季節の花材としての夏ハゼの活用
枝ぶりが美しく緑の葉が豊かな夏ハゼは、その見た目の魅力と共に、生け花やフラワーデザインの世界で夏の花材として特別な位置を占めています。
しかし、その美しさを最大限に引き立てるためには、一見挑戦的な技術が求められます。本記事では、夏ハゼの葉をどのように整理するのか、それがどのように全体のデザインに影響を与えるのか、そして季節の影響とはどのようなものなのかを解説します。
夏ハゼを使った生け込みの世界を通じて、花材の選択からデザインまで、季節の移り変わりがいかに花飾りの作成に影響を与えるかを理解し、その醍醐味を体験してみてください。
季節の花材としての夏ハゼの活用
枝ぶりのいい夏ハゼが入荷しました。夏ハゼは、ツツジ科の落葉低木です。
夏ハゼの魅力はその繊細な枝ぶりと美しい緑の葉がふんだんに付いていることですが、その一方でその葉の多さが生け込み時に挑戦となります。特に生け花では、枝の美しさを引き立てるために、葉を整理することが一般的です。

葉の整理の重要性
それではなぜ夏ハゼの葉が生け込みに影響を及ぼすのでしょうか。それは、枝のフォームやラインが美しい夏ハゼにおいては、葉が多すぎるとその美しさが隠れてしまうからです。また、葉が密集していると花器内で水を吸い上げる能力が低下し、花材の持ちが悪くなる可能性もあります。

具体的な整理の方法は、まず枝の形状や配置を考慮しながら、必要以上に葉が集中している部分を見つけることから始めます。次に、葉の大きさ、色、健康状態を評価し、全体のバランスを崩さないようにしながら必要な葉を取り除きます。この過程では、枝のバランスと葉のバランスの両方を考えることが重要です。
整理後の夏ハゼは、葉が少なくなったことで枝のフォームが際立ち、花との調和もより美しくなります。葉の間隔が開くことで、光が通り抜け、夏ハゼの美しい枝ぶりが一層引き立ちます。これにより、夏ハゼを主役にしたアレンジメントがより美しく、印象的になるのです。
今回の生け込みも葉を整理していますが、あえて「枝を見せる」こともポイントになってきます。
生け花ではもっと「厳しく」葉の整理を行いますが、今回は生け込みなので、そこまで葉を厳しくは整理していません。しかしながら、葉を全く整理しないで生けるのと、葉を整理して生けるのでは受ける雰囲気もまた変わってきます。

夏ハゼは個人的に枝物の中で一番好きな花材ですが、この夏ハゼには思い切って濃いめの薔薇がよく合います。今回は愛知県JAひまわりバラ部会の方々が生産した「ライラ」という名の濃いめのピンクの薔薇を使用しています。
カトレアのホルダーへの入れ方
カトレアはホルダーに入れて生けますが、実はちょっとしたコツがあります。ホルダーに入れて真っ直ぐ挿す(左側写真)とカトレアの表情が見えません。そこで、この柄の部分を折り曲げて(右側写真)、カトレアの表情が見えるように挿すと全体としてきれいに生けることができます。


季節の影響
季節は初夏ですが、花屋は既に夏真っ盛りの花材に囲まれています。
季節の移り変わりは、花材の選択からデザインまで、花飾りの作成に大きな影響を及ぼします。初夏のこの時期、夏ハゼをはじめとした新鮮な夏の花材が花屋に並び、その生命力と色彩が作品に活気と深みを与えます。
夏ハゼのような夏の花材は、その鮮やかな緑色と力強い生命力で、作品に夏らしいエネルギーと豊かさをもたらします。また、夏の花材は通常、他の季節の花材よりも大きく、立体的な形状を持つことが多いため、作品のデザインに深みとダイナミズムを加えることが可能です。

しかし、それぞれの花材がその最良の時期を迎えるためには、気候や日照時間などの季節特有の要素が重要です。例えば、夏ハゼは、初夏のこの時期に、その美しい緑の葉を最大限に広げ、我々にその魅力を見せてくれます。
季節の移り変わりによって変化する花材の鮮度や種類は、それ自体が生け花やフラワーデザインの醍醐味の一つです。そのため、季節感を大切にしながら、それぞれの花材が最良の状態で見せるその美しさを最大限に引き立てることが、生け花の技術だけでなく、その芸術性をも高めることにつながります。
使用花材
夏ハゼ、バラ(ライラ)、ひまわり、カトレア、アンスリウム、ドラセナ、デルフィニウム シネンシス
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この記事を書いた人

- 代表取締役社長・1級色彩コーディネーター
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こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。
2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。
私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。
皆さんが私の記事を通して、花の世界の美しさや、そこに込められた物語を感じ取っていただければ幸いです。それが私が記事を書く大きなモチベーションとなっています。どうぞよろしくお願いいたします。
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