南国原産の花はなぜ鮮やかなのか?紫外線と色彩から見る南国の特徴

 南国の花というと、赤、黄色、オレンジなど、鮮やかで力強い色彩を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
 本記事では、強い紫外線への適応という観点から、南国の動植物に見られる色彩の特徴を考えてみたいと思います。

 なお、本記事では「原色傾向」を、ビビッドトーンやストロングトーンのような高彩度で力強い色の傾向として扱います。

南国原産の花はなぜ鮮やかなのか?紫外線と色彩から見る南国の特徴

今でこそ品種改良で鮮やかな花は多いが

 花屋で取り扱う花の色合いは、落ち着いた淡い色合いからビビッドやストロングトーンのようなはっきりした色合いまで様々ですが、今ではその多くが品種改良で作られたものです。

 元々日本には春に咲くレンギョウや桃などもありますが、いずれもそこまで原色が強いという訳ではなく、自生しているものはブライトトーンやライトトーンのような明るい色合いの花が多い傾向にあります。

南国に目を向けてみると

 一方で南国に目を向けてみると、色彩の印象は大きく変わります。

 皆さんも南国・沖縄の色彩をイメージすると、赤や青などのはっきりした色合いを思い浮かべるのではないでしょうか。

 例えば熱帯・亜熱帯に生息するオウムやインコの仲間を見ると、赤、黄色、緑、青といった高彩度の色を持つものが多く見られます。もちろん、すべての南国の動植物が鮮やかな色をしているわけではありませんが、このような低緯度の地域では、相対的にビビッドトーンやストロングトーンのような力強い色彩を持つ動植物が多い傾向にあります(注1)

高彩度の羽色を持つオウム:筆者撮影
高彩度の羽色を持つオウム:筆者撮影

紫外線の強さによる色彩適応

 低緯度の地域では、太陽光が地表に対して比較的強く届きやすく、紫外線量も多くなります。人間の肌の色が、紫外線の強い地域ではメラニン色素によって濃くなりやすいように、生物の色彩にも、強い光や紫外線から身を守るための色素が関係している場合があります。

 南国の花に、赤、黄色、オレンジ、濃いピンク、鮮やかな紫などの強い色が多く見られるのも、強い日差しや紫外線の中で生きる植物の色彩適応という視点から考えることができます。

ハンギングヘリコニア
沖縄県産:ハンギングヘリコニア

 例えば、上の写真のハンギングヘリコニアのような南米の熱帯地域を原産とする花は、赤と黄色の非常に強いコントラストを持っています。

 これらの花を見ていると、南国の色彩は淡く控えめというよりも、強い光の中でも存在感を失わない、濃く、鮮やかで、生命力のある色が中心になっているように感じられます。

クロトン
クロトン:筆者撮影(沖縄県において)

 また、上の写真は沖縄のとある家庭の庭にあったクロトンですが、赤・黄・緑・黒味を帯びた濃い色などが入り、南国的な高彩度・強コントラストの色彩を持っています。

 このように、低緯度地域の多くの動植物が強い原色の色合いを持つに至った背景には、紫外線を含めた環境への適応が関係しているのではないかと筆者は考えています(注2・注3)

ビビッド・ストロングトーンの花は、お祝いの場面で力を発揮する

 南国原産の花に見られるような、濃く鮮やかな色彩は、花屋の仕事でも大きな力を発揮します。

 特に、開店祝い・周年祝い・発表会・舞台公演・企業のお祝いなどでは、淡い色よりも、赤・オレンジ・黄色・濃いピンクなどのストロングトーンを使った花の方が、華やかさや勢いを出しやすくなります。

ディープトーンを中心としたスタンド花
ディープトーンを中心としたスタンド花

 もちろん、全ての祝花に強い色が向いているわけではありません。上品さや柔らかさを重視する場合には、ライトトーンやソフトトーンの花が合うこともあります。

 しかし、「明るく華やかにしたい」「目立つ花を贈りたい」「元気な印象にしたい」という場合には、南国の花を思わせるような高彩度の色彩が効果的です。

好きなトーンは淡い色?それとも濃い色?

 これは完全に好みですが、淡いトーンが好きな方もいれば、濃いトーンが好きな方もいます。

ライトトーンを中心としたアレンジ
ライトトーンを中心としたアレンジ

 例えば上のような淡いライトトーンを中心としたアレンジを好む方もいれば、先述の祝花のような濃い色を好む方もいます。

 これは好みですので、どっちが優れているというものではありませんし、育った環境や贈る場の雰囲気などによっても左右されます。

白い花材+濃い色の花材・ラッピング
白い花材+濃い色の花材・ラッピング

 今まで特にトーンについて意識してこなかったという方も、花を選ぶ際には、ぜひ「淡い色が好きか」「濃い色が好きか」「鮮やかな色が好きか」といったトーンの違いにも目を向けてみてはいかがでしょうか。

(注1)
Tropical birds are 30% more colourful than those living near the poles, says research
赤道に近い熱帯の鳥は温帯・極地寄りの鳥より色鮮やかな傾向があるとする研究。特にスズメ目の鳥類を対象にした研究では、熱帯の鳥は温帯の鳥より平均的にも極端な例でもカラフルで、赤道に近い鳥ほど約30%カラフルだったと紹介されています。
(注2)
Transcontinental patterns in floral pigment abundance among animal-pollinated species
Scientific Reports の2025年論文では、花の色素は送粉者を引きつけるだけでなく、環境ストレスを和らげる役割もあり、特にUV吸収性フェニルプロパノイドが主要なUV防御物質であると説明されています。
(注3)
花が紫外線に負けずに美しく咲くしくみ
国立科学博物館のページでは、アントシアニンなどの成分は、花色として発現するだけでなく、葉や根では紫外線防御などの機能を担うと説明されています。

この記事を書いた人

菊地充智
菊地充智代表取締役社長/色彩講師/UC級講師/1級色彩コーディネーター
こんにちは。福島県郡山市にあるフラワーショップ アリスの代表を務めております、菊地充智です。
元教員としての経験を活かしながら、色彩の専門知識を基に、お客様一人ひとりに寄り添った花づくりを行っています。

全国の産地を自ら訪問し、生産者の声を直接伺いながら、確かな品質と生産者の想いやこだわりが詰まった花を選んでご提供しています。

また、色彩講師(AFT認定)/UC級講師(AFT認定)/1級色彩コーディネーターとして、色彩の理論に基づいた花束・アレンジメントのご提案や、色彩と花に関する情報発信にも力を入れています。

ブログ記事では、花の魅力や色彩などに関する知識を、できるだけ分かりやすくお届けしています。
ご覧いただいた皆様が、花や色彩の奥深さに興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。

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