秋の花材「ファーガス」「フォックスフェイス」

 枯れ葉のように見えるのは「ファーガス」。プリザーブド処理したブナの葉です。
 枯れ葉はカサカサとした葉触りですが、こちらのファーガス、触るとしっとりした葉触りです。

フラワー君

ファーガスは枯れ葉のように見えて、全く高級品に見えませんけどね。

アリスちゃん

本物の紅葉した葉を生け込みに使うと、3日も持たないで散れてしまいます。プリザーブド処理したファーガスとは日持ちが全く違います。

秋の花材「ファーガス」「フォックスフェイス」

プリザーブド処理したブナの葉「ファーガス」

「プリザーブド処理」とは?

 「プリザーブド処理」とは、生花や植物を特殊な技法で保存加工したものを指す言葉です。これにより、花や植物が長期間美しい状態を保つことができます。

 プリザーブドフラワーとして一般に知られているものは、このプリザーブド処理を受けたものです。

 プリザーブド処理の主な手順を解説します。

  1. 摘み取り: 咲き誇る状態の生花や植物を摘み取ります。
  2. 水分除去: 生花や植物から水分を取り除くために、特殊な溶液に浸けます。この段階で、生花や植物の細胞内の水分が取り除かれます。
  3. 染色・保存液浸透: 水分を取り除いた後、染色液や保存液に浸します。この液体が生花や植物の細胞内に浸透し、元の形状や色を保つのに役立ちます。
  4. 乾燥: 保存液に浸した後、花や植物を適切な環境下で乾燥させます。この段階で、形や色が定着します。
  5. 仕上げ: 必要に応じて、形を整えたり、飾り付けをしたりします。

 このようなプリザーブド処理を施すことで、生花や植物は数年以上その美しさを保ち続けることができます。しかし、プリザーブドフラワーや植物は湿度や直射日光に弱いため、直射日光を避け、湿度の高い場所や水分を避けるよう心掛けることが必要です。

 上の写真のファーガスもプリザーブド処理されたブナの葉です。生け込み等においては、この「ファーガス」が活躍しますが、先述のようにファーガスの代わりに「枯れ葉」を使うと、3日と持ちません。
 そのため、長期間この状態が維持できる「ファーガス」を、枯れ葉の代用として利用します。

ファーガスをふんだんにつかった生け込み

 先日のブログ「季節感に応じた花材選び④~深まりゆく秋を表現する」においてもファーガスをご紹介しましたが、今回は上記写真の2.5倍の量を用意しての生け込みです。

 ファーガスはプリザーブド処理しているためにこの状態が1年以上続きます。その代わり値段が結構お高く、下の写真のこの分量(計5本)でも店売りで2600円(税抜き)もする「高級花材」となります。

 今回はこの「高級花材」をふんだんに使っての生け込みを行いました。

ナス化の植物「フォックスフェイス」。別名「ツノナス」「カナリアナス」

 続いてフォックスフェイス。実が狐の顔のように見えるナス化の植物です。別名、別名ツノナス、或いはカナリアナスとも呼ばれておりブラジル原産のナス科の植物となります。

 秋限定の花材ですが、面白い形状です。ブラジル原産ですが、国内で生産されております。今回は静岡県産のフォックスフェイスを使用しました。

 このフォックスフェイスは枝が太いので、鋏ではなかなか切れません。こういった枝物は無理に鋏で切ろうとすると鋏の刃が変形して使い物にならなくなってしまいますので、こういう場合はノコギリを使います。

フォックスフェイスを使った生け込み事例

 下の写真はフォックスフェイス、珊瑚水木を中心に、根締めにキングプロテアを入れた生け込み。全体的に黄色~赤へと色を繋いでの生け込みです。

 フォックスフェイスは茎が他の花材に比べ太すぎるので、生け込みに多少難儀します。また、上の実が重いため、オアシスにさしてもグラグラすることがあるため、固定するにも一苦労します。

 しかしながら形状が面白いため、パッと目を引く生け込みに仕上がります。

 秋は実物の季節です。こういった実物を生けるのも、楽しみの一つとなりますね。

使用花材

フォックスフェイス、珊瑚水木、キングプロテア、アルストロメリア、バラ、アレカヤシ、ドラセナ(2種類)、ルスカス

ファーガスを使った生け込み事例

「紅葉(こうよう)」をテーマにしたファーガスを使った生け込み事例

 下の写真はファーガスを使った生け込み事例の一つ。10月の中旬頃の生け込みですので、秋らしい色合いでお作りしました。

 秋と言えば「実物」と「紅葉(こうよう)」がテーマになると思います。実物としてはバラ科の「アロニア」と「オクラ」を今回は使用しました。

 紅葉(こうよう)の色合いのイメージとしては、やはり黄色~赤のグラデーションが主となりますので、今回はファーガスだけでなく、紫陽花やグラジオラスも含め、同系色でまとめてみました。

 しかしながらファーガスを入れないとここまで秋らしい色合いが出せないのも事実です。

 今回の生け込みでは、上の写真のような色とりどりのファーガスをふんだんに使いましたが、こと「晩秋」を表現する場合は、「赤のファーガス」を控えめにし、「黄土色や黄色のファーガス」をふんだんに使うなど、季節のテーマに沿った花材選択が必要になってきます。

「晩秋」をテーマにしたファガスを使った生け込み事例

 上の写真は「晩秋」をテーマにした生け込み。ファーガスも「黄土色」のものをふんだんに使いながら生け込んでみました。

「晩秋」をテーマに黄土色のファーガスをふんだんに使った生け込みについて詳しくは

この記事を書いた人

菊地充智
菊地充智代表取締役社長/1級色彩コーディネーター/UCアドバイザー
こんにちは。福島県郡山市にあるフラワーショップ アリスの代表を務めております、菊地充智です。
元教員としての経験を活かしながら、色彩の専門知識を基に、お客様一人ひとりに寄り添った花づくりを行っています。

全国の産地を自ら訪問し、生産者の声を直接伺いながら、確かな品質と生産者の想いやこだわりが詰まった花を選んでご提供しています。

また、1級色彩コーディネーター/UC(ユニバーサルカラー)アドバイザーとして、色彩の理論に基づいた花束・アレンジメントのご提案や、色彩と花に関する情報発信にも力を入れています。

ブログ記事では、花の魅力や色彩などに関する知識を、できるだけ分かりやすくお届けしています。
ご覧いただいた皆様が、花や色彩の奥深さに興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。

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