もさることながら、水が大量にしみ出すことで、市営のゴミ焼却場の焼却炉が冷えてしまうという点。
一般家庭で出るごく少量のオアシスでは、そのまま捨てても特に問題はない(本来は手で潰して水分を出すなり、2~3週間ほど放置して乾かすなりをしてから捨てた方が望ましい)と思いますが、業務用で使用すると大量に出てくるオアシスの残骸の場合はそうもいきません。
そこで弊社では、この大量のオアシスを専用の機材を使って潰してから処分しています。
圧縮機「フォームコンパクター」
下の写真は弊社で使用しているオアシスの圧縮機「フォームコンパクター」。
10数年前に購入した、年季の入った2台目となります。
オアシスを6分の1に圧縮し、水分を最大90%カットする業務用の機材です。
金額はうろ覚えですが、40万円切るぐらいじゃなかったかな~と思っています。(注:ブログ記事の写真は2台目フォームコンパクターのもの。2023年6月に3台目フォームコンパクターに買い換えをしましたが、大幅に値上がりし、処分料も含め約50万円となっていました。)
もちろん、メーカーも次から次へと売れる商品ではないため、完全受注生産の特注品となります。
他の花屋にオアシスの処分はどうしているのですか?と聞いたことはほとんどないのですが、とある花屋では自動車で踏み潰して圧縮してからゴミに出すと聞いたこともあります。しかしながら弊社では、そのような人的・時間的な余裕が全くないため、この圧縮機「フォームコンパクター」を使用して処分しています。
上記写真はオアシスを潰している最中の状況。これから空いた器を一つ一つ水洗いしていきます。
真夏なら苦もなくできますが、大雪の降る2月中旬には手も真っ赤になっての作業です。とても「楽」な仕事とはほど遠い作業です。
一人でやるとこの量でおおよそ2時間~3時間ほどかかります。私はそれほど苦もなくこの作業をしますが、花屋になりたいと思う人、或いはうらやましいと思う人は、こんな地味な作業は全く想像していないと思います。が、これも花屋の業務の一環です。
こんな感じで潰したオアシスをコンテナに入れ、処分します。
日々こんな作業の繰り返しとなりますが、これも花屋の大切な仕事です。先述のように、思ったよりも体力勝負で、重労働・肉体労働の側面もあります。そして、どの花屋も恐らく伝えないだろう花屋の裏側の一面です。
オアシスの処分については、自治体により異なる場合があります。
福島県郡山市では、上記のように水を切った後、燃えるゴミとして処分してもらえますが、他の自治体では異なる場合があります。ご不明な点がある場合は、お住まいの地域の廃棄物処理施設や自治体の公式ウェブサイト等を参照したり、問い合わせしたりすることをお勧めします。
また、オアシスは分解しにくい素材のため、公共の山や川などにそのまま捨てる行為はお控えください。
この記事を書いた人
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こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。
2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。
私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。
皆さんが私の記事を通して、花の世界の美しさや、そこに込められた物語を感じ取っていただければ幸いです。それが私が記事を書く大きなモチベーションとなっています。どうぞよろしくお願いいたします。
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