赤は退色しやすい!塗料用標準色で作るPCCSトーン別色相環
PCCSのカラーカードは学習用として便利ですが、掲示して長く使っていると退色が気になってきます。
特に赤系は変化が目立ちやすく、確認用として使いづらくなることがあります。
そこで今回は、日本塗料工業会の塗料用標準色を使い、PCCSトーン別色相環を近似的に作成してみました。
赤は退色しやすい!塗料用標準色で作るPCCSトーン別色相環
赤が退色しやすい理由
赤い車や赤いバイク、または赤のペンで書いた文字などは、他の色に比べて退色しやすいというのを知識や経験で知っているという方も多いのではないでしょうか。
下の写真は退色した色相環の一部です。dで表記されているダルトーンの2番・赤は、本来、カラーカードのような色みですが、この色相環では退色が進んだために、すすけた灰色のように見えています。

以前、ブログ記事「1型色覚・2型色覚の方への正しい理解とおすすめの花束~赤と緑が見えにくい方にも美しい花を~」で述べたように、光は電磁波です。この光(電磁波)がものに反射・吸収され、それが目に入ってくることで色が見えるようになります。

例えば赤い色は、赤い光をよく反射し、それ以外の光を多く吸収しているために赤く見えます。
つまり赤い色は、赤系の波長は反射しやすく、青や緑、紫外線側の光は吸収しやすい状態になっています。要は、赤く見える材料ほど、赤以外の光をたくさん吸収しているわけです。
問題はこの「吸収」です。
吸収された光のエネルギーは、熱になったり、分子を変化させたりします。これが長時間続くと、色を出していた分子の構造が壊れ、最初のように赤く見えなくなってきます。
また、光は波長によって性質が違います。
- 赤い光 … 波長が長め
- 青や紫の光 … 波長が短め
- 紫外線 … さらに短く、エネルギーが強い
一般に、波長が短い光ほどエネルギーが強いです。
そのため、青紫の光や紫外線を吸収すると、色材は傷みやすくなります。
つまり赤い色は、
- 赤以外の光を吸収して赤く見えている
- その中には、分子を傷めやすい短波長の光も含まれる
- その結果、色のもとが壊れて退色する
という性質を持つため、青などの他の色に比べて、退色しやすい理由となっています。
切り花の退色は?
もっとも、室内で掲示物として飾っている場合、光による退色が確認できるまでには、環境にもよりますが、早くても半年~1年ほどかかることが多いです。
一方、切り花の場合は、花そのものの寿命が短いため、紫外線などによる退色がはっきり現れる前に、花の老化や水分低下による色の変化が先に起こります。
そのため、切り花で見られる色の変化は、掲示物や色票の退色とは性質が異なります。
ただし、ドライフラワーや長期間飾る花材の場合は、時間の経過とともに光の影響を受け、色が抜けたり、くすんだりすることがあります。

退色が進んだPCCSトーン別色相環
話を戻します。
下は退色が進んだ自作のPCCSトーン別色相環の一部です。2024年夏頃にカラーカードで作成し、2年近く掲示していたものです。
特に赤の退色が進んでおり、ビビッドトーンの2番・赤がピンクのような色になったり、ダルトーンの2番・赤がくすんだ灰色のようになってきています。


PCCSカラーカードの弱点
この色相環はPCCSのカラーカードで作っていますが、下の写真にある外壁色の測定等に用いる塗料用標準色に比べて退色しやすいことが弱点となっています。
「PCCSカラーカードの中古は買うな」と言われるのは、退色しやすいため。中古は本来の色と違う可能性があり、教材や色彩検定の勉強で使うとなると、色が違うのは致命傷となるためです。

塗料用標準色で作るPCCSトーン別色相環
そこで今回は、外壁色の確認や塗料色の選定などに用いられる塗料用標準色でPCCSトーン別色相環を作ってみました。
用途としては筆者自身の確認用と弊社スタッフへの教育用となります。
この塗料用標準色は顔料で作られており、退色しにくい特徴を持ちます。当然ながら外壁塗料のように紫外線や風雨にさらされる用途では、耐光性・耐候性が重要になります。
もちろん顔料でも経年変化はありますが、少なくとも印刷教材とは前提条件が大きく異なります。

塗料用標準色は、2.5YR7/10のようなマンセル値が表記されています。PCCSの各トーン・各色相に該当するマンセル値を調べ、その近似値で作るため、ぴったりとはいきませんが「おおよそのトーン・色相の」退色しにくい色相環を作ることができます。
コラム:顔料と印刷インキの違い
顔料は、水や油に溶けにくい細かな色の粒子です。塗料では、この顔料を樹脂などに混ぜて外壁や金属、看板などに使うため、屋外での耐光性や耐候性が重視されます。
一方、印刷インキは、紙に文字や図をきれいに印刷することを目的に作られています。大量印刷しやすく、教材として扱いやすい価格にしやすい反面、長期間掲示すると光の影響で色によっては退色が目立つことがあります。
つまり、塗料用標準色と印刷されたカラーカードは、どちらが優れているというより、そもそもの目的が異なります。
制作過程
取り敢えずビビッドトーンから始めてみました。そもそも塗料用標準色に全トーン・全色相があるのかも分からないまま、見切り発車です。
ちなみにこの塗料用標準色はヤフオクで購入した中古品(2009年版)です。新品で買うと4000円切るぐらいの値段のようですが、中古ですと1000円程度で購入できます。
PCCSカラーカードの中古品はあまりお勧めしませんが、塗料用標準色は顔料でできているため、退色しにくく、状態のいい中古品なら購入しても全く問題無いと筆者は考えています。

最終的にはビビッドトーンの6番や7番等で視認した時に違和感を感じたので、更に彩度が高いものなどを選び、張り替えるなど、微調整して完成です。
制作時間は6~7時間ほど。一つ一つのマンセル値を確認しながら切り、貼っていくので、時間がかかります。
PCCSカラーカードで制作し、退色するために毎年作り直しでは時間がもったいないですが、これでしたら10年程度は退色も気にせずに使えるのではと考えています。
厳密な公式色票の代替ではありませんが、筆者自身の確認用やスタッフへの簡易教育用としては十分実用的であり、壁に掲示して使う資料としても満足できるものになりました。
ちなみに全トーン・全色相に近い色をおおむね見つけることができたため、塗料用標準色版「PCCSトーン別色相環」が無事完成しました。
結構きれいにできましたよ。
(注1)PCCSトーン別色相環の画像につきましては、比較・検討に必要な範囲に限り、部分写真のみを掲載しています。
(注2)PCCSは日本色研事業株式会社が提供する色彩体系です。本記事に掲載しているPCCSトーン別色相環の画像につきましては、日本色研事業株式会社様に正式に著作権上の許諾をいただいたうえで掲載しております。
この記事を書いた人

- 代表取締役社長/色彩講師/UC級講師/1級色彩コーディネーター
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こんにちは。福島県郡山市にあるフラワーショップ アリスの代表を務めております、菊地充智です。
元教員としての経験を活かしながら、色彩の専門知識を基に、お客様一人ひとりに寄り添った花づくりを行っています。
全国の産地を自ら訪問し、生産者の声を直接伺いながら、確かな品質と生産者の想いやこだわりが詰まった花を選んでご提供しています。
また、色彩講師(AFT認定)/UC級講師(AFT認定)/1級色彩コーディネーターとして、色彩の理論に基づいた花束・アレンジメントのご提案や、色彩と花に関する情報発信にも力を入れています。
ブログ記事では、花の魅力や色彩などに関する知識を、できるだけ分かりやすくお届けしています。
ご覧いただいた皆様が、花や色彩の奥深さに興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。
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