「フラワーショップ○○」は商標登録できる?花屋の店名と識別力の考え方
「商標」という言葉を聞いたことはありますか?
花屋を経営していると、「店名は商標登録した方がいいのか」「フラワーショップ ○○ は取れるのか」と一度は気になるテーマです。
本記事では、花屋の実務目線から、商標について解説します。
「フラワーショップ○○」は商標登録できる?花屋の店名と識別力の考え方
「商標」とは?
商標とは、国が特定の名称やロゴなどについて「独占的に使う権利」を与える制度です。
もう少し噛み砕いて言うと、
「この名前(またはマークなど)は、この事業者だけが使ってよい」
と、国が公式に認める仕組みが商標制度です。
多くの方は「商標=名前を守るもの」というイメージを持っているかもしれませんが、実際にはそれ以上に強い性質を持っています。
商標登録がされると、その名称については他人が使うことを排除できる権利が発生します。
つまり商標とは、「使う権利」であると同時に、「(他者に)使わせない権利」でもあります。
ここで重要なのは、この独占権は国が与える権利だという点です。
誰かが長年使っていた名称であっても、商標登録によっては
- 使用の差止め
- 警告
- 場合によっては訴訟
といった主張が理論上は可能になります。
だからこそ商標は、「取れば安心」「とりあえず取っておけばいい」という軽いものではなく、非常に重たい権利だと言えます。
特に店舗名や屋号のように、地域や業界で広く使われている名称の場合、この「名称独占権」という性質が、思わぬトラブルの原因になることもあります。
商標の登録費用
そもそも商標登録には、お金がかかります。その費用は、大きく分けて
- 国に支払う費用(特許庁手数料)
- 専門家に依頼した場合の費用(弁理士費用) の2つがあります。
まずは、国に支払う「必須費用」から見ていきます。
出願時にかかる費用(必須)
商標を出願する際、特許庁に支払う費用は以下の通りです(2026年1月時点)。
- 出願料:3,400円
- 区分(業種)ごとの手数料:8,600円 × 区分数
例えば、花屋であれば一般的に「第31類(花・植物)」や「第35類(小売)」など、1~2区分で出願するケースが多くなります。
- 1区分の場合:
3,400円+8,600円=12,000円 - 2区分の場合:
3,400円+17,200円=20,600円
この時点で、最低でも1万円以上はかかります。
登録時にかかる費用(必須)
審査に通過し、商標登録する段階で、さらに費用が発生します。
- 登録料(10年分):32,900円 × 区分数
※5年分での登録も可能ですが、実務上は10年分を選ぶケースが一般的です。
例として、
- 1区分・10年登録:32,900円
- 2区分・10年登録:65,800円
出願から登録まで進んだ場合、国に支払う費用だけで合計5~8万円程度になります。
弁理士に依頼した場合の費用(任意)
自分で出願することも可能ですが、実際には弁理士に依頼するケースも少なくありません。
その場合の相場は、
- 出願サポート:5万~10万円前後
- 中間対応(拒絶理由対応など):別途数万円
- 登録手続き代行:数万円
すべて含めると、トータルで10万~20万円程度になることも珍しくありません。
「とりあえず取る」には高すぎる
ここまで見ると分かる通り、商標は
- 数千円で気軽に取れるものではなく
- 一度取れば終わりでもなく
- 維持・更新にもお金がかかる
れっきとしたコストを伴う制度です。
だからこそ、
- その名称を本当に独占する必要があるのか
- (取得することで)トラブルを引き起こす可能性はないか
- 費用に見合う効果があるのか
を考えずに「念のため」「とりあえず」で取るものではありません。
「フラワーショップ」は識別力が弱く、商標登録が難しくなりやすい
ところで商標の審査では、その言葉に「識別力」があるか(役務の内容を説明するだけになっていないか)が重要になります。
商標制度では、商品やサービスの内容をそのまま表すにすぎない言葉については、特定の事業者だけに独占させるべきではないと考えられています。
したがって、「フラワーショップ」という語は、花屋の役務では識別力が弱い(役務内容の表示に近い)と判断されやすく、商標登録が難しくなりやすいと言えます。
「フラワーショップ」は花屋をそのまま表す言葉
「フラワーショップ」という言葉は、日本語にすればそのまま「花屋」を意味します。
つまり、
- 業種
- 提供しているサービス内容
を直接的に表している言葉であり、商標の観点から見ると、役務(花屋)を直接表す表現に近く、識別力が弱いと判断されやすい名称です。
仮に、「フラワーショップ」を花屋の役務で広く独占できてしまうと、他の花屋が自店を説明する際の一般的表現まで萎縮させるおそれがあります。
そのため、この種の言葉は、商標としては識別力が弱い(役務内容の表示に近い)と判断されやすく、登録が難しくなりがちです。
花屋と全く関係ない役務・商品であれば「フラワーショップ」も登録されている
ここまで見てきた通り、「フラワーショップ」という言葉は、花屋の役務では 識別力が弱くなりやすく、商標としては取りづらいのが実情です。
一方で、花屋とは全く関係のない役務や商品分野であれば、「フラワーショップ」を含む商標が実際に登録されている例も存在します。
以下の画像は、特許庁が公開している J-PlatPat(特許情報プラットフォーム) の検索結果です。
※出典:特許庁「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」

この検索結果を見ると分かる通り、
- 「街のフラワーショップ」
→ 指定商品:第28類(おもちゃ・遊戯用具) - 「FLOWER SHOP」
→ 指定商品:第29類(食品)
といったように、花の販売や花屋の営業とは直接関係のない区分で商標登録が行われています。
これらは、実際の花屋を意味するものではなく、店舗名としての「フラワーショップ」を独占するものでもありません。
あくまで、
「フラワーショップ」という言葉を花とは別の文脈・世界観・商品分野でブランド名として使用するための商標
という位置づけです。
同じ「フラワーショップ」という言葉でも、
- 花屋(生花販売・小売)
- おもちゃ
- 食品
- 雑貨
- 教育・文化活動
など、業種や役務が変われば、商標としての扱いも全く変わります。
つまり、
- 花屋では識別力が弱く、取りづらい
- 花屋と無関係な分野であれば、ブランド名として登録される余地がある
というのが、現実の商標制度の姿です。
この事実は、
「どの業種・どの役務で使うかによって、商標の可否は大きく変わる」
ということを示しています。
花屋の店名として「フラワーショップ ○○」を商標で押さえようとするのと、全く別の分野で「フラワーショップ」という言葉をブランドとして使うのとでは、前提条件がまったく異なるのです。
商標は排他的な権利であり、現実には大きな負担にもなり得る
商標は、単に「名前を守るための制度」ではありません。本質的には、特定の名称について排他的な権利を与える制度です。
つまり、商標登録を行うということは、
- その名称を自分が使える
- そして場合によっては他人に使わせない立場になる
ということを意味します。
仮に「アリス」を商標登録した場合に起こり得ること
例えば、仮に花屋の役務で「アリス」という名称を商標登録できたとします。
すると理論上は、指定した商品・役務の範囲において、同一・類似の名称を用いる相手に対し、差止め等を主張し得る立場になります。
ただ、店舗名は同名・類似名が多い分野でもあるため、現実には反論や調整が必要になり、争いの火種になりやすい点は注意が必要です。
全国の同名店舗すべてと向き合うことになれば、それだけで時間も労力も取られ、本業である花屋の仕事どころではなくなるのが実情だと考えます。
逆に、他者に先に取られた場合でも争いは避けられない
一方で、仮に第三者が花屋の役務で「アリス」という商標を取得した場合でも、それで直ちにすべてが決まるわけではありません。
弊社のように長年その名称を使用してきた事実があれば、
- 先使用権
- 周知性
- 混同のおそれの有無
といった点を根拠に、既存の使用者は争うことになります。
つまり、
- 取っても争い
- 取られても争い
という構造になりやすいのが、店舗名や屋号をめぐる商標の難しさです。
現実的な解は、独自ロゴなどを登録し、ブランドとして育てること
ここまで見てきた通り、花屋の店名、特に「フラワーショップ ○○」のような名称を商標として押さえようとすると、
- 識別力の問題
- 同名店舗の多さ
- 排他的権利ゆえの摩擦
といった、現実的な課題が数多く存在します。
こうした状況を踏まえると、花屋にとっての商標の現実的な解は、
店舗名そのものを独占しようとすることではなく、独自のロゴマークや図形、別軸の名称を商標として登録し、ブランドとして育てていくこと
だと言えます。


ロゴマークや図形は識別力が高い
一方で、弊社キャラクター「アリスちゃん」やアリスのロゴマークのように、独自にデザインされたキャラクターやロゴ、あるいは独自性の高いネーミングは、
- 業種をそのまま表していない
- 他店と重なりにくい
- 見た目や世界観で記憶されやすい
という特徴があります。
そのため、
- 商標として登録されやすく
- 他者との衝突も起こりにくく
- 権利としても扱いやすい
という、実務上のメリットがあります。
「音商標」という考え方
下はAIで作った「フラワーショップ アリス」のテーマソングですが、こういった「音」というのも商標として取ることが可能です。
このように、独自の「音」というのも、その店独自のブランドを構築するのに有効だと思われます。
※音商標は「使い続けて覚えてもらう」ことが前提なので、まずはロゴ同様に、日々の発信の中で繰り返し使うことが重要です。
花屋という業種だからこそ有効な考え方
花屋は、
- 地域密着
- 人との関係性
- 積み重ね
が価値になる業種です。
だからこそ、店名を巡って争うより、独自のロゴや表現を通じて「この店らしさ」を伝えていくという方向性の方が、長期的にははるかに健全で現実的です。
まとめ:商標は「取ること」より「使い方」が重要
結局のところ、商標で最も重要なのは、
何を取るかではなくどう使い、どう育てるか
です。
独自ロゴやブランドを軸に、無理のない形で商標制度を活用する。
それが、花屋にとって最も現実的で、最も効果のある商標との付き合い方だと筆者は考えます。
(免責事項)
※本記事は花屋としての実務経験に基づき、商標と花の関係を一般的に解説したものです。法律上の最終的な判断を示すものではありません。具体的な案件については、専門の法律家にご相談ください。
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この記事を書いた人

- 代表取締役社長/色彩講師/UC級講師/1級色彩コーディネーター
-
こんにちは。福島県郡山市にあるフラワーショップ アリスの代表を務めております、菊地充智です。
元教員としての経験を活かしながら、色彩の専門知識を基に、お客様一人ひとりに寄り添った花づくりを行っています。
全国の産地を自ら訪問し、生産者の声を直接伺いながら、確かな品質と生産者の想いやこだわりが詰まった花を選んでご提供しています。
また、色彩講師(AFT認定)/UC級講師(AFT認定)/1級色彩コーディネーターとして、色彩の理論に基づいた花束・アレンジメントのご提案や、色彩と花に関する情報発信にも力を入れています。
ブログ記事では、花の魅力や色彩などに関する知識を、できるだけ分かりやすくお届けしています。
ご覧いただいた皆様が、花や色彩の奥深さに興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。
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