【色彩講師養成講座】合格者が語るリアルと価値~色彩検定1級のその先へ~
色彩検定1級を取得した方でも、さらにその先を目指す「色彩講師」という資格があることをご存知でしょうか?年間の認定者はわずか数名とも言われる、非常に狭き門です。
私は2025年10月に、6か月間かけて行われた色彩講師養成講座の合格発表で無事に色彩講師に認定されました。
ここでは、色彩講師のリアルとその価値について、規約に触れない形で自分の体験談や考え方を少しお伝えしたいと思います。
なお、本記事は筆者自身の体験談や感じたことをまとめたものであり、講座で配布された教材や課題の詳細、試験内容など規約で定められた内部情報には一切触れておりません。外部で公開されている情報と、私自身の学び・考え方に基づいて記載しています。
【色彩講師養成講座】合格者が語るリアルと価値~色彩検定1級のその先へ
色彩講師養成講座を受講しようとした私の考え
色彩検定は毎年6月と11月に行われます。3級はおおよそですが、年間で3万人ほどが受験し、2級は約1万5千人ほど。そして1級はグッと受験者数が減少します。もちろん、「受験者数」ですので、「合格者」とは違います。
2024年には1級をおおよそ2500人が受験し、その40%にあたる1000人程が1次試験(学科)と2次試験(実技)を突破し、1級色彩コーディネーターとなりました。
私はこれらの試験を全てストレートで合格してきましたが、やはり独学では学びの偏りがあること。そして元々小学校で8年、その後人事異動となり、中学校で3年と教員(担任)をやっていたため、例年数名しか認定されない「色彩講師」も、なれる可能性が少しはあるのではないか?そんな考えもあり、受講申し込みをしました。
トータルのかかった費用
まずお伝えしたいのは、この講座で得られた経験や人脈はかけがえのないものだった、ということです。色彩講師養成講座で教わる先生方も、その業界で一流の方々であり、私は普段「絶対に」かかわることがないような立場の人達です。
その上で費用面の話ですが、「色彩講師養成講座」は、受講するだけで税込258,500円(2025年時点)がかかります。
また、遠方からの参加者は、交通費や宿泊費も大きな負担になります。私の場合は福島県から東京品川までホテル代・新幹線代・食費等を含め、合計12日分。おおよそ25万円ほど。
さらに購入した書籍+模擬授業の自作資料代でおおよそ9万円ほど。(書籍はリストから選んで買うので、通常はここまでかかりません。私は新品でいろいろ買い込んだので、このぐらいの金額がかかったという参考程度の金額です。図書館で借りる、古本を買うなどで調整できる金額です。また、自作資料を私は併せて2万円ほどかけましたが、普通はここまでかけません。他の方々は、それほど予算的にかけていないのでは?と推察しました。)
トータルで約60万円前後かかりました。
確かに安い金額ではありませんが、この6か月間で得られた知識・スキル・繋がりは、金額以上の価値がありました。
だからこそ「ここまでかけたのだから元を取る」という気持ちが湧き上がるだけでなく、必ず成果につなげようという強い覚悟が生まれたのだと思います。
ちなみに会社の経費は1円たりとも使っていません。「全て」自腹です。自腹は「覚悟」が違います。
ただ、断っておくのは、多額の金を使ったから「必ず」色彩講師になれるということではありません。
評価は恐らく絶対評価で、一人ひとりの到達度を丁寧に見られている印象でした。

色彩講師養成講座の中身
色彩講師養成講座の内容は、規約にしっかりと明記してありますが、内容を漏らしてはいけないことになっています。そのため、外部で公開されている情報以外は、私の方から中身を書いたりはしません。あくまでも、自分の考えだけを書いていきます。こんな感情・考えを持った奴がいたんだという「参考程度」に読んで頂ければと思います。
内容的には非常に厳しい6か月間を過ごします。とある方のブログ(どこかは伏せときます)では、「はっきり言って地獄です。」と書いてありますが(まあ、地獄かどうかは個人の主観によります)、とにかくこの6か月間、仕事以外は全て色彩の勉強をするぐらいの状態になります。
先述のように、必死になって節約して得た「大金」を投じていますので、引き下がれません。つまり、「必死」です。

合格するためのポイント
これもざっくりとしか書けませんが、自分なりに考えた合格するためのポイントです。
- 皆さんは、これまでの人生でいろいろな経験をしてきているはずなので、そのスキル・経験を全て使ってください。
- 課題が出されたら、その日のうちから取り組んでください。後でやろうは厳禁です。
- 読むべき本のリストが出たら、そのほとんどを読んでやろうという気持ちがないとダメです。1~2冊読んで満足していたら、伸びません。
- 授業中は質問をバンバンするぐらい、気合いを入れて臨みましょう。受け身ではダメです。
- 創意工夫・オリジナル、非常に大事です。ありきたりな、誰でもできる、つまらないことをしないこと(注1)。
以上、フワッと大事だと思う点を書いてみました。「参考程度」にしながら、受講する方は臨んでください。
(注1)リンク記事は2003年に私が行った小学校での国語の授業です。色彩講師養成講座で使える内容ではありませんが、当時、全国初の先進的な授業を行いました。このぐらいの意気込みで創意工夫をしてみて下さい。
色彩講師養成講座=プロの登竜門
色彩講師養成講座を一通り受けての感想ですが、「養成講座」と言うよりは「色彩講師選抜講座」であり、「プロ」としてやっていけるのか?ということが問われていると思います。
つまり「プロ」とは、自分のやりたいこと・作りたいもの・言いたいことを一方的に提供するのでは無く、自分の主義・主張を抑えながら、お客様の要望を実現することに徹底するということです。これは花屋でもデザイナーでも講師でも同じ事で、我々が目指すのは、個性を発揮する芸術家やアーティストではありません。
つまり何を言いたいのかというと、「○○の方を対象にして教えてください」と課題を言われた場合、自分の好きなように知識・言動・やり方を貫くのではなく、「○○の方」が分かるように、伝わるように授業を構成しなければならないということです。
例えば花屋で、お客様が「グリーン」でアレンジを作って下さいと言ったのにもかかわらず、「いや俺はピンクが好きだからピンクで作る」とか、「紫で表現する」とかは通用しないと言うことです。



具体例を話します。私は小学校と中学校それぞれで担任をしていましたが、小学校3年生を教えていた時には、小学校3年生が分かるように話をしました。中学校2年生の担任の時には、中学校2年生に伝わるよう話をしました。
授業で大切なのは「相手に合わせて伝えること」。どんなに優れた知識や個性も、伝わらなければ意味を持ちません。
色彩の「プロ養成講座」に臨む方は、その意味をよくかみ砕いてほしいなと思います。
色彩講師選抜講座?
先ほど、色彩講師養成講座というよりは「色彩講師選抜講座」と述べましたが、最終的には「各自の経験を活かして磨きをかける講座」という印象を受けました。
私はと言うと、案内要項にも記載がありますが、一番最初に行われたNHKの芳野先生の講義で完全に現役教員の頃の感覚を取り戻し、「あ、こうやるんだ」と思ったと同時に、なぜ現役教員の時、先輩先生なり教育委員会の指導主事なりが、こんな大事なことを教えてくれなかったんだと深く思いました。
もっとも、大学の教育学部時代を含め、こういったプロ向けの話し方講座は教員時代には触れる機会がありません。当時の先輩先生方も、お世話になった教育委員会の指導主事も、誰も知らないことなので、結局、誰も教えられないと言った方が正解だと思います。

つまり、私にとっては「ものすごく」人生で役に立った講義であり、現役教員の時の感覚を取り戻したというだけでなく、昔よりよくなった感覚を受けました。私自身が過去一感銘を受けた講義と言っても差し支えありません。
ところで、今回の参加者の方々の経歴を見る限り、教員経験者という人は基本的に私一人で他の人は教育未経験の方が大半だと推察されましたが、未経験だから認定されないと言うことではなく、その都度修正・微調整の機会(指摘)を受けますので、それを素直に受け止める姿勢があれば、合格できると思います。
ただ、自分のこれまでのスタイル・生き方を変えることができるのか、その意味で「素直さ」(注2)があれば大丈夫ですし、俯瞰的に見て、最初よりも最後の最終試験の方が皆さんかなり良くなっていました。
授業構成などで改善の余地がある方は再挑戦を促されることもあるようです。しかし、必ずしも全員にその機会があるわけではないようで、厳しい選抜であると感じました。
(注2)ここで言う「素直さ」とは
講師が人前で話すためには、知識の追加だけでなく、「見せ方」「話し方」「間の取り方」の再構築が必要です。
これを独学で直すのはまず不可能であり、第三者の視点で「聞き手がどう受け取るか」を指摘してもらう必要があります。
つまり、自分の殻を破って他者の指摘を受け入れる「素直さ」こそが、講師としての成長の出発点です。
知識を積み重ねるだけでは、人の心は動きません。
第三者の意見を受け止め、姿勢や声、話し方までも見直す柔軟さが、聴き手に届く言葉を生み出します。
教育の「プロ」になる時間と養成講座の限界
教員時代を振り返っての感想ですが、教員になる前には4年間教育学部で学ぶ必要があり、その中で、教育実習を(私は)小学校で4週間、そして中学校で2週間行いました。最初の2週間は茨城大学附属小学校での教育実習だったため、おおよそ朝7時から夜の9時~10時頃まで学校で実習を行いました。
当時はワープロ全盛期でしたが、指導案はもちろん手書きで、それを真っ赤に直された記憶があります。
就職氷河期真っ只中、当時10倍だった教員採用試験の倍率もなんとか突破し、いざ教員になっても、1年間は担任を持ちながら初任者研修でみっちり研修センターで指導を受け、また、学校内でもサポート役としてベテラン先生が付いて指導を受けました。そして、5年目も、10年目もそれぞれ1年間の研修を行い、その後、ようやく「一人前」として認められるようになっていきます。
下の方に「プロ」と「セミプロ」の違いを書いていますが、その道のプロになるためには、やはり10年ぐらい本気でやらないとダメだと考えています。
ひるがえって色彩講師養成講座を鑑みると、受講期間は6か月という長期とはなりますが、参加日数は延べ12日間。これは正直、大学の教育実習よりも少ない日々です。つまり、この12日間では「講師」としての技術を磨くには少なすぎです。よって、この講座は「ゼロからプロを養成する場」ではなく、これまで培った力を講師としての形に仕上げていく場だと感じます。
私にとっては教員経験を再び活かす貴重な場でしたし、他の方々もそれぞれの経験を色彩に結びつけることで成長していき、合格水準に近づくよう努力したと思います。
色彩講師養成講座の魅力
ところで、私は色彩学会にも入会しましたが、この色彩学会は、すでに入会している正会員の紹介があるとスムーズに入会できます。
紹介がない場合でも事務局審査で入会できるようですが、色彩講師養成講座に参加することで、この学会に入会するきっかけができたのは、大きな魅力の一つでした。
また、色彩講師はライセンス資格のため、合格後に3年に1回の発表が義務づけられます。
私は色彩講師養成講座を申し込む前から、非常にこの発表を楽しみにしています。むしろ、これがあるから「色彩講師養成講座」を申し込んだと言ってもいいほどです。
ありとあらゆる業界の色彩講師の方の実践的な内容が聞けるためです。
取り敢えず3年後の発表ですが、それまでにしっかり研鑽を積んで臨んでいきたいと考えています。
花屋×色彩講師として
プロである花屋と平行して、なんとか色彩の「セミプロ」としての入り口に立つことができました。
プロは1万分の1の人材、セミプロを100分の1の人材と仮定すると
10000分の1×100分の1=100万分の1の人材
になれたのかもしれません。
この希少性を花屋業界での強みとして生かし、花と色彩の魅力をより多くの方に伝える活動へと繋げていきたいと考えています。
資格取得はあくまでスタートライン。これからも現場経験を重ね、さらに色彩の専門性を深めていきたいと考えています。
「プロ」と「セミプロ」の境
あくまで個人的な見解ですが、プロは1万時間以上学び、経験を重ねた人。セミプロは1000時間以上を費やした人と考えています。
「色彩講師」はプロの登竜門であり、色彩講師認定は「プロ」として活躍できる入り口だと考えていますが、私自身はまだ色彩に関しては1万時間にほど遠く、まだまだ「セミプロ」のレベルだと認識しています。
ちなみに「花屋」に関しては、プロとして私が認めているのは2万時間以上、つまり10年以上やった人間であり、たかだか3~5年程度の花屋経験では「プロ」としての技能や考え方が身についていないと考えています。
色彩講師養成講座はこんな方におすすめ
- 色彩検定1級を取得し、さらに上のステージを目指したい方。
- 自分の専門分野(花・ファッション・建築・デザインなど)に「色彩」を組み合わせ、講師として発信したい方。
- 独学だけでは得られない、実践的なプレゼン・授業構成のスキルを学びたい方。
- 色彩業界の第一線で活躍する講師陣や仲間とつながりたい方。
- 自腹でも自己投資を惜しまず、真剣に「プロ」を目指す覚悟がある方。
色彩講師養成講座は「誰でも簡単に受かる講座」ではありません。
しかし、真剣に学び、指摘を素直に受け止め、改善し続ける姿勢があれば必ず大きな成果につながります。
講演・研修のご案内

フラワーショップ アリス代表取締役としての活動とは別に、色彩講師(色彩検定協会認定)として花と色彩の専門知識(配色・トーン設計・ユニバーサルデザイン等)を活かした講演・研修・セミナー等のご依頼も承っております。
企業研修、教育機関での特別授業、地域イベントなど、多様なニーズに応じた内容で対応可能です。
ご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
【講演・研修依頼専用メール】
✉ QZV11741@nifty.com(フラワーショップ アリスではなく、菊地充智個人としての活動窓口です。本メールアドレスは講演・研修のご依頼専用です。色彩講師養成講座の合否対策や内部規約に関するご質問には一切お答えできません。)
色彩講師資格の活かし方(3つの方向性)
本気で講師として活動してみたい方はもちろん、自分の知識や経験を何らかの形で発信したい方、あるいは私のようにビジネスやマーケティングの中で専門性を活かしたい方にも、この資格は大きな価値があります。
- 講師としての本気を形にする
6か月間で得られるのは知識よりも「伝える技術」。
教育経験者にとっては「教育を理論的に再構築する場」、未経験者にとっては「人前で話す・構成を組む・相手に合わせる」など、ビジネススキルの再教育の場になります。 - 専門性のマーケティング利用に極めて適している
一般の方には「1級色彩コーディネーター」よりも「色彩講師」の方が直感的に伝わりやすく、社会的認知度・信頼度の高い肩書です。
「花×色彩」のように自分の専門分野と組み合わせることで、発信者としてのブランド力を飛躍的に高められます。 - 知識発信の再現性を学ぶ場
単に「知っている」ではなく、「伝わるように設計する」力を磨けます。
ブログ・SNS・研修・地域活動など、あらゆる発信活動に応用できる実践的な資格です。
例えば行政書士のように、難関な資格といえども、資格を取ることが最終目的ではありません。
本当の価値は、その資格を通して「何を社会に提供できるか」「どんな発信ができるか」という点にあります。
色彩講師資格も同じで、「合格」はあくまでスタートラインです。
講師として人に伝える力を磨き続けるのはもちろん、自分の専門分野──たとえば花、ファッション、建築、デザイン、教育など──と組み合わせて社会に還元していくことが重要です。
また、この資格は単に「教える立場」を得るだけでなく、自分の知識を言語化し、体系化する訓練の場でもあります。
自分の経験や美意識を客観的に整理し、言葉で伝えられるようになることは、どんな職業においても極めて大きな武器になります。
したがって、色彩講師養成講座を受ける目的は「合格」ではなく、自分の専門性を社会的に通用する形へと昇華させることにあると私は考えています。

(ふくしまFMスタジオ内で撮影/掲載許諾済み)
免責事項
本記事は筆者の体験談をもとに記載しており、年次や運用により状況が変わる可能性があります。最新の情報・詳細は必ず色彩検定協会の案内をご確認ください。また、講座の詳細内容(合格ノウハウ等)や内部規約についてはお答えできません。
色彩講師養成講座の準備期間から受講期間中に書いた色彩と花に関するブログ記事
この記事を書いた人

- 代表取締役社長/色彩講師/UC級講師/1級色彩コーディネーター
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こんにちは。福島県郡山市にあるフラワーショップ アリスの代表を務めております、菊地充智です。
元教員としての経験を活かしながら、色彩の専門知識を基に、お客様一人ひとりに寄り添った花づくりを行っています。
全国の産地を自ら訪問し、生産者の声を直接伺いながら、確かな品質と生産者の想いやこだわりが詰まった花を選んでご提供しています。
また、色彩講師(AFT認定)/UC級講師(AFT認定)/1級色彩コーディネーターとして、色彩の理論に基づいた花束・アレンジメントのご提案や、色彩と花に関する情報発信にも力を入れています。
ブログ記事では、花の魅力や色彩などに関する知識を、できるだけ分かりやすくお届けしています。
ご覧いただいた皆様が、花や色彩の奥深さに興味を持つきっかけになれば嬉しく思います。
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