1型色覚・2型色覚の方への正しい理解とおすすめの花束~赤と緑が見えにくい方にも美しい花を~

 色覚異常があっても、美しい花は楽しめます。
 本記事では、色覚異常についての正しい理解と、赤や緑が見えにくい方にも分かりやすい花選びの工夫をご紹介します。

1型色覚・2型色覚の方への正しい理解とおすすめの花束~赤と緑が見えにくい方にも美しい花を~

色が見えるとは

 太陽光は様々な電磁波を含みます。例えば紫外線や赤外線なんていうのはもちろん聞いたことがあると思います。
 しかし残念ながら、紫外線や赤外線は人間の目には見えません。

 色が見えるのは可視光線(380nm~780nm)という波長(電磁波)です。
 ただ、単純にこの可視光線が目に入れば色が見えるのではありません(注)。実はこの可視光線がものにあたり、その波長の一部が反射し、人間の網膜に入ることで色が見えます。

(注):虹のような単色光(特定の波長の光)の場合は、光そのものの色を見ることができます。しかし、太陽光は様々な波長の光が混ざった複合光(白色光)であるため、基本的に光そのものの色は見えず、物体に反射した光を通じて色を感じます。

図1 色が見えるとは
図1 色が見えるとは

 上の図1は太陽光が赤い花に降り注ぎ、反射した光が目に入る模式図です。
 赤に見えるとは、640~780nmの赤の波長を反射し、それ以外の波長(例えば467~483nmの青の波長)を吸収するために起こる現象です。

 この模式図では、花びらが赤の波長を反射し、それ以外の波長を吸収するために赤く見えるということを示しています。

錐体の役割

 目の網膜に入った光は、錐体(すいたい)と杆体(かんたい)呼ばれる視細胞によって感じ取られます。視細胞とは言わば光センサーです。
 大まかに言うと、錐体は明るい日中に反応し、杆体は夜の暗闇で反応します。また、杆体は明暗のみの反応で、色は判別できません。

 錐体が光に反応すると、その情報が電気信号として脳に伝えられ、最終的に「色」として認識されます。

 錐体には3種類があり、主にそれぞれ異なる波長の光に反応します。

・L錐体:主に長波長のに反応

M錐体:主に中波長のに反応

S錐体:主に短波長のに反応

 この3つの錐体が互いに反応し合うことで、人間には様々なものの様々な色(一節には数百万色以上)を見分けることができるようになっているのです。

赤に見えるか?緑に見えるか?

 赤に見えるか緑に見えるかは、L錐体とM錐体の反応の差が関係します。つまり、L錐体がM錐体より反応が大きければ赤みが強くなり、M錐体がL錐体より反応が高ければ緑みが強くなります。

黄に見えるか?青に見えるか?

 黄に見えるか青に見えるかは、S錐体の反応と、L錐体とM錐体の反応の和を比較して、どちらが強いかが関係します。
 つまり、S錐体の反応が強ければ青みが強くなり、L錐体とM錐体の反応の和が強ければ黄みが強くなります。

色覚異常とは何か?

 色覚異常がある方は、実は日本人男性で約5%、女性で約0.2%と言われています。単純に言うと、40人学級の男女のクラスで、20人の男子のうち、1人は色覚異常でうまく色が判別できないという割合です。
 日本人では国内に男女合わせて300万人以上おり、かなり身近な話とも言えます。

 色覚異常には種類があり、1型色覚や2型色覚、3型色覚がありますが、そのほとんどの方が緑と赤の色が区別しにくい傾向を持っています。

緑と赤が区別しにくい理由

 先ほど、錐体にはL・M・Sの3種類があると述べましたが、色覚異常がある方のほとんどはLかM錐体のどちらかを持たない、或いは持っているがLとMの錐体の感度特性が非常に似通っています。

 「赤に見えるか緑に見えるかは、L錐体とM錐体の反応の差が関係します。」と記載しましたが、L錐体・M錐体のどちらかが無い、或いは非常に似通っている場合、赤みと緑みの判別が付かなくなってしまいます。

赤と緑の花束が同じ色に見えることも
赤と緑の花束が同じ色に見えることも

 例えばこの赤と緑の花束も、色覚に異常がある場合、ほぼ同じ色に見えてしまうと言うことです。

 一方、黄色と緑に関しては、L錐体、或いはM錐体のどちらかが働いていれば、S錐体との反応の差で色を識別することができるようになるため、色を見分けることができます。

花選びにおける困難

 1型色覚・2型色覚の方にとって、花の色を正確に識別することは容易ではありません。特に赤と緑の区別が難しいため、花びらと葉の色の違いが分かりづらくなることがあります。例えば、赤い薔薇と緑の葉が同じような茶色っぽい色に見えたり、ピンクと水色の花も同じように見えたりすることがあります。

花選びにおける困難

 また、色覚異常は個人差が非常に大きく、完全に赤緑の区別ができない方もいれば、特定の明るさや背景の条件下ではある程度区別できる方もいます。このため、一般的なアドバイスがすべての人に当てはまらないという難しさも存在します。

おすすめの花束

 1型色覚・2型色覚の方にも美しく楽しんでいただける花束を作るためには、識別しやすい色明度差に配慮することが大切です。

黄色系の花

 黄色い薔薇ひまわりなどの黄色系の花は、1型色覚・2型色覚の方であっても比較的識別しやすい色です。 

 黄色はL錐体またはM錐体が働いていれば認識できるため、多くの色覚異常の方にとって鮮やかに見える色です。さらに、黄色は明るく元気な印象を与えるため、贈り物としても人気があります。

青系の花

 デルフィニウム青い薔薇などの青系の花もおすすめです。先述のように青と黄色の花は他の色としっかり識別できます。青は落ち着いた印象を与え、性別問わず幅広い年代の方に好まれる色でもあります。

明度差の大きい配色

 花束やアレンジを作る際は、明度差(明るさの差)が大きい配色にすると、色の違いが分かりやすくなります。 

 例えば、明度差・色相差を意識した濃い青と明るい黄色を組み合わせたり、白い花をアクセントに加えると、誰にとっても視覚的に識別しやすい花束アレンジになります。

青と黄色を組み合わせたアレンジ

UC級講師としての見解

 これまで説明してきたように、色覚異常は決して珍しいものではなく、多くの方が日常生活の中で色の判別に困難を感じています。特に花選びにおいては、花の色そのものが重要な意味を持つため、色覚異常の方にとって適切な配色の提案は非常に重要です。

 UC(ユニバーサルカラー)級講師の私としては、次のような配慮を行うことが重要だと考えます。

  1. 識別しやすい色を基調にする
     黄色や青など、色覚異常がある方でも見分けやすい色を中心に花束を構成する。
  2. 明度差を活かしたデザイン
     同系色の花でも、明るい色と暗い色を組み合わせ、色相だけでなく明るさの違いでも花を楽しめるようにする。
  3. 配色のシンプルさ
     あまりに多くの色を使わず、単色系または色数を絞った配色にすることで、混乱を避け、誰にとっても美しいと感じられるデザインにする。
  4. 言葉での補足情報を提供
     花の種類や色について説明カードを添えるなど、視覚だけに頼らずに楽しめる工夫をする。
色覚障害の方にも楽しめる花束の工夫を

色覚障害の方にも楽しめる花束の工夫を

まとめ

 すべての人が美しい花を楽しめる社会を実現するためには、色覚に関する正しい理解と、日常の中でのささやかな配慮がとても大切です。色の感じ方は人によって異なりますが、工夫次第で誰もが色彩の魅力を共有することが可能です。

 特に、色覚に不安を感じている方や、贈り物として花を選ぶ際に迷われている方には、識別しやすい配色やデザインの提案をご用意しています。どうぞ遠慮なくご相談ください。

 花はすべての人に感動と癒しを与えるものであり、その楽しさを一緒に分かち合いましょう。

「色覚異常」の表記上の留意点について

 かつては「色盲」「色弱」という表現が一般的に用いられていました。しかし、この言葉は医学的・社会的な背景から、現在では使用を避けるべきとされているため、本記事では使用しておりません。

1.「色盲」という用語の問題点
  • 「色盲」という言葉は、全く色を感じない(全色盲)状態を想起させますが、実際にはそのような方は極めて稀です。
2.本記事での表記方針
  • 本記事では、「色覚異常」という言葉を使用しておりますが、この用語は専門機関(文部科学省、日本眼科学会など)でも用いられている公式な表現であり、医学用語となっております。
  • 「色覚障害、色覚特性、色覚多様性、少数色覚」という表現もありますが、色彩検定協会UC級テキストに沿い、かつ医学用語としての「色覚異常」という用語を使用することで、用語の統一を図りました。
  • また、本ブログ記事では「1型色覚・2型色覚」という表現も併せて使用しています。

本記事の構成について

 本記事では、色覚異常のうち、特に日本人に多く見られる「1型2色覚」「2型2色覚」および「1型3色覚」「2型3色覚」の方を主な対象として記述しております。これらは主に赤と緑の区別に困難があるタイプであり、実際に社会的にも配慮が求められる場面が多く存在します。

 色覚異常には個人差が大きく、また他にもさまざまなタイプ(3型色覚、1色覚)が存在しますが、すべてのパターンを網羅することは難しいため、代表的な傾向に基づいて執筆しております。予めご了承ください。

 今後もUC級講師としての知見をもとに、どなたにとっても美しく分かりやすい花のご提案を心がけてまいります。

おすすめアプリ:「色のシミュレータ」

 スマホで手軽に色覚をシミュレーションできるアプリがあります。それが「色のシミュレータ」です。無料・広告無しで利用できます。

 1型色覚・2型色覚・3型色覚の方の色の見えを体験できます。
 ちなみに下の画像は、制作中の下書きを「色のシミュレータ」を使って撮影したもの。1型色覚に設定を合わせて撮影しましたが、赤バラの花束の色が全く分かりません。

 一方で、本ブログ記事で一貫して主張しているおすすめの色合い「黄色・青色」に関しては、1型色覚の方でも鮮やかに見ることができることがお分かりになるかと思います。

スマホアプリ「色のシミュレータ」で撮影した1型色覚の色の見え
スマホアプリ「色のシミュレータ」で撮影した1型色覚の色の見え
元の画像
元の画像
色のシュミレータを使うにあたっての注意点

 「色のシュミレータ」で見える色そのものが、色覚異常の方の感じる色だということではありません。

 大事なことは、「赤と緑が同じ色に見える」など、どの色とどの色が同じに見えるのか、そこをアプリを通して確認してほしいと思います。

この記事を書いた人

菊地充智
菊地充智代表取締役社長/色彩講師/UC級講師/1級色彩コーディネーター
こんにちは。福島県郡山市にあるフラワーショップ アリスの代表を務めております、菊地充智です。
元教員としての経験を活かしながら、色彩の専門知識を基に、お客様一人ひとりに寄り添った花づくりを行っています。

全国の産地を自ら訪問し、生産者の声を直接伺いながら、確かな品質と生産者の想いやこだわりが詰まった花を選んでご提供しています。

また、色彩講師(AFT認定)/UC級講師(AFT認定)/1級色彩コーディネーターとして、色彩の理論に基づいた花束・アレンジメントのご提案や、色彩と花に関する情報発信にも力を入れています。

ブログ記事では、花の魅力や色彩などに関する知識を、できるだけ分かりやすくお届けしています。
ご覧いただいた皆様が、花や色彩の奥深さに興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。

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