松市

 2020年12月2日、年に一度の松市が市場(福島花卉)にて行われました。松と千両は一般の切り花とは別扱いとなり、年に一度だけそれぞれの競り(セリ)が行われます。年に一度だけですので、この競りを逃すと松や千両は基本的に入手不可となってしまいます。そのため、花屋や仲卸が全て集まる一大イベントともなっております。

 近年は松の需要もかなり少なくなってきており、10年前、20年前と比べてみても大幅に生産量・入荷量が減少しています。しかしながら正月には欠かせない花材ともなっており、店舗の生け込み用やアレンジ教室用、自宅に置くアレンジや切り花用など、用途に応じて幅広く使われます。

 上の写真は福島花卉でのこれから競りにかかる松のごく一部。生産者の希望販売価格をベースに、私を含む市場参加者が松一本一本の形状を見極めて入札していきます。何台もの台車に置かれていますが、1本で競るもの、100本単位で競るものなど、形状や大きさ、品種等に応じて競る量や価格も様々です。

 普通の切り花は1週間から2週間が日持ちの期間ですが、松に限っては松ヤニが入っている影響でしょうか、切り花にしても数ヶ月持ちます。そのため、この時期に競りを行い、正月に使用しても全く品質に問題がありません。しかしながら、松の使用期間はおおよそ12月28日頃~1月7日頃までと極めて限定されるため、この時期にいかに使い切るかが花屋にとっての経営課題ともなっています。

 当然ながら松は正月のお祝い用に限定されるため、他の用途には全く使えません。そのため、競りに出ている数万本の松を際限なく購入することもできず、かといって全く揃えないこともできないため、この松市、そして次週の千両市は非常に緊張感を持って臨む競りとなっております。

 今回競りで競り落とした松の一部。手前の大きい松が三光松(さんこうまつ)。中央下側が大王松(だいおうしょう)。画面左下側が根引き松。左奥の大きい松が赤松。中央に実付きのいい南天。右中央奥にある松は若松。右下手前が珍しい天然の苔梅(朴)。そして画面には映っていませんが、カラゲ松等も仕入れています。

 上記の写真は去年撮影したものとなります。左から順に松を使用した生け込み、アレンジ教室の様子、そして当店で取り扱っている正月用アレンジ。

 年始の挨拶に行かれる際に手ぶらでは行けないとのことで、当店の正月用アレンジを持って行かれるお客様も多く、非常に好評を博しています。

 2020年はコロナ禍による災厄により、世の中が大転換するほどの衝撃と、暗い世相に覆われた一年となってしまいました。来年はきっとよくなると願いながら、新たな正月を迎えて頂ければと思います。

この記事を書いた人

菊地充智
菊地充智代表取締役社長
 こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
 福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。

 2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
 そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。

 私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。

 皆さんが私の記事を通して、花の世界の美しさや、そこに込められた物語を感じ取っていただければ幸いです。それが私が記事を書く大きなモチベーションとなっています。どうぞよろしくお願いいたします。

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