生花祭壇作成の技術と芸術性

 葬儀という特別な場にふさわしい美しさを纏った生花祭壇。その制作には高度な技術と芸術的センスが求められます。花一つ一つの表情を大切にしつつ、全体のラインを描き出す緻密な作業、そしてそれを可能にする一貫した技術習得と修練。生花祭壇の世界は、単なる花飾りを超えた、深遠な芸術の世界です。

 そして最近では、伝統的なスタイルだけでなく、洋花を用いた新しいスタイルの生花祭壇も増えてきています。本記事では、そんな生花祭壇作成の技術と芸術性、そして新たな挑戦についてご紹介します。

生花祭壇作成の技術と芸術性

 葬儀で使用する生花祭壇は、通常のアレンジや花束とはコンセプトも作り方も全く違っており、また一定の技術を要するため、どの花屋でもできるかと言うとそうとは限りません。

 生け花では一本一本の花の「表情」が大切であり、それをいかに生かすかが大切になってきます。一方で、生花祭壇は一本一本の花と言うよりも、一つの線(ライン)を描くために花を詰めて挿していくことに特徴があります。

 まさしく、「絵を描く」イメージで作り上げていきます。

生花祭壇の制作過程の一例

スプレー菊によるライン取り

 通常は白の大菊でラインを取っていきますが、今回は白のスプレー菊でラインを取っていきました。

 スプレー菊は大菊よりも花の凹凸があるためにラインを取るのが難しく、飛び出た花を一つ一つカットする細かい作業も交えながら、随時修正しながらの制作作業となります。

細部へのこだわりと修正作業

 生花祭壇のデザインにもよりますが、今回のような左右対称の祭壇を作る場合、微妙なズレも修正しながらの作業となりますので、左右非対称の生花祭壇に比べて、やはり時間がかかります。

 細かい技術的な部分は割愛しますが、当店でも毎年、私を含めたスタッフが技術研修のため東京に赴き、有料指導を受けております。

 上の写真の一番下が一応の完成形となります。この後、実際に斎場でセットし、更に修正を加え、尚且つお客様のご意見等も受けながら、よりお客様がご満足頂けるようにしていきます。

 延べ3時間ほどかけて完成。毎日・毎週同じものを作っていればもっと早くできますが、毎回オーダーメイドで作っているため、やはり時間がかかります。

生花祭壇の価格と市場

 埼玉県では通常の花屋が転向して生花祭壇に完全特化して全国展開しているところもあります。直接話を伺う機会がありましたが、関東だけでなく遠くは九州までと、どこにでも資材と花を積んで行くそうです。

 生花祭壇は安いもので数万円から、大物芸能人や政治家などの著名な方の葬儀や大企業の経営者の社葬・合同葬などに使用する数百万円~一千万円台のものまで、金額も様々です。

 こういった生花祭壇に特化した会社では、全国での数百万円レベル以上のかなり大規模な生花祭壇も請け負っています。

生花祭壇・波の作成

 弊社で作成した生花祭壇「波」。

 このようなデザイン性の高い作品も含め、かなり技術的に奥深いのが生花祭壇の特徴であり、これこそが、一般の花屋さんではなかなかできない障壁の高さであり、生花祭壇に特化して全国展開するところも出てくる所以でもあります。

近年は洋花の生花祭壇も

 近年は洋花の祭壇も人気があります。従来の白の大菊を使った、ラインを見せる生花祭壇とは雰囲気が全く変わってきます。

 下の写真は、白の洋花のみでの生花祭壇の一例です。

 この洋花の生花祭壇を作るにあたっては、大菊のラインを取る作り方と全く違っています。必要な技術も当然ながら変わり、どちらかというと結婚式のメインテーブルを作る技術が必要になってきます。

 フラワーショップ アリスは、結婚式場での生花装飾も非常に得意としており、この技術の応用で洋花の生花祭壇を制作しています。

 洋花の生花祭壇では、バラを入れることも多く、色も白バラや淡い色合いのバラだけでなく、要望によっては赤バラを入れて制作することもあります。

まとめとこれからの生花祭壇

 葬儀で使用する生花祭壇は、一般の花束やアレンジメントとは全く異なる特性を持つ芸術作品です。生花祭壇の制作には高度な技術が必要で、その工程は一本一本の花を活かす生け花とは異なり、全体の形状やラインを描くことに重きを置きます。

 このような緻密な作業は時間と経験を必要とします。我々フラワーショップ アリスでは、スタッフが毎年技術研修を受け、新たな技術とアイデアを学びつつ、常にクオリティの向上に努めています。

 最近では洋花を使用した生花祭壇も増えてきています。洋花の祭壇は大菊を使った伝統的な祭壇とは異なる雰囲気を醸し出し、より個別の要望に対応できる利点があります。フラワーショップ アリスでは、これまでに蓄積した結婚式場での生花装飾の技術を活用し、洋花の生花祭壇の制作にも取り組んでいます。

 これからも、技術の進化と顧客の要望に対応しながら、高品質な生花祭壇の制作を続けて参ります。それぞれのお客様の葬儀が、故人への敬意と思い出を美しく伝える場となるよう、今後もフラワーショップ アリスはお手伝いをさせていただきます。

この記事を書いた人

菊地充智
菊地充智代表取締役社長
 こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
 福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。

 2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
 そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。

 私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。

 皆さんが私の記事を通して、花の世界の美しさや、そこに込められた物語を感じ取っていただければ幸いです。それが私が記事を書く大きなモチベーションとなっています。どうぞよろしくお願いいたします。

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