トーンイントーン~ピンクと紫の組み合わせ~

 花と色彩の不思議な関係性を探求する今回の記事では、特にピンクと紫、これら2つの類似色の美しい組み合わせに焦点を当てます。

 色相環図上で隣接するこの2色は、個々の鮮やかさだけでなく、相互作用によって一体となった時に真にその魅力を発揮します。

 様々な花材の選択から配置まで、トーンイントーンの配色法を用いて、一見シンプルながらも深みのある色彩表現を追求します。これらの色彩が織りなす調和の世界へ、どうぞご一緒にお越しください。

トーンイントーン~ピンクと紫の組み合わせ~

トーンイントーンとは

 トーンイントーンとは、色彩用語の一つです。トーン(色調)が同一或いは類似トーンで、色相も類似色相の範囲内でまとめる配色となります。

 ピンクと紫は上の12色の色相環図を見ても分かるように、隣同士に隣接する類似色となっています。そのため、アレンジや生け込みで作る場合も、この色のようなトーンイントーンの組み合わせで構成するとまとめやすくなります。

ピンクの花材

 次に、花材について述べていきます。
 ピンクの花材としては次の3つを用意しました。

ダリア「なまはげマジック」

 まず一つ目がダリア「なまはげマジック」。ジャパンフラワーセレクション受賞品種。よく見ると中心が濃い紫をしていますが、外側に向けてピンク色に変化していきます。まさに今回のテーマ「トーンイントーン~ピンクと紫の組み合わせ~」にふさわしい花材です。

 ダリアは他にも上記の写真のような紫や赤、白など非常に多様な種類や形状が出ており、見応えも十分です。

八重ユリ「ジュリア」

 千葉県産のピンク八重ユリ「ジュリア」。出荷の際には一つ一つの蕾に全てネットが被されており、非常に手間がかかっています。もちろん球根代も高いですが、出荷する全ての百合の蕾にネットを被せるなどの手間もかかっているため、通常のオリエンタルユリの倍の値段。しかしながら見応えは十分です。

 八重ユリはもともと生産量が少ないのと、セリにかかっても通常のユリの倍の価格のため、基本的には一般的な生花店では取り扱っていないと思われます。希少性もあるため、目を引く一品となっています。

 ちなみにこちらは白の八重ユリ「アイシャ」。生花祭壇に使用した時に撮影したものですが、気品がある一品です。

ドラセナ「アトムピンク」

 フラワーショップ アリスではもはや定番となったドラセナ「アトムピンク」。これは沖縄県での産地訪問時に伺った山内さんが生産しているもの。恐らく、福島県内で取り扱っているのはフラワーショップ アリスのみ。なぜなら、生産量が極めて限られており、定期的に福島出荷分の全量を弊社が買い取っているから。

 山内さんのドラセナは通常のドラセナの倍の値段ですが、ものがしっかりしているため全量予約注文となっており、基本的にセリに出ません。そのため、全国的にも極一部の店舗のみの取り扱いとなっています。

 私も自費で沖縄に行って直接山内さんと交渉しなければ入手できなかった品。ドラセナといえどもピンクの斑が入っているため、非常に他の花材と合わせやすいです。ドラセナにもいろいろな種類がありますが、斑にピンクが混ざっているものはこの「アトムピンク」ぐらいしかありません。生産量が極めて限られている、珍しい一品です。

紫の花材

 次に紫の花材を述べていきます。紫で使用したのは2種類。ブルーファンタジアとグラジオラスとなります。

ブルーファンタジア

 スターチスの一種であるブルーファンタジア。流通時期は5月から10月となります。

 今回の生け込みではこのブルーファンタジアの密度を変え、紫の濃淡を出してみました。中央下側、向かって左下の方にブルーファンタジアを集中的に生け込み、それ以外を薄く入れました。まんべんなく入れ込む、謂わばかすみ草のような使い方もできますが、今回は紫の花材として中心的な役割を果たすため、濃淡で表現してみました。

グラジオラス

 グラジオラス「ミルカ」。茨城県産の淡い紫のグラジオラスです。グラジオラスは白やピンク、赤などもありますが、この淡い紫の「ミルカ」も気品があります。

 花屋の視点で見ると、この色合いは仏用にもお祝い用にも使えます。

まとめ

 今回の記事では、色彩豊かでエレガントなトーンイントーンの世界を探求し、特にピンクと紫の組み合わせに焦点を当てました。ピンクと紫は色相環図上で隣接する類似色であり、その美しさを最大限に引き立てるために、各種花材の選択と配置に細心の注意を払いました。

 ピンクの花材として選ばれたのは、ダリア「なまはげマジック」、八重ユリ「ジュリア」、そしてドラセナ「アトムピンク」。それぞれが独特の特性を持ち、彼ら自身の美しさだけでなく、全体のハーモニーをも高めています。

 一方、紫の花材にはブルーファンタジアとグラジオラス「ミルカ」を使用しました。これらの花材の選択と配置により、紫の濃淡を効果的に表現することができました。

 このように、トーンイントーンのアプローチは、色彩の深みと調和を追求する際の強力なツールとなります。特に、ピンクと紫のような類似色相を使用することで、鮮やかさと洗練された美しさが一体となり、見る者を魅了します。

 これからも、私たちは個々の花材の美しさを最大限に引き立て、全体としてのハーモニーを追求し続けます。その過程で、私たちがどのような花材を選び、どのように配置するかを共有することで、皆様の花材選定や色合わせの参考になれば幸いです。

使用花材

ダリア「なまはげマジック」・八重百合「ジュリア」・ドラセナ「アトムピンク」・ブルーファンタジア・グラジオラス「ミルナ」・ソケイ

この記事を書いた人

菊地充智
菊地充智代表取締役社長
 こんにちは。フラワーショップ アリスの代表取締役、菊地 充智と申します。
 福島県本宮市出身で、元々は教員として子どもたちの教育に尽力していました。その経験は私にとって大切な基礎となり、人と心を通わせる重要性や、強い絆を築くことの意味を深く理解させてくれました。

 2007年、私は新たな挑戦としてフラワーショップ アリスに加わりました。それ以来、花々と共に日々成長し、お客様に最善のサービスを提供するために常に努力しています。
 そして、花の美しさとそれぞれの物語をより深く理解し、お客様に届けるため、全国の花の産地を訪れています。

 私の経営理念は、お客様に最高の満足を提供し、常に改善と修正を行いながら、お客様にとってベストの選択を追求することです。この理念は、私が書く文章にも反映されています。

 皆さんが私の記事を通して、花の世界の美しさや、そこに込められた物語を感じ取っていただければ幸いです。それが私が記事を書く大きなモチベーションとなっています。どうぞよろしくお願いいたします。

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