色彩って何?花がもっと素敵に見える!色彩の基本「トーン」と「色相」の話
私たちの目は非常に多くの色を捉えることができますが、その色をどのように活かすかで、花のアレンジや組み合わせの印象も大きく変わります。
本記事では、色彩の基本である「色相」と「トーン」を中心に、花の見方や感じ方を解説していきます。
色彩って何?花がもっと素敵に見える!色彩の基本「トーン」と「色相」の話
人間の目と代表的な色相環
人間の目は非常に多くの色を識別できると言われています。その色の総数を具体的に表すことは難しいですが、一般的なディスプレイが表示できる色数は1600万色以上とされています。
PCCS(日本色研配色体系)は、一般財団法人日本色彩研究所が開発した色彩体系です。1600万色以上とされる色を分かりやすくするため、PCCSでは色を大きく24の色相(色の種類)に分類しています。
図1は「日本色研事業(株)色彩集計ソフト カラーカルク」のPCCS色相環となります。これらは有彩色と言われますが、更に白や黒を含めた無彩色を入れることで、色彩が構成されます。
色相環は、赤、黄、緑、青などの基本的な色を含めた24色相に分けられています。基本的な花材選びは、この「何色にするか」が起点となります。更に色相ごとのトーン(明度・彩度)を考慮することで、より多様な花の印象を作り出すことができます。
トーンとは?
PCCSでは、トーンについても分かりやすく表しています(図2)。トーンは色調(しきちょう)とも呼ばれますが、同じような印象やイメージを持つ明度・彩度の領域をまとめたものです。
例えば、鮮やかな赤・青・黄はビビッドトーン、浅いパステルカラーはライトトーン、柔らかい印象の色はソフトトーンに分類されます。
このようにPCCSでは有彩色を12トーン、無彩色は黒や白を含めて5種類に分類しています。
ちなみに図2のLightnessは明度を表し、Saturationは彩度を表します。
明度が高く、彩度が低いトーンはペールトーン、明度が低く、彩度が高いトーンはディープトーンといった見方となります。
トーン説明
v=ビビッド(vivid)。さえた
b=ブライト(bright)。明るい
lt=ライト(light)。浅い
p=ペール(Pail)。薄い
s=ストロング(strong)。強い
sf=ソフト(soft)。柔らかい
ltg=ライトグレイッシュ(lightgrayish)。明るい灰みの
d=ダル(dull)。鈍い
g=グレイッシュ(grayish)。灰みの
dp=ディープ(deep)。濃い
dk=ダーク(dark)。暗い
dkg=ダークグレイッシュ(darkgrayish)。暗い灰みの
トーンで見る花のアレンジ例
ペールトーンのアレンジ
隣接色相・対照トーン配色
下はペールトーンとディープトーンを組み合わせたアレンジ。カラーカルクのデータ(図3)からは、ペールトーン19%、ディープトーン12.2%という配色構成となっています。
このような配色は、距離が大きく離れたトーンの色同士を組み合わせた、対照トーン配色と呼ばれます。
また、図4を見ると葉物のグリーンを除き、花の部分は赤系の隣接色相となっており、統一感が比較的強く、まとまりが感じられる配色となっています。
このアレンジの特徴
- ペールトーンとディープトーンの要素
- 色彩:このアレンジは、赤系のペールトーンとディープトーンを組み合わせて構成されています。
淡いピンクやパープルといった柔らかな色味が基調となり、全体に優しさと柔らかさを演出しています。一方、深い赤のダリアのディープトーンが全体に引き締まった印象を与え、バランスよく配色されています。
この対照トーン配色により、目を引く華やかさと調和が両立しています。さらに、葉物のグリーンが全体のアクセントとなり、自然なまとまりを持たせています。
- 色彩:このアレンジは、赤系のペールトーンとディープトーンを組み合わせて構成されています。
- 場面に応じた提案
- 用途:ペールトーンとディープトーンを組み合わせたアレンジメントは、特別な想いを伝えるギフトとして最適です。例えば、以下のようなシーンにおすすめです。
- お祝い事:誕生日や結婚記念日など、特別な日のギフトとして。
- 感謝の贈り物:母の日や退職祝いなど、感謝の気持ちを伝えるアレンジとして。
- フォーマルな場面:結婚式やパーティーの装飾としても、高級感と親しみやすさを兼ね備えています。
- 用途:ペールトーンとディープトーンを組み合わせたアレンジメントは、特別な想いを伝えるギフトとして最適です。例えば、以下のようなシーンにおすすめです。
ライトトーンのアレンジ
類似色相・対照トーン配色
下はライトトーンを中心とした対照トーン配色のアレンジ。カラーカルクのデータ(図5)からは、ライトトーン18.3%、ペールトーン14.9%、ダークトーン10.9%、ディープトーン9.1%という配色構成となっています。
上で掲載したペールトーンとディープトーンを組み合わせたアレンジと比べ、アルストロメリア「リグツ」を使った薄いピンクのトーンが、オリエンタルユリやトルコキキョウなどの浅いピンクへと変わっています。
この辺のトーンの色味は、アレンジを注文する際に、お好みで選ばれても宜しいかと思います。
図6を見ますと、ピンクのユリやトルコキキョウはライトトーン、赤の薔薇やアルストロメリアはディープトーンということが分かります。ちなみにダークトーンは緑を指し示していますので、葉物類と認識して頂ければと思います。
ペールトーンとの違い
- ペールトーンの特徴:
- 「淡い」「あっさりした」印象で、優しさや落ち着きを重視。
- 全体的に穏やかで上品な印象を与えるため、優雅な雰囲気を持つ。
- ライトトーンの特徴:
- 「さわやかな」「楽しい」イメージで、ポジティブさや軽やかさを強調。
- ペールトーンに比べて、よりはつらつとしたエネルギーを感じさせる。
明清色を中心とした花束
下は明清色を中心とした花束。明清色とは、「ペール・ライト・ブライト」トーンで構成した濁りのない色のこと。
カラーカルクのデータ(図7)からは、ライトトーン15.8%、ブライトトーン14.1%、ペールトーン9%と、明清色が40%近い配色構成となっています。
紫は色の中でも明度が低いので暗い印象を持ちますが、ライトトーン・ブライトトーン、そして割合は7.3%となりますが、ビビッドトーンも含め、これらのトーンで紫が大半を占めている(図8)ことが分かります。
この花束の特徴
色彩:
この花束は、明清色(ペール・ライト・ブライトトーン)を中心に構成されており、濁りのない鮮やかな紫が特徴的です。
紫のライトトーンやブライトトーンが基調となり、全体に軽やかさと明るさを演出しています。
- 配色の特徴と統一感
- 図8のカラーカルクデータ によると、紫系の明清色が主体であることがわかります。これにより、全体的な統一感が強く、鮮やかさの中にも調和が感じられる配色です。
- 紫は一般的に明度が低く暗い印象を持たれることが多いですが、この花束ではライトトーンやブライトトーンを使用することで、爽やかで明るい印象を際立たせています。
ストロングトーンのアレンジ
下はストロングトーンとダークトーンを中心としたアレンジ。カラーカルクのデータ(図9)からは、ストロングトーン14%、ダークトーン17.6%という配色構成となっています。
このアレンジはダークトーンの方が割合が大きいのですが、図10をよく見ると、ストロングトーンには黄色の色相が強く出ており、ダークトーンは緑の葉物類ということが分かります。
黄色は色相の中でも明度が高ので、今回のアレンジではダークトーンよりも割合が少ないのですが、ストロングトーンも加味することで全体的に強い印象を持ちます。
ストロングトーンは主にお祝いの場面に適しており、特に明るい印象を与えたい場面で効果的です。
このアレンジの特徴
- ストロングトーンの要素
- 色彩:ストロングトーンの強い黄・オレンジ、そしてソフトトーンの紫が使われており、補色効果も重なり、全体的に「強い」印象を与えます。
- リボンの使い方:ゴールド系のリボンがより一層、明るいイメージを強調しています。
- 場面に応じた提案
- このようなアレンジは、お祝いの場面(開店祝い、卒業祝い、結婚記念日など)に非常に適しています。ポジティブで明るい雰囲気が強調され、贈り物としても喜ばれやすいでしょう。
ダークトーン・ダルトーンの生け込み
下はダークトーン・ダルトーンを中心とした生け込み。カラーカルクのデータ(図11)からは、ダークトーン32.4%、ダルトーン25%という配色構成となっております。
まさしく晩秋を感じさせるトーンと色相です。図12のように、低明度でありながら黄色系の色彩を多用しています。黄色は紫と違い、同じトーンであっても明度が最も高い色相となっておりますので、今回のようにダークトーンを使っても「暗すぎる」印象はありません。
この生け込みの特徴
1.ダークトーン・ダルトーンの要素
- 色彩:
全体的に低彩度で、鈍い色味が特徴のダークトーンやダルトーンで構成されています。くすんだオレンジ、深みのある赤、枯れたようなベージュやブラウン、落ち着いた黄色が調和し、秋の自然を彷彿とさせる落ち着きのある雰囲気を作り出しています。
これらのトーンの特徴は、派手さを抑えながらも、深みのある豊かな印象を与える点にあります。
2.場面に応じた提案
- 用途:
ダークトーンやダルトーンの生け込みは、季節感や自然の移り変わりを表現したい場面に適しています。また、その落ち着きと趣のあるデザインは、和の空間や静かな場所に最適です。- 用途例:
- 旅館や和室の装飾
- 季節の催事(特に秋のイベントや展示会)
- 茶室での花としての使用
- 用途例:
まとめ
花のアレンジメントにおいて、色彩はその魅力を引き立てる重要な要素です。
本記事では、色彩理論の基礎である「色相」と「トーン」に焦点を当て、それぞれがどのように花の印象を左右するかを具体的な事例を通して解説しました。
また、弊社ブログ「【PCCS対応】花のトーン一覧」で述べたように、花に関しては、ビビッド・ブライト・ライト・ペール・ソフト・ディープの種類が非常に多い印象です。ただし、青みがかった色合いの花材はほとんどなく、あっても非常に限られた品種となります。
「色相」や「トーン」という基礎知識を応用すれば、贈る相手や場面に合わせたアレンジメントが実現できます。同じ花材でも、トーンや色相を変えるだけで、贈る相手に伝わるメッセージや印象が全く異なるものになります。
フラワーショップ アリスでは、色合い(色相)だけでなく、このようなトーンやイメージに沿ったアレンジや花束もお作りできます。
例えば、ディープトーンの濃い赤やピンクは、お祝いの場をより華やかに盛り上げます。一方で、ライトトーンの柔らかなパステルカラーは、楽しい雰囲気を伝えたいギフトにぴったりです。
トーンでだいぶ印象も変わります。この点が、色の組み合わせの面白さにも繋がり、花がもっと素敵に見えてくる要素です。
ぜひ、フラワーショップ アリスであなただけのトーンに合わせたアレンジメントをお試しください。色彩が持つ力で、大切な贈り物をもっと素敵に演出してみませんか?
カラーカルクの使用と分析について
カラーカルクは、色彩データを効率的に分析するためのツールであり、その分析プロセスは以下のように進められます。本記事では、分析手法と注意点について解説します。
サンプリング画像の選定基準と分析方法
カラーカルクの使用にあたって、私はサンプルとして約150~250の画像を抽出し、それらを基に分析を行いました。この方法は全体を網羅的に解析するのではなく、代表的なデータを抽出しておおよその割合を算出する「サンプリング」に基づいています。サンプリングは、時間とリソースを効率的に使用するための有効な手段です。
十分なサンプル数を確保することで、全体の傾向を比較的正確に反映することが可能です。ただし、以下の点にご留意ください。
- トーン割合の精度
- カラーカルクが算出するトーンの割合は、サンプルに基づくため、厳密な計測値ではありません。そのため分析結果を参照する際には、全体の傾向を重視し、細部に過度にこだわらないことをお勧めします。
- 誤差について
- サンプリングによる分析は、全体の傾向を把握するのに適していますが、必然的に多少の誤差が生じます。
カラーカルクを使った具体的な色抽出の流れ
カラーカルクでは、マウスクリックで特定の領域から色を抽出する機能があります。このプロセスにおいては、以下を意識しました。
- 代表性の確保
- 画像全体の色合いやトーンを正確に反映するため、花びらの中心や外縁部、茎など多様な領域を選択するよう努めました。
- 視覚的な偏りの回避
- 私個人の好みや先入観が色選択に影響しないよう、抽出対象をランダムまたは系統的に選定しました。
- 抽出範囲
- 花や茎、枝などの植物のみの画像データを抽出しております。背景やラッピング用紙、リボン、土台などの人工物に関しては、トーン割合や色相に影響を及ぼすため、極力除外しております。
著作権について
本記事はPCCSや「日本色研事業(株)色彩集計ソフト カラーカルク」を活用した事例を元に解説しています。
フラワーショップ アリスでは、これらの用語や内容について、日本色研事業株式会社様に正式な許諾を得た上で使用しており、著作権の範囲内で適切に対応しております。
この記事を書いた人
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こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。
2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。
私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。
皆さんが私の記事を通して、花の世界の美しさや、そこに込められた物語を感じ取っていただければ幸いです。それが私が記事を書く大きなモチベーションとなっています。どうぞよろしくお願いいたします。
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